岩佐さんには話しました。
とりあえず、岩佐さんも納得した事でしょうし、今度は「Sさん」の方です。
「Sさん」も「Sさん」で、ここまで来ると「大体の性格」と「言う言葉」位は想像がつきます。
私は、前に「Sさん」が「岩佐さんからの借金の事とこちらの地元に来る事は関係がない」と言っていたのを思い浮かべました。
どちらにしろ、私には「会いに来る」と。
「結婚の事もお金の事があるからじゃない」とも。
私はその微かな希望の欠片をぎゅっと胸で抱き締めながら、「Sさん」に真正面からぶつかりました。
まずは岩佐さんとの交渉が決裂した事を勇気を出して伝えました。
案の定、「Sさん」は、私がまるで「Sさん」の心の一部分、そして、彼の手足であるかのように、私に岩佐さんを説得するように懇願しました。
「言う事に従え」って感じです。
そんな命令調ではありませんが、「従う」という言葉は使われました。
正直、そういう所が、まだ、完全には受け入れ切れない彼の性質の部分です。
ここに目をつぶったまま、結婚しようものなら、後で、とんでもない事になるのは目に見えています。
確かに、私は、彼に惚れてはいます。
ただ、冷静に現実をも見ているのです。
この問題、この性質を避けて通るべきではない。
仮にも残りの人生を「Sさん」だけを夫として生きる選択をするつもりなら、真正面から向き合って解決しなくては。
もしくは・・・。
私達はいつもの彼の夢の事業に関する押し問答を一通り繰り返しました。
そして、意見の終着点が同じと知った私は、反射的にこの文字を打っていました。
「別れよう」
うん、別れるつもりでした。
それは、岩佐さんとの今までの経緯の中で辿り着いたひとつの「結論」でした。
「大方、このまま付き合っていたって平行線のまま。結婚が具体的になる事はなくて、良い所でも内縁の妻止まりだろう」
私には、それが時間の無駄遣いに思えて来ていたのです。
勿論、好きな気持ちは重々あるのは、自覚のある所ではあるのですが、仕方ありません。
私は投げつけた言葉のまま、なるべく、「Sさん」を傷めつけないようにしながらも、そんな最終兵器の発射ボタンを押してしまっていました。
「君は狂ったのか?」
「Sさん」は、まるで長年連れ添った妻の反乱であるかのように受け止めたようです。
「新しい男が現れたのか?それとも、Hに戻りたいのか?」
その言葉は私にしたら意外で、もしかしたら、嫉妬でもしているのかと思いましたが、そこは、キチンと否定しておきました。
「新しい男はいないし、Hさんとは完全に終わってるから」
「誰と別れるの?」
「あなたに決まっているでしょう?私は、あなたとしか付き合っていないよ?」
結局、その日は、そんな押し問答をいくつか繰り返し、私が突き放す形でLINEは終了しました。
その癖、いつもと同じように、その後、夕食に作った「味噌焼きおにぎり」の写真を「Sさん」のLINEに送っている私がいました(笑)。
その日の終わり際、「あなたを好きだと思った私がバカでした」という削除した一文がありました。
多分、その文のリプライが昨日の夜の内に送られて来ていました。
「ええ、だって私は本当にあなたを、似ているところだけはでなく、私のすべてで愛しているから」
・・・こういう人なんですよ、「Sさん」って(笑)。
以前はどうだったか忘れたけれど、こっちが「Sさん」を傷付けているらしい時も、こんな風に愛情一杯の言葉で返してくれるのです。
こういう所に私は参っているのです。
こう来られたら喧嘩になりませんって(悩)。
私は朝になるのを待って、早速、長文で朝の言葉を心を込めて、丁寧に言葉を尽くして書きしたためました。
別れ話をした次の日だったからか、いつもより早い時間にLINEを送ったのに、ほぼ、すぐ「既読」になりました。
私と付き合うようになってから、私が朝早いからか、元々、夜型だった「Sさん」は、早朝に起き、後でまた寝る人になったみたいです。
いつもではないみたいですが、本人がそう言っていました。
「Sさん」は、いつもより長めのテキストを割と早く、2つにして送ってくれました。
「考えが違っていても、お互いに完全に信頼できると分かった」
「Sさん」は、私の言葉を選んで書いた文章の内容を「賢明」だと言っていました。
そして、この話を終わらせようと書いてありました。
その後、「Sさん」は安心して、また、寝たのかもしれない。
もしかしたら、朝まで起きていたのかな?
こんな喧嘩ひとつ取っても「Sさん」は私にしたら「かけがえのない人」です。
「喧嘩腰の女」に「愛情」で抱きすくめるような男性が他にいますか(涙)?
デリケートで傷付き易い癖に傷付いても「愛してる」って言ってくれる人。
そりゃ、逃げ切れませんって。
喧嘩した時に本当の「相性」って分かるんじゃないでしょうか?
「良い時」じゃなく、「悪い時」に離れずにいられるなら「最強の相性」だと私は思います。
多分、私が彼を好きなのは、こういう所なのです。
ちなみに、「Hさん」と喧嘩した時は、場に寒い物が走りました。
「ああ、この人(Hさん)、駄目だわ」
それ以後、思い出しもしていませんでした。
だから、「Sさん」に「Hさん」の名前出されて、「そんな人もいたなぁ」って思う位、「Sさん」にヒタヒタに浸っている日々なのです。
でなきゃ、冗談でも「旦那様」なんて呼びませんよ。
もう、自分の中での「安定の位置的存在」
の「称号」です。
とりあえず、危機は乗り越えたのではないでしょうか。
終わってみて、こう、考えている自分がいました。
「まぁ、内縁の妻でも仕方ないか。やっぱり、好きで離れたくないもんな」
「勝負」は勝ったのやら、負けたのやら分かりません。
ただ、岩佐さんとの縁が切れても、「Sさん」とのご縁は切れなかったですね。
こういうのを「真実の愛」と私は呼びたい。
ご視聴、ありがとうございました。