信州読書会さんに参加させていただいて、毎週金曜日に
課題図書の感想文を提出させていただいています![]()
今回は、コンスタンの『 アドルフ 』の感想です![]()
将来を嘱望された青年のアドルフは、ある伯爵の愛人の
エレノールに執拗に言い寄り、ついに彼女の心を勝ち取ります。
しかし、裕福な生活や子供たちを捨ててでも、アドルフとの生活を
願うエレノールが重荷になり、アドルフは自由を得ようとします![]()
その心の綱引きが、冷静な視点を交えながら、はたまた情熱の
残り火に引きずられながら、フランス文学の恋愛小説特有の
心理描写にハラハラさせられます。
相手の心が手に入るまでは、情熱を傾けられても、相手の心が
自分に向いた途端に、気持ちが冷める・・・というのは男性に
多いかもしれません。よく言われるのが、本来男性に備わってい
る狩猟本能ですね。 しかし、女性は巣を作り、家族を守る本能が
あるとされているので、恋愛が成就してからは相手に執着する
傾向があります。
これは一般論で、すべての男女に当てはまることはないですが、
こんな「すれ違い」をシニカルに冷静に描いていて、傍観者として
の読者には「あるある~」と楽しめると思います![]()
ただ、アドルフがズルいのは、相手の心が離れそうになると
また引き戻したくなるという「振り子」状態で、エレノールを
最後まで苦しめます![]()
ほんと、「恋愛」は人間にとって永遠のテーマですね![]()
『 恋のあとさき 』
恋なんて、錯覚だ。いや、人間関係自体がそうなのだろう。
エスパーでもない限り、他人の心は読めない…はずなのに、わかったような気になる。
お互いに違う方向を見ていても、同じ方向を見ていると思い込む、もしくは信じたいのが「恋」だとこの小説を読んで、ますます実感する。
個人的な見解だと、恋愛における「快」楽と「苦」脳の割合は1:9だと思っている。成就した喜びの後には、倦怠や束縛、葛藤に嫉妬…とありとあらゆる感情が誕生する。だからこそ、他の小説では描かれることの少ない、恋の成就後の圧倒的な心理描写に、思わず面食らってしまう。
今まで出会った恋愛小説は、ストーリーが主で、心理描写の掘り下げ具合は読者におまかせという作品が多かった。だから、物語として読むことができ、心の深部までヒリヒリすることはなかった。
だが、この小説は主人公のアドルフの心理描写が中心で、限りなくリアリティを感じる。普段は、決して言葉として顕在化させない思いまで描写してあって、私はヒリヒリしっぱなしだった。思い当たるところだらけだから。
青年貴族のアドルフは、P侯爵の愛人であるエレノールを「戦利品」として、自らの自尊心を満たすために、恋をしようと決める。しかし、彼は安易に手を出すべきではなかった。人間の感情ほど、厄介なものはない。他人の心が読めないのはもちろんのこと、自らの心でさえ人間はわからない。本当の心の内を、勝手に誤魔化すことまでしてしまう。案の定、アドルフは、エレノールとの恋愛のしがらみに絡めとられてしまう。
( 引用始め )
そもそも愛とはあらゆる感情の中で一番身勝手なものであるがゆえに、傷を負ったときには高潔と遠いものになるというのにである。
( 光文社古典新訳文庫 P.98 )
( 引用終わり )
結局、エレノールの死をもってでないと終わらないくらい、のっぴきならぬところまで行き着いてしまった。ただ、人間には愛されたい、承認されたいという欲求には抗えないのか、エレノールはアドルフが自分を愛していないことを知りつつ、自らその事実を否認してしまう。アドルフも、エレノールと結婚することも共に死ぬことも望んでいないのにも関わらず、別れきれない。この状態をもはや「恋」と呼んでいいのか…わからない。
恋が錯覚なんて、客観的には理解できるけど、自らが陥るとそうはいかない。だから、私はこの小説でヒリヒリするのだ。
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