信州読書会さんに参加させていただいて、毎週金曜日に
課題図書の感想文を提出させていただいています![]()
今回は、夏目漱石の『 三四郎 』の感想です![]()
熊本の高校を卒業して、東京の大学へ進学した小川三四郎。
すべてが目新しい世界の中で、都会の女性の象徴のような
美禰子に出会い、強く惹かれていきます![]()
初めての都会、恋愛、友情など、「青春」時代に起こる不安や
戸惑いを23歳の三四郎の目を通して、追体験できる作品です。
特に、熊本から上京して、三四郎の世界が目まぐるしく変化する
様子は、進学や就職で上京経験のある現代の人々にも、
すごく共感できる作品です![]()
長編ですが、夏目漱石のユーモアのある口語体で、一気に
読めてしまいます![]()
今回は、信州読書会さんの課題図書としては二回目の感想
です。実は、先日、3回目の課題図書になり、三回目の
感想文も提出しました![]()
夏目漱石の作品は「こころ」「それから」「門」・・・など、
どれも何回読んでも、違う発見があり、読みごたえがあります![]()
『 自由意志と迷羊 』
この小説で、「迷羊」といえば、三四郎と美禰子は言うまでもない。
だが、迷羊はこの二人だけなのだろうか? 私の考えは、否だ。
逆に、迷羊じゃない人物は、三四郎の故郷の母と御光だと思う。血縁、地縁に組み込まれた熊本の人々だ。母親同士が望んだ縁談だが、御光自身も三四郎との結婚を疑わず、紬の羽織を送って寄越す。母も上京する息子のために、「勝田の政さんの従弟」にあたる野々宮に世話を頼むところは「血縁・地縁」パワー全開だ。この故郷の人々は、迷いがない。自らの人生のレールを信じている。
では、東京組はどうだろう? 面倒な血縁・地縁が薄く、「自由」意思で動ける半面、迷羊の確率がハンパないのだ。野々宮は、美禰子との関係は曖昧なままで、広田先生は以前に出会った十二、三歳の少女が忘れられなかったことが、独身の理由だと露わになる。野々宮と広田先生は、住居もまだ落ち着かない。原口も、美禰子に対する淡い気持ちを持ちつつ、まだ所帯はもっていない。自由意志は、希望がある反面、しんどいのも事実だ。
広田先生は言う。
( 引用始め )
「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より…。」
「日本より頭の中が広いでしょう。」
「囚われちゃ駄目だ。いくら日本の為を思ったって贔屓の引倒しになるばかりだ。」
(P.21)
( 引用終わり )
この台詞で、三四郎は熊本という世界から出た心持がする。汽車の女は、故郷から出る三四郎に対する「迷羊」の女性の手厳しい洗礼だったのかもしれない。
日本より広い「自由意志」の為、迷羊になるのは必然なのだと思う。お仕着せではない人生を歩める代償に、苦悩も多い。御光とは真逆に、自分の想い人と結婚できる美禰子は、三四郎を巻き込んで、自ら迷羊を自覚する。自由意志からくる「責任を逃がれたがる」という野々宮の言動に苦しめられる。彼女の自らの結婚に対するオチのつけ方は、三四郎からみても哀しい。よし子も縁談が持ち上がったりで、独身のままの男性たちとは違い、女性たちはある程度のレールはまだ仕方がない明治の動乱期だ。「迷羊」になれる女性が少なかった時代に、美禰子の人生はまだ終わっていない。美禰子を忘れられない三四郎と共に、美禰子の今後の人生から、まだ目が離せない。
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