私は、彼と出会ってから半年後に、もう会わないと決めたことがある。
最初から私の中で、この「不倫」という関係を長く続けてはいけないという思いがあったのと、
出会ってから半年後、
彼が仕事で、アメリカに転勤が決まったのがキッカケだった。
「俺、来月アメリカに行くことになった」
いつも通り家に来て、彼は唐突にそう言った。
突然の辞令で、彼自身もまだ受け止めきれていないようだった。
1年になるか、2年になるか、はたまたそれ以上か…
いつ帰ってくるかもわからない。
そこから彼は、仕事の引継ぎや渡米の準備に追われ、多忙な毎日となった。
家に来ることもなくなった。
それでも1日に数回、メールをくれた。
彼が渡米する日が、刻一刻と近づいてくる。
このまま最後に会うこともなく、サヨナラすることになるのは嫌だった。
そうメールしたら、
「それでいいのかも」
彼はそう返した。
「“これで最後”って会うと悲しくなるから、このまま会わないままの方がいいかも」
最後に会ってサヨナラを言わないと、キチンと自分の中でピリオドを打てないと思っていた私にとって、
彼のその言葉は、それまでの関係自体をうやむやにされた気がして悲しかった。
これがもし不倫ではなく、普通のカップルだったらどうだっただろう。
彼は、私に「ついてきてほしい」だとか、「待っていてほしい」と言ってくれただろうか。
私はどうしただろうか。
「ついてきてほしい」と言われたら、今の仕事や全てを捨ててついて行っただろうか。
「待っていてほしい」と言われたら、いつ帰ってくるかもわからないのに、アメリカと日本で、遠距離恋愛をする覚悟を持てただろうか。
でも、そんなこと考えても仕方ない。
どうあがいても私たちは「不倫関係」であり、普通のカップルではないのだから。
そう思ったら衝動的に、私は彼の連絡先をブロックして削除した。
それくらいしないと、終われる自信がなかったからだ。
それから2〜3日して、
連絡先を消したことを後悔して、やっぱり最後に会いたいと思ってたいた矢先に、
彼が夜遅く、突然家に訪ねてきた。
「カオルが俺に会いたがってると思って」
そういたずらっぽく、いつもの調子で言った。
結局最後まで、サヨナラと言わないまま、彼はアメリカに行った。
それから半年は、毎日彼を思い出しては自然と涙が出た。
苦しくて苦しくて、
早く忘れなきゃ
もっと普通に恋愛なきゃ、
そう焦っていたのだと思う。
その後いくつか出会いはあり、だけど結局傷付いて終わることもあった。
それでも、この人とならと思える相手とも出会えた。
それが前の恋人である。
やっと普通の恋愛が出来る。
そう思えた。
彼がアメリカに行って、1年経とうとしていた時だった。
彼が日本に、帰ってきたのである。