今回も、前回のに引き続き、うつ病についてのお話です。

 

 

さまざまな研究によって、「うつ病を引き起こす原因は1つではない」ということがわかっています。

 

 

非常につらい出来事が発症のきっかけになることが多いものの、いくつものきっかけが重なっていることも珍しくありません。

 

 

そのため、原因というよりも、要因と考えた方が的確かと思います。

 

 

生活の中で起こるさまざまな要因が複雑にからみ合い、うつ病の引き金になってしまいます。

 

 

うつ病を引き起こす要因には、大きく分けて3つあります。

 

うつ病を引き起こす3つの要因

 

①環境

 

 

環境は、最もうつ病のきっかけとなりやすい要因です。

 

 

・大切な人(家族や親しい人)の死や離別

・大切なものを失う(仕事や財産、健康など)

・職場や家庭での役割の変化(昇進、降格、結婚、妊娠など)

・人間関係のトラブル

・家庭内のトラブル

 

 

などが要因となります。

 

 

こうして見ると、環境と一言で言っても、さまざまな出来事が要因となりうるということがわかります。

 

 

②性格

 

 

性格も、うつ病の発症要因のひとつです。

 

 

・責任感が強い

・仕事熱心

・完璧主義

・几帳面

・真面目

・凝り性

・常に他人に気を使う

・自分に厳しい  

など…

 

 

性格だけが要因となってうつ病を発症することは少ないですが、このような性格が、その他の要因に拍車をかけることはよくあります。

 

 

③脳の働き

 

 

 

 

うつ病は、脳の働きに何らかの問題が起きて発症すると考えられています。

 

 

私たちの脳の中には、情報伝達の役割を担う神経伝達物質と呼ばれるものが多数存在します。

 

 

そのうち、うつ病の発症にかかわる主な神経伝達物質には、

 

・ノルアドレナリン

 

・ドーパミン

 

・セロトニン

 

があります。

 

 

ノルアドレナリンは、怒りや興奮などの感情をコントロールします。

 

 

ドーパミンは、喜びや快楽などの感情をコントロールします。

 

 

そして、セロトニンは、ノルアドレナリンとドーパミンが暴走するのを抑え、 心のバランスを保ち、精神を安定させる役割を担っています。

 

出典:https://www.ohara-ch.co.jp/meitantei/vol01_1.html

 

例を挙げると、

 

 

ケンカして大声を上げて怒鳴っているとき→ノルアドレナリンがあふれている状態

 

 

好きな食べ物を味わっているときやゴールを達成できたとき→ドーパミンがあふれている状態

 

 

ゆっくりと温泉につかったり、自然の空気を吸ってリラックスしているとき→セロトニンの増加が促されている状態

 

 

こんなイメージです。

 

 

ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンの3つの神経伝達物質は、モノアミンと総称されています。

 

 

うつ病は、このモノアミンが減ったり、バランスが崩れたりすることで引き起こると言われています。

 

危険なサインを見逃さないで!

 

うつ病と診断する目安として、次のような症状のうち、いくつかの症状が2週間以上ずっと続く、というものがあります。

 

 

ひとつひとつの症状は誰もが感じるような気分ですが、それが一日中ほぼ絶え間なく感じられ、長い期間続くようであれば、もしかするとうつ病のサインかもしれません。

 

 

・抑うつ気分(憂うつ、気分が重い)

・何かに追われているようで落ち着かない

・悪いことをしたように感じて自分を責める

・何をしても楽しくない

・何にも興味がわかない

・疲れているのに眠れない

・いつもよりかなり早く目覚める

・イライラがコントロールできない

・自分には価値がないと感じる

・思考力が落ちる

・消えてしまいたくなる

 

また、このような症状を感じる前に、身体にサインが出る場合もあります。

 

 

・食欲がない

・体がだるい

・全身が重い

・疲れやすい

・頭痛や肩こり

・動悸

・胃の不快感

・便秘

・めまい

 

一方で、うつ病のサインには、自分で気づかないこともあります

 

 

うつ病は、具体的に「いつから始まった」と、症状が始まったときを特定することは難しいものです。

 

 

いつの間にか、「以前と違う状態になっている」とは気づくものの、それがうつ病であると自分では自覚できない場合が多いようです。

 

 

特に働き盛りの世代では、職場における過労やプレッシャーからうつ病を発症する人が増えています。

 

 

うつ病が原因で気分が晴れず、集中力も低下し、仕事でミスを重ねているにもかかわらず、「もっと頑張らないと」などと思い詰めてしまう人もいます。

 

 

このように、心身のSOSに気づかないまま放置すると、うつ病の症状がどんどん悪化してしまい、 手遅れになってしまう恐れがあるのです。

 

 

ここで大切なのは、周囲の人が、うつ病のサインに気づいてあげることです。

 

 

・表情が暗い

・涙もろくなった

・元気がない

・反応が遅い

・ぼんやりしている

・食欲がない

・落ち着きがない

・飲酒量が増える

・ミスが増える

・集中力が低下している

・作業の能率が下がる

・イライラしていることが多い

・以前楽しんでいたことに興味を示さない

 

 

などの症状が見られ、それが長期間(一般的には2週間以上)続いている場合、心療内科または精神科への受診を勧めてあげると良いと思います。

 

 

それでも、心療内科や精神科を初めて受診するには、勇気が必要な場合も多いです。

 

 

それなので、「病院に行かないとダメ」というプレッシャーをかけずに、本人が病院に行こうと思えるまで、そっと見守り続けてあげてほしいと思います。

 

まとめ

 

・うつ病を引き起こす原因は1つではない。

 

・うつ病を引き起こす要因には、環境・性格・脳の働きの3つがある。

 

うつ病は、脳の働きに何らかの問題が起きて発症すると考えられている。

 

・うつ病の発症にかかわる主な神経伝達物質には、ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンの3つがある。

 

・ノルアドレナリン:怒りや興奮などの感情をコントロールする

 

・ドーパミン:喜びや快楽などの感情をコントロールする

 

・セロトニン:ノルアドレナリンとドーパミンが暴走するのを抑え、心のバランスを保ち、精神を安定させる役割を担っている

 

☆うつ病のサインには、自分では気づかないこともあるので、周囲の人が、いつもと違う様子や変化などに気づいてあげることも重要!