息遣いひとつで伝わるものがある。

膨大な言葉を持ってしても伝わらないものもある。


何も言わずに、ただ自分の傍らに身を寄せる者。

彼女は淋しいのだ。

人肌恋しく、いつも、孤独を感じて家族の中にいる。


やさしく撫でてやるべきか、それとも自立を促すべきか。

強くなれ、そう願い私は後者を選んだ。



「おすわり」「伏せ」の練習で、「駄目だ」と叱った。

叱った矢先に、自分の心でハッとした。

今の彼女は、私だ。

まるで私のようだ。

不器用で、気立ての悪い、頭の痛い子供。

私に「だめ」と言われ、気を悪くする彼女の心中が、鮮やかに浮かび上がった。


不器用は不器用らしく小さくなって生きていかなければならないのか。

その道しかないのであれば、自分はあえてその道を崩し去り、

新しい道を創り出す。

例え足元がなくなろうが、自分という存在に、きちんとした色が与えられるように、

そういう道を創り出す。




夜、寝るときいつも布団の上に彼女がいる。

叱った日もいた。

私は何も言わず、ただただ彼女を撫でた。

自分の傷を癒すかのように。

自分と同じ痛みを持つ彼女を、その痛みを知るこの手で、愛情を塗った。