信州読書会さんに参加させていただいて、毎週金曜日に
課題図書の感想文を提出させていただいています![]()
今回は、村上春樹氏の『 アフターダーク 』の感想です![]()
私は、信州読書会さんに参加させていただくまで、
村上春樹作品を「ノルウェイの森」しか読んだことがありません
でした。その「ノルウェイの森」ですら、ちゃんと読解していたとは
言い難く、さらっと目を通した感じで、世界観を全く理解して
いなかったのです![]()
その後、信州読書会さんの課題図書に村上春樹作品が扱われ、
強制的に読むようになり、少しずつ村上春樹作品の世界観を
楽しめるようになりました
何事も、修練ですね(笑)
今回の「アフターダーク」ですが、まず読者の視点を
一人称ではなく、実体がなく物語に介入できない視点カメラの
ような三人称に据えているところが、他の作品とは異なります。
一人称だと、登場人物に感情移入をしながら、読んでいくことに
なります。ただ、その登場人物が共感できない人物だと
読者の分身としては、シンドい感じになりますよね![]()
この作品の視点は、登場人物の誰でも、もはや神の視点で
すらない、自由に動けるカメラを通して、映像的に読んでいく
ところが面白いところです。まるで、映画を観ている感じかも
しれません。
その浮遊感を楽しみつつ、深夜零時から朝方までの「闇」の
時間を是非、体験していただきたいと思います![]()
実は、私は深夜が一番好きな時間帯なんですけどね(笑)
あの世の中が静まり返った、しんとした空気感にホッとするので。
『 その男、高橋 』
この小説の浮遊感、とらえどころのなさは、登場するすべての人物と繋がっている「高橋」が一見凡庸であるからだと思う。音楽に見切りをつけ、弁護士への道へ進もうとする各々が持つ個性やアクを取り除いた若い男性の権化みたいな人物が高橋だ。だから、物語の冒頭で、夜中のファミレスに独りで読書する、クセの強そうな浅井マリに感情移入しようとする。マリとのただの通りすがりのような意味のない会話から、高橋は害のない登場人物かと早々に判断してしまう。
しかし、アルファヴィル管理人のカオルの登場から、だんだんと高橋の存在感が出てくる。「高橋とは…何ぞや?」
アルファヴィルでの一件で、殴られた中国人女性にシンパシーを感じるマリ。マリと何の接点もなさそうだが、マリの分身でもあると思う。同じ十九歳だが、他国で男性の逆鱗にふれ、ボコボコに殴られても訴えられない仕事をする中国人女性。何かに追われ、全国のラブホを転々とするしかない元OLのコオロギも、マリの一側面かもしれない。マリというより、何かの拍子に足を踏み外しかねない女性の末路だ。
対して、中国人女性を殴った白川は、一見凡庸な高橋の狂気の側面だ。ただ、大方の男性は狂気の出し入れに注意するが、密室の匿名の世界での売春でタガがはずれる。その白川には、妻のために好みではないローファット牛乳を買う夫の側面もあり、たぶん妻は女性を殴ることができる狂気を知らない。内面に何を持ち合わせているか、視覚ではわからないのだ。マリの完璧に見えた姉のエリも「白雪姫」を期待されるがゆえに、孤児の経験のある高橋と同じく、自分を殺し続けていた。
偶然出会った夜に、エリは高橋に同じ匂いを感じて、アルファヴィルに入ったのかもしれない。しかし、「知的好奇心」でラブホに入る高橋と寝たエリは壊れてしまった。それは、留学先の住所を教えてしまったマリの行く末かもしれない。エリが少しずつ、目覚めようとしているのは、マリにそれを伝えて救うためのようにも思えた。
凡庸な人間なんていないのだ。物語の表層では「高橋」という害のない人間だが、ドローンのように視点をひいたカメラで視れば、様々な側面がある。
「逃げられない。」と繰り返す電話の主は、中国人組織ではなく、お天道様なのかもしれない。
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