イメージ 1

イメージ 2

言葉による争い―なぜ有害か

「あなた方の間の争いはどこから,また戦いはどこから起こるのですか」。―ヤコブ 4:1。

ヤコブ4章1節
4 あなた方の間の争いはどこから,また戦いはどこから起こるのですか。それは次のものから起こるのではありませんか。つまり,あなた方の肢体の中で闘う,肉欲の快楽に対するあなた方の渇望からです。

聖書筆者ヤコブは,征服戦争を行なっていたローマ軍の兵士たちにこう問いかけたのではありません。また,1世紀のユダヤ人のシカリ派(“短剣を持った男たち”)によるゲリラ戦の背後にある動機を探っていたのでもありません。ヤコブが述べていたのは,わずか二人の人が関係するいさかいです。個人間の争いも,戦争と同じように破壊的なのです。聖書には,次のような実例が収められています。

族長ヤコブの息子たちは,弟ヨセフを憎むあまり,奴隷として売り渡しました。(創世記 37:4‐28)後の時代に,イスラエルのサウル王はダビデを殺そうとしました。ダビデをねたんでいたからです。(サムエル第一 18:7‐11; 23:14,15)1世紀には,ユウオデアとスントケという二人のクリスチャン婦人が対立し,会衆全体の平和が乱されました。―フィリピ 4:2。

4 父がすべての兄弟にまさって彼を愛しているのを知ると,その兄弟たちは彼を憎むようになり,彼に対して穏やかに物を言うことができなかった。

5 後にヨセフは夢を見てそれを兄弟たちに話したため,彼らはその憎しみを一層つのらせた。6 だが彼はさらにこう言った。「わたしの見たこの夢についてどうぞ聴いてください。7 こうです,わたしたちは畑の真ん中で束をたばねていましたが,見ると,わたしの束が起き上がり,しかもまっすぐに立ち,そこへみんなの束が取り囲んでわたしの束に身をかがめはじめたのです」。8 すると兄弟たちは言いだした,「お前はきっとわたしたちの王になると言うのか。きっとわたしたちを支配するようになるとでも言うのか」。こうして彼らはその夢と言葉のゆえにますます彼を憎むようになった。

9 そののち彼はさらに別の夢を見,それについても兄弟たちに話して,こう言った。「聞いてください,わたしはもう一度夢を見ました。そうです,太陽と月と十一の星がわたしに身をかがめていたのです」。10 そして彼は兄弟たちだけでなく父にもそれを話した。すると父は彼を叱って言った,「お前の見たこの夢はどういうことなのか。わたしが,そしてお前の母や兄弟たちがきっとやって来て,お前に対して地に身をかがめると言うのか」。11 それで兄弟たちは彼をねたむようになった。とはいえ父はその言葉を意中にとどめた。

12 さて,兄弟たちはシェケムの近くで父の羊の群れを養うために出かけて行った。13 しばらく後イスラエルはヨセフに言った,「あなたの兄弟たちはシェケムの近くで[群れの]番をしているはずではないか。さあ,彼らのところへ使いに行ってもらおう」。そこで彼は言った,「はい,参ります」。14 それで言った,「どうか行っておくれ。あなたの兄弟たちが無事か,そして群れが無事かどうかを見て来て,わたしに報告するのだ」。こう言って彼をヘブロンの低地平原から送り出した。彼はシェケムに向かって進んで行った。15 後にひとりの人が彼に出会ったが,そのとき彼は野をさまよっているのであった。それでその人は彼に尋ねて言った,「あなたは何を捜しているのか」。16 そこで言った,「わたしの兄弟たちを捜しているのです。どうぞ教えてください,どこで群れの番をしているでしょうか」。17 するとその人は続けて言った,「あの人たちならここから引き揚げていった。『ドタンに行こう』と言っているのを聞いたのだが」。それでヨセフは兄弟たちの跡を追って行き,ドタンで彼らを見つけた。

18 ところが,彼らは遠くから[ヨセフ]を見かけ,彼がすぐ近くに来る前に,彼を死なせてしまおうとこうかつなたくらみを始めた。19 そうして互いに言った,「見ろ,あの夢見る者がやって来るぞ。20 さあ今,あいつを殺してどこかの水坑に投げ込んでやろう。そして,たちの悪い野獣が彼をむさぼり食った,と言うのだ。こうして,あいつの夢がどうなるかを見てやろうではないか」。21 これを聞いて,ルベンは彼らの手から[ヨセフ]を救い出そうとした。それでこう言った。「彼の魂を撃って死なせるようなことはよそう」。22 ルベンはなおも言った,「血を流してはいけない。彼を荒野のこの水坑に投げ込むだけにしておけ。彼に手を下してはいけない」。彼を[兄弟たち]の手から救い出して父のもとに帰らせることがその意図であった。

23 こうして,ヨセフが兄弟たちのところに来ると,彼らはヨセフの長い衣,その着ていたしま柄の長い衣をはぎ取るのであった。24 そののち彼をつかんで,水坑の中に投げ込んだ。折しもその坑は空で,中に水はなかった。

25 それから彼らはパンを食べようとして腰を下ろした。彼らが目を上げて見ると,ちょうどそこへギレアデからのイシュマエル人の隊商がやって来るのであった。そのらくだはラダナムゴム,バルサム,やに質の樹皮を運んでいて,それを携えてエジプトへ下って行くところであった。26 これを見てユダは兄弟たちに言った,「わたしたちの兄弟を殺してその血を覆ってみたところで何の得になるだろう。27 さあ,彼をあのイシュマエル人に売ろう。わたしたちの手を彼にかけることはやめよう。やはり,彼はわたしたちの兄弟,わたしたちの肉親ではないか」。それで彼らは自分たちの兄弟[のことば]を聴き入れた。28 そのとき,人々,つまりミディアン人の商人たちがそばを通りかかった。そこで彼らはヨセフを水坑の中から引っ張り上げ,次いでヨセフを銀二十枚でイシュマエル人に売った。やがてその人々はヨセフをエジプトに連れて行った。

サムエル第一18章7~11節
7 そして,祝っていた女たちは答え応じてしきりに言った,

「サウルは千を討ち倒し,
ダビデは万を」。

8 それでサウルは非常に怒るようになり,この言われたことが彼の見地からは悪かったので,彼は言った,「ダビデには万を与えたが,わたしには千を与えた。まだ彼に与えていないのは王権だけだ!」9 そしてサウルはその日以降,絶えずダビデを疑るように見ていた。

10 そして,その翌日,神の悪い霊がサウルの上に働いたので,彼は家の中で預言者のように振る舞うのであった。一方,ダビデは以前の日々のように,その手で音楽を奏でていた。サウルの手には槍があった。11 するとサウルは槍を投げつけて,「わたしはダビデを壁にでも突き刺してやる!」と言ったが,ダビデは二度も彼の前から身をかわした。

サムエル第一23章14.15節
14 ところでダビデは荒野の近寄り難い所に住むようになり,ジフの荒野の山地に住んでいた。そしてサウルは絶えず彼を捜し求めたが,神は彼をその手に渡されなかった。15 けれどもダビデは,サウルが彼の魂を求めて出て来たので恐れていた。そのときダビデはジフの荒野のホレシャにいた。

フィリピ4章2節
2 ユウオデアに勧め,またスントケに勧めます。主にあって同じ思いでいてください。

かつては,争いごとに決着をつけるために剣や拳銃を用いた一対一の決闘が行なわれ,しばしばどちらかが命を落としたり,一生残るひどい傷を負ったりしました。今日では,もめごとに用いられる一般的な“武器”は,人を切り裂くような苦々しい言葉です。血が流されることはなくても,言葉による攻撃は人の感情や評判を傷つけます。そうした「争い」によって無実の人が苦しむことも少なくありません。

幾年か前に,英国国教会の司祭が,教会の資金を乱用しているとして別の司祭を非難したことがありました。その仲たがいは公になり,二人の仕える会衆は分裂しました。成員の中には,相手側の司祭が執り行なう礼拝には出席しない人もいました。互いに激しくいがみ合い,教会での礼拝中も無視し合いました。非難した司祭のほうも性的不品行の非難を受けるようになり,争いは一段と激しくなりました。

カンタベリー大主教が仲裁に入り,この争いは「がん」であり,「主のみ名を辱める不祥事」であると語りました。1997年に,一方の司祭は退任することに同意しましたが,他方は定年退職を余儀なくされるまで司祭職にしがみつきました。ぎりぎりまで居座り続けて,70歳の誕生日にようやく退任しましたが,その日は2001年8月7日でした。「英国国教会新聞」(英語)は,その日が“聖”ウィクトリキウスの祝日に当たると指摘しました。“聖”ウィクトリキウスとはだれでしょうか。4世紀の聖職者で,軍隊に入って戦うことを拒否したために打ちたたかれたとされている人です。同新聞はこの二つの対照的な態度に注目し,「[このたび退任した司祭]は聖職者どうしの争いを拒否する気がまったくなかった」と述べています。

この司祭たちが,ローマ 12章17,18節にある次の助言を当てはめていれば,自分も他の人も傷つけずに済んだでしょう。「だれに対しても,悪に悪を返してはなりません。すべての人の前に良いものを備えなさい。できるなら,あなた方に関するかぎり,すべての人に対して平和を求めなさい」。

あなたはいかがですか。だれかに感情を害されると,憤りに突き動かされて口げんかをしますか。それとも,辛らつな言葉を口にせず,和解につながる扉を開いておくでしょうか。だれかの感情を害してしまった場合,その人を敬遠して,時の経過と共に問題が忘れ去られることを願いますか。それともすぐに謝るでしょうか。許しを求める場合も,他の人を許す場合も,和解しようと努めることはあなたの幸福に寄与します。続く記事が示すとおり,聖書の助言は根深い争いの解決にも役立ちます。