がらくた/江國 香織
ああ。。
これまた、何と独特な作品だろう。。。

夫と妻「柊子」の関係性や価値観に
"共感”する人はほとんどいないであろう。


二人はとても仲が良く、深く愛し合っているけれども

その愛の形は、
少々いびつだ。

でも・・・武夫のような男を愛してしまったら

骨抜きにされてしまうのかもしれない。

愛しすぎるのは、幸福であると同時に、つらいことだ。


ラストは少々後味が悪いけれど、

江國さんの文体はやはり心地良く、ため息が出てしまう。


わたしがうっとりしてしまうのは、例えばこういう箇所だ。



呼出音三度で、夫がでた。

「やあ」

声は蜜になり、たちまち私の耳に皮膚に骨にしみこむ。


夫は、呼出し音四回ででた。

「やあ」

声がすでに微笑んでいる。私のよく知っている、

この世の奇跡みたいに特別な声。


「幸福な話じゃなくても、幸福な思い出だわ。

あなたとしたことは全部、私にとっては幸福な思い出になっちゃうの。
おもしろいわね」

 


こういう表現が、たまらない。

ああ、分かるそれ。その感覚・・・と。


私ならとても言葉では説明出来ないそういった表現に

しょっちゅう胸をつかれ、

江國さんの本を読んでいるとだから、立ち止まってしまう。

心が持っていかれてしまう。