青のコスチュームの伝説、~ 技術力と表現力, 見栄え評価とは。 | 薫彦の二杯目のグラスから ~ Kyoto 編 II ~

薫彦の二杯目のグラスから ~ Kyoto 編 II ~

年年歳歳花相似たり、年年歳歳人同じからず。

日々変わりゆく季節と身の回りの備忘録日記。
シュワシュワの後の、2杯目グラスは bitter or sweet ??

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(青の伝説と、規程・フリーのジンクス)
一瞬、風の谷のナウシカと、先のイナバウアーの姿がフラッシュバックしました。
歴代最高点でのキム・ヨナの優勝。
オリンピックでは、あの濃紺のコスチュームが優勝するという伝説は実在しました、
これで、6大会連続だとか。
荒川静香さんの水色に近いコスチュームにも金色は映え、さらに濃くなった今回のキム・ヨナのコスチュームに、いっそうゴールドが光りが輝きを増していました。
規程競技での最高得点獲得者が必ずしも総合で優勝しないというジンクスは、今回で消滅したものの女子では最高に難易度が高い3回転ジャンプ(トリプルアクセル)を2回も成功させながらもそれぞれのジャンプと全体を通しての表現力において、大差が出来たことをとても興味深く観ていました。

 

 

(強靭な胆力と、緻密な戦略)
何より感動したのは、競技終了後の浅田真央のインタヴュー、悔しさに思わず涙ぐんでしまった彼女にかける声を失ったインタヴュアー、そしてその後の素晴らしい解説者のコメント。
よく他の競技などのあとに聞く、”今回は全力を尽くしました。” とか、”自分自身としてはとても楽しく演技を行なえました。” などという自己満足や、(負けや失敗などの)結果からの逃避ではなく、素直に、ライバルとの勝負の負けを認めて、その口惜しさを全面に出したこと。
そして、何より、”良かったのは、3回転ジャンプをオリンピックで3回成功させたことだけ。” と、冷静に自らの競技結果を反省していたこと。

 

 

なぜ、リストの”愛の泉”でなく、ラフマニノフの前奏曲”鐘”という、重厚かつ難解な(少なくともフィギュア用競技音楽としては)をあえて選んだのか。
おそらくは、その段階で、彼女自身がもうすでに現在から未来への新しい脱皮のためのチャレンジを始めていたのでしょうけれど、キムヨナ陣営は現在の彼女の持つ美しさで最大限に魅了した演技と構成に固執してさらにそれを磨き上げていたのでしょう。軍隊やロボットのようとまでコーチに言われたその基礎的な鍛錬に、誰しもを魅了する美貌とエレガンスが備わって完璧な一つの作品に仕上がったように感じます。
大会より5ヶ月前にバンクーバーに入りして、入念に準備し、直前の国際大会への出場を辞退さえして周到な準備に徹したキム・ヨナ。
一方、まだあどけなさの残るその幼顔には、すこしアンバランスな赤と黒の衣装と、重厚な音楽、背伸びしながらも高いジャンプ技術力での極みを目指した浅田と好対照でした。
キム・ヨナの競技終了後のインタヴューも素晴らしく、いわく、
” 思っていたほど(オリンピックは)大変ではなく、あっけなく(優勝して)終わってしまった。”
自己満足ではなく、ちゃんと結果を出してから、何気にあっさりとこう言ってみせる”粋さ” と、”格好良さ”、そして図太さを見習いたいものです。

 

 

地元韓国では、国民的スーパースターであり、彼女関連ビジネスで数百億の経済効果のビジネスになっているといいます。そのプレッシャーたるや想像できないくらい大きなものであったはずですがそのなかでミス一つない演技を続け、なおかつ大観衆を魅了する表現力で仕上げることのできる”肝っ玉の大きさ”は、4年後に向けての素晴らしいお手本となったはずです。
ジャッジの多くを占める欧米系にとって受けのいい見栄え点(GOE)による加点を目論んだチームとしての戦略が正しかったことと、成長した本人お地力の確かさによって得られた当然の金メダルだったのかもしれません。
ある一定の水準を越えたアスリート達の、清々しい演技と能力にすっかり魅了された一日でした。

 

 

(追記:You have a big ball.)
" 世界で一番好きな花”という好きな曲があります。その歌詞のように、一人ひとりの個性を大切にしてそれぞれ花の咲くように育て上げることは大切だと思います。
限られたスペース、時間など、諸々を同じくする条件下で正当な競争をすることによって初めて得られる感動や尊敬があるはずです。個人・団体、また敗者勝者を問わず、全身全霊をかけて真剣勝負の競技をしたものしか得られない尊敬や賞賛は、何ものにも代え難く尊いものです。
 
順番付けをするのが良くないから全員横になって手を繋いでゴールをするといった徒競走競技を続けている限り、そうした未熟な平等主義教育からは、真に正当な精神を持ったアスリートは生まれないように思います。
 
以前、英国人の上司から言われたことがあります、西洋の騎士道と侍の武士道に共通するのは絶対に後ろからいきなり刺したり、(ピストルで)撃ったりしないこと、常に正々堂々と正面から全力を出してその上で、必ず勝利することであると。その基本は、どのような場合でも冷静沈着に状況を判断する能力と、ここぞという時の決断の為の度胸をつけることだとのことでした。
彼らが言うところの、”度胸(胆力)”があるという表現は、ロンドンの下町っ子風に言うと ”You have a big ball. (or, He/She has a big ball.) ” 、でした。

 

 

{追記:その2、今宵のバンクーバーは)
オリンピックも様々なスポーツのワールドカップ競技会も、それが多くの人の感動を生むがゆえに巨額な富と経済効果につながるビジネスも生まれ、本来もっと純粋なはずのスポーツも生臭い話しが多くなります。
 
バンクーバーにもそれぞれのスポーツ団体役員やらお役人、利権がらみの広告スポンサーやらマスコミ関係者が多く来ていて、あまり品の良くないうわさ話も少なからず
聞こえてきたりしています。
スポンサー企業による、大会役員(マスコミも含めて)への接待やら、遠征費(つまりは、アタクシ達の税金)によって、高価なワインをがんがん開けての飲み会やら、打ち上げ会が連日連夜続いているようですが、それでバンクーバーの景気も少なからず良くなるかもしれませんし、がんばった選手達の慰労というのなら、少しは許されるのかもしれません。
 
それでもせめて今夜くらいは、女子選手達がホステス代わりに役員達の宴席に呼ばれることなく、彼ら達だけのゆっくりとした時間を過ごせていることを祈っています。