やまじ えびね 『女子がいる場所は』

 

今年度の手塚治虫文化賞の短編部門を受賞した作品。

コミックです。

 


 

 


 

 

 

 

サウジアラビア、モロッコ、インド、日本、アフガニスタンの5ヶ国の、今を生きる少女たちを取り上げている作品。

 

宗教も文化も異なる、それぞれの国で暮らす10歳の少女たちの現実。

 

 

サウジアラビアの首都リヤドに暮らすサルマは、裕福な家庭で両親の愛を受けて幸せに暮らしているが、父親は仕事が忙しいのか、週末にしか家に帰ってこない・・・

サルマはいつしか両親の秘密を知るが・・・

 

もっと幼い頃は男の子たちと一緒に、髪を振り乱してサッカーサッカーボールを追いかけ遊んでいたが、今ではヒジャブをかぶり、男女が一緒に遊ぶことも許されない。

 

仲良しの友人のお姉さんは、生まれた時に親が決めた相手との結婚が決まっており、友人は自分も早く相手が決まってほしいと言う。サルマにはとても考えられない事だけど。

 

自分自身もアメリカ留学の経験のある父は、サルマにも留学を勧める。サルマも違う世界を見て学びたいと思うのだった。

 

 

 

モロッコの少女ハビーバは、裕福でリベラルな考えの家庭の子供。両親と兄と姉と祖母の5人で暮らしている。

ある日、祖母の古くからの友人であるお婆さんと1ヶ月同居することになると、生活が一変する。

 

祖母の友人シャマおばさんは昔ながらの考えの人物で、女の子は

学問なんかしなくてよい、掃除、洗濯、料理、食器洗い、繕い物が女の仕事。女がそれをするから家の中がきちんと清潔に整うと。

 

シャマおばさんの小言にうんざりの1ヶ月が過ぎ、シャマおばさんは迎えに来た息子と家に帰って行った。

シャマおばさんは父親から、女に学問はいらない、こざかしい女は問題を起こして家の名誉を傷つけると言われて、学校に通うことを許されず、読み書きができないまま15歳で結婚させられたと祖母から聞いた。

そのことを知ったハビーバはシャマおばさんの奪われたことを思い、苦しく悲しい気持ちになった。

 

 

 

 

インドのデリーで暮らすはカンティは、父が早く亡くなり、母と弟と3人でギリギリの生活を送っていたが、母がお金持ちに見初められて再婚したことから、今までの貧しい暮らしから一転し、広い屋敷で暮らすようになった。

 

学校も裕福な子女の通うミッションスクールに編入し、母の伴侶がカンティに家庭教師もつけてくれた。

 

家庭教師のアーシャは貧しい家庭の出身で、小学校の教師の傍ら家庭教師をし、多く稼いで弟妹を良い学校に通わせたいと願っている。

アーシャは母の伴侶にもっと家庭教師の勤め口を紹介してほしいと頼むと・・・

 

 

 

 

日本編は、東京の郊外に祖母と大学の准教授の母と暮らすまりえ。

 

両親は離婚し、母はまりえを連れて実家に戻ってきた。

まりえは父とは定期的に会っている。

父も母もステキな人だが、母は仕事人間で仕事に打ち込んでいる時が幸せそうだ。

 

祖母はまりえを娘とは違う女の子らしく育ってほしいと思っていて、ワンピースを買い与えたりするが・・・

 

まりえは、人それぞれの幸せについて考えるようになり・・・

 

 

 

 

アフガニスタンの少女ムルサルとナフィサは、タリバンが去って、やっと再開された学校にまた通うことが出来るようになった。

喜びもつかの間で、再びタリバンがカブールにやって来た・・・

 

 

 

少女たちの置かれた状況は様々で、紛争地で学ぶ機会も与えられなかったり、宗教や慣習のしがらみで自由が少なかったり。

中では日本が一番自由で開かれてはいそうだけど、それでも女性が家庭を持ちながら働くことの大変さもあり、古い伝統的な考えも残っているし・・・

 

5ヶ国の少女たちのストーリーの中では、インド編が最もキツかった。

 

でも、どの国の少女たちも明日の自分、将来の自分の生き方を考え、しっかり見据え、力強い眼差しなのは救われます。

 

短編集なので、1話1話は短く、掘り下げて描かれている訳ではないのですが、ずっしりとした読後感がありました。

 

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。