僕は生まれつき心臓に爆弾を抱えていた。

それでも僕は、僕のまわりの人たちに感謝の気持ちを忘れない。

産んでくれた母にありがとう。
育ててくれた父にありがとう。


そしてこんな僕と出会ってくれた
君にありがとう。





*************

君との出会いはホントに、些細なことだった。
学校の廊下で君とぶつかって、君が教科書や筆箱を落としたのがきっかけだった。

「あ、ごめんなさいっ」
「大丈夫?手伝うよ。」

真新しい教科書を広いごみを払い落とす。
君は筆箱の中身を拾って立ち上がった。

「あ、ありがとうございますっ」

僕も教科書を手に立ち上がり君に手渡す。
僕の肩したにある君の頭に目が行き、つい撫でたくなった。

「大丈夫。僕こそよそ見しててごめんね。」

ポンポンッと軽く君の頭に手をのせ笑った。
君も少し驚いたあと、照れ臭そうに笑ったね。






君と話した二回目は、夕方から降りだした雨の日だった。

「あー…傘忘れちゃったなぁ…」
「あ、あの!よかったら駅まで入ってく?」

すこし俯いて僕に声をかけた君が真っ赤になってるのをみて、つい顔がニヤけた。

二人ならんで、僕が傘をもつ。
もちろん君が濡れないように細心の注意をはらって。
君とは他愛もない話をして、駅で別れた。





「これ、この間のお礼。」

後日お礼に君にハンカチを一枚渡した。
嬉しそうに笑った君をみて、僕は心臓がドキドキした。


あぁ…好きなんだ。
僕は、君が好きなんだ。



でも僕には付き合ってとは言えなかった。
僕の命は限られてるから。

でも僕がこの世に産まれた意味があるとしたら、それはこの命が尽きるまで君を愛すことだと思った。

僕らはいつも一緒にいるようになった。
お互いに付き合ってとも言わず、ましてや好きという言葉も言わない。
それでもお互いに惹かれ合っていることはわかっていた。

だから幸せいっぱいだった。





だけど、僕が風邪を引いたのをきっかけに学校を休みがちになった。
君は毎日メールをくれた。僕は心配させまいと、大丈夫だよって、元気だよってメールをした。

心臓の痛みが増しても、僕は君を思うと細やかな幸せを感じ笑みがこぼれた。


久々に学校に行き、君は僕をみて安堵の息をもらした。
僕は優しく微笑んで、君の頭を撫でた。




夕方、僕らは川辺利の土手を歩いた。
二人ならんで、手を繋いで。

でも僕は君にいわなきゃいけないことがある。

そっと立ち止まって、君に声をかけた。

「君のこと大好きだよ。」

夕日に染まり、赤くなる君をみて、クスクス笑う。
君もまたクスクス笑って口を開いた。

でもそれを僕は止めた。




『でももう君とはいられない。』



君は泣いた。僕が泣かせた。
笑っていて欲しかった。でも君は笑わない。
苦しくなった。胸が締め付けられて、痛くて、痛くて、僕はその場に蹲った。



発作がおきた。
激しい動悸と目眩。
君の顔も歪んで、僕には君の声が聞こえなかった。

必死になって薬を飲む。
その様子をずっと君は泣きながら見ていた。



君に話した。全部。
自分の病気のこと、命の短さ。
そして、君を幸せにしてあげられないこと。


君はやっぱり泣いた。
僕も君を抱き締め泣いた。




ただ、ひたすらに君を思って…。









僕らは別々の道をゆく。
ただ、僕には変わらない気持ちがあった。

例えこの命がつきようとも、僕は君を愛し続ける。




それが僕に与えられた使命だから。
僕の命つづく限り
君を思い
そして


君の幸せを願うんだ。