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    今回は、村上春樹氏の『 アンダーグラウンド 』の

    感想です本

 

    1995年3月20日に何が起こったのかー

 

    私は、地下鉄サリン事件の内容を知った気でいました。

    ニュースで流される限られた情報を聴いて、全貌を

    理解した気になっていました。

 

    当時は、同じ年の1月に阪神大震災があり、

    岡山でも大変揺れました、

    西日本では、阪神大震災の影響や被害が大きく、

    東京で起こった未曽有の大犯罪が身近でなかったことは

    事実です。

 

    それでも、この日に何が起きたのか。

    何が見過ごされたのか。何をすべきだったのか……。

    私たちは、決して忘れてはいけないのです。

    下手な説明よりも、是非この本を手に取ってください!!

 

 

         『 それぞれのアンダーグラウンド 』
 
 オウム真理教の死刑囚たちの死刑執行後に、地下鉄サリン事件の被害者で、現在も重篤な障碍の残る女性の特集 をテレビ放映していた。

この作品を読んで、明石志津子さんのことだとすぐにわかった。  事件後24年近く経過して、兄の達夫さんの献身を受けつつも、脳の障碍が残り、会話や食事もままならない。

テレビクルーに促されたのか、達夫さんが志津子さんの耳元で「オウムの犯人、憎いか?」と尋ね、志津子さんが「に…にくい」 と声を絞り出す。 

だが、1997年に刊行されたこの作品に、記憶をなくした志津子さんと家族を繋ぐファクターのディズニーランドの記述があり、ディズニーランドへの旅が彼女の出発点だと文章を見つけ、愕然となる。

24年後、いまだディズニーランドへの旅が叶えられていないことが明白だったからだ。事件当時、31才だった彼女は50代になっていた。この作品が刊行され た当初はあった微かな希望が、虚しく行間を彷徨う。
 
これほどの未曾有の犯罪なら、被害者は犯人を恨むのは当然だと思えた。だが、インタビューで「犯人には恨みを感じない」という被害者の方々の言葉に首を捻った。

当事者ではない人間からみると不思議に思えるが、作者も触れているように、東日本大震災のように「天災」のような不条理さで巻き込まれたからだと感じた。

怨恨も因果も関係ない日常の中 で。 後で思い出しようもないくらい意識しない一日になるはずだった朝。「バスが二分早く来たから」「牛乳を買う日だったから」とその瞬間まで日常を生きていた被害者の方の淡々とした記述に涙が滲んでくる。

どんなに功徳を積んでいても、ど んな宗教を信じていても、等しくそれはやってきた。 

 私は、井伏鱒二氏の「黒い雨」を思い出す。原爆投下時の広島を描いたものだが、そこでも一瞬の閃光で何が起こったか把握できない状態で、精一杯生き抜く人々に胸が詰まった。

24年前の地下鉄でも、何が起こったかわからなくても、 目の前の命の攻防のために、人々は動いた。そして、それぞれの人生も動いていく。 それは、「日常」では起動しないそれぞれの「アンダーグラウンド」なのだと思う。

作者は「内なる影の部分」としているが、私は普段は日の当たらない人間の根っこの部分だと感じる。それが、インタビューを受けた方々も気がつかないそれ ぞれの「アンダーグラウンド」が詰まっているからこそ、この作品に圧倒される。 

 

 

  

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