2016/3/23 デビューCD発売 | 實川風 〜どこ吹く風〜

實川風 〜どこ吹く風〜

ピアニスト實川風の音楽日記

3,240円(税込)
HYBRID/----/MECO-1033
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企画制作:ソニー・ミュージックダイレクト
発売:ミューズエンターテインメント
録音:2015年12月2日~4日 横浜市栄区民文化センター リリス

■使用楽器:
①-④ スタインウェイD-274
⑤-⑧ ベーゼンドルファー・モデル250(1909年製)
*2015年ロン=ティボー=クレスパン国際コンクール 委嘱作品/「新曲賞」受賞曲

■収録曲:
1. シューマン:アラベスク ハ長調 作品18
2. チャイコフスキー: ドゥムカ~ロシアの農村風景 ハ短調 作品59
3. ショパン:スケルツォ第3番 嬰ハ短調 作品39
4. ヌーブルジェ:メリーゴーランドの光 ~ ピアノのためのタンゴ *
5. ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 作品53「ワルトシュタイン」
  第1楽章 Allegro con brio
6. 第2楽章 Introduzione: Adagio molto
7. 第3楽章 Rondo: Allegretto moderato - Prestissimo
8. シューマン:アラベスク ハ長調 作品18


至福の時間
 音楽に満たされた時間は、僕にとって至福の時間です。良い音楽を聴いた時、そして実際に演奏をした後に残る強い幸福感と生命力は、他の娯楽や芸術では得られないものです。素晴らしい作品や演奏は、いつの間にか非日常の別世界へと連れて行ってくれます。
 いざ自分が演奏する時にも「そうありたい」と強く思っていますが、ピアノでの表現は奥が深く試行錯誤の連続ですし、作曲家や名演奏家たちの残した音楽の奥行きに圧倒されます。そして、年齢を重ねるほどに作品のさらなる魅力に気づかされます。今回のアルバムに収録した作品は、そんな思い入れのある曲ばかりです。
 チャイコフスキーのドゥムカは中学生の時に初めて演奏をしましたが、哀愁溢れるメロディーをピアノの単音でどうしたら歌わせられるのか、まだ追求をしています。シューマンは、その狂気にも近い自意識の過剰さと繊細さに、近年特に魅了されています。アラベスクは、現実の苦悩から解き放たれた妄想の幸せの世界のように感じます。シューマンのピアノ曲の中でも特別な一曲です。ショパンは偉大です。ショパンの音楽は細やかなのに大胆、激烈な感情がこもっているはずなのに表面的には冷静、など相反する感情の集合体で、ショパン自身が複雑な面を持った人間であったことを感じさせます。スケルツォ第3番も細部まで徹底的に磨き抜かれた傑作です。
 ワルトシュタイン・ソナタは、ここ数年ずっと魅了され続けている作品で、爆発するエネルギーと生命力に満ちており、その巨大な世界に触れると、身体の内側からパワーに満たされます。ベートーヴェンの音楽は、まさに僕の精神の支柱です。
また、昨年10月にフランスで行われた「ロン=ティボー=クレスパン国際コンクール」の委嘱作品であった、J.-F.ヌーブルジェの作品も収録しました。現代的なタンゴです。コンクールの時の演奏では自然と作品の魅力に導かれ、その結果、「新曲賞」を頂けたのは幸運でした。
 この度のレコーディングでは、コンサートの如く自分の集中力が高まる瞬間が訪れるまで、何度も何度も一曲を通して演奏をしました。また、ピアノもスタインウェイのフルコンサートグランドピアノの他に、1909年製のベーゼンドルファー・モデル250と、なんと2台のピアノを使用させて頂きました。ワルトシュタイン・ソナタとシューマンのアラベスクですが、風格あるベーゼンドルファーの音色も是非楽しんで頂ければと思います。アラベスクはスタインウェイとベーゼンドルファーの両方で収録しているので、それぞれの魅力を味わって頂ければ幸いです。
 この素晴らしいオペレーションをして下さったプロデューサーの武藤さん、的確な判断で最高の音を録って下さったエンジニアの深田さん、付きっきりでピアノを調整して下さった調律師の數馬さんと津田さん、改めてお礼を申し上げます。
 最後になりますが、作品の持つ「言葉」や「エネルギー」が聴衆の皆様に届くよう、常に探求心を持って演奏をしていきたいと思います。

2016年1月 實川 風