【ネタバレ注意】SPEC~結~感想&考察 | ノートの切れ端

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ただの戯言

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見てきました~SPEC結
見終わってから消化するのにえらく時間がかかってしまいまして
未だに頭の中でぐるぐるしています。
だいぶ納得のいく解釈が出来てきたので記録がてら感想と考察をば。



【以下ネタバレ注意】



<テレビドラマで挑戦したセカイ系>
「ケイゾク」の続編としてスタートしたSPEC。
はじめは超能力者と法治国家の限界を描く刑事物なのかと思いきや、最後まで見ると瀬文を主人公としたセカイ系だったんだなと理解しました。
セカイ系の解釈としては「君と僕の関係性が世界の存続を左右する」というもので、描かれるのは小さな世界の出来事なのに全世界に影響を及ぼすというアニメブームの柱とも言える設定ですね。
有名どころでいえば「新世紀エヴァンゲリオン」「最終兵器彼女」あたり。
君(当麻)と僕(瀬文)が出会うことで終焉を迎えたループする世界っていうのがSPECの舞台でした。

「超能力」「予言」「ループ」「平行世界(パラレルワールド)」というヒットアニメの定番とも言える厨二設定を盛り込んだ上、「クローン」「ガフの部屋」「ソロモンの鍵」「異界へのゲート」「天使の羽根」「ガイアの抑止力」などなど、魔術ものやオカルトものでは常連の用語が飛び交うという、ファン層をしっかり理解した上で“お前らこういうの大好物だろ!?”って制作サイドの声が聞こえるような世界観でした。
しかもそれを実写とCGでやってしまうことのすごさ。異物感も特に感じることなく夢中で作品に見入ってしまいました。

スタッフの愛という部分で言えば、作品に影響を与えたであろう過去の名作たちへのオマージュが半端なかった。
「今の流行りで言えば“ガフの部屋”か」←エヴァのことデスヨネ
能力を抱えきれず肥大化する当麻←AKIRAの鉄男デスヨネ
概念になって漂う当麻を認識出来る瀬文←まどか☆マギカのまどかとほむらデスヨネ
とまぁ探すと大量に出てきます。
それを探すのが楽しい作品でもありました。

映画館で見終わったあとに「わけがわからないよ」と呟くお客さんもちらほらいて、なんの予備知識もなかったらそりゃそうだろうなと。賛否両論あるだろうなとは思いますが、私は大満足の作品でした。
アニメでしか見れないものを実写でやってくれたという衝撃は心地よかったですよ。



<人によって別れるであろう考察>
まだ一回しか見てないですし、シナリオ本も読んでないので曖昧な記憶を辿りつつの考察です。
はじめに“人によって見え方が違う”だろうということを言っておきます。
違う見解を議論するのもこの手の作品の楽しみ方のひとつですし、ご了承をば。


まずは世界観の考察。
ユダが説明してくれてますが、

ガイア→地球というひとつの生命体。人間や生物はその中の細胞のような位置づけ。
    先人類と新人類が滅亡する度に浄化を繰り返す。

平行世界(パラレルワールド)→同じ時間軸を並行して展開される複数の世界。
               可能性の数だけ分岐していると言われている。
               SPECでは役者は同じでも配役が違うとのこと。
               セカイ達は当麻を使って移動を繰り返してきた。

先人類→セカイやユダといったガイアに元々在った人類の系譜。
    自然と調和し脳の機能を完全な形で利用できていた。
    彼らの遺伝子を持った人間がSPECを開花させる。
    既に滅んだ種族だが当麻の肉体を介することで世界のループに参加し新人類に干渉。
    ガイアの意思と思われていたループは先人類であるセカイたちが
    自分たちを含めた人類の存続を望み当麻を利用して行ってきたこと。

新人類→隕石によってもたらされたアミノ酸の影響を受け、先人類より退化した人類。
    脳の機能を制限されSPECは持ち得ない。
    先人類に干渉される世界で必ず核戦争によって滅びる道を選んでいる。

当麻→左手で死者を実体化することが出来、右手で異界への扉を開けることが出来るため、
   ループ(並行世界移動)の際利用されてきた入れ物。
   先人類の魂を体内に回収し、移動することによって
   各世界で新人類の歴史にセカイたち先人類の干渉を可能にしていた。
   瀬文と出会ったことでSPECから自我を保つことを覚えた当麻は
   自ら先人類と新人類の干渉を断つべく寄り代となって
   先人類の魂を抱えたまま瀬文に射殺を望み、死亡。
   先人類の干渉を絶った世界では存在自体が空白となり、
   正しい時間(干渉のない展開)を知覚できる唯一の概念となって漂う。

瀬文→何のSPECも持たないが彼との出会いが世界を変えたという特異点。
   当麻が概念となったあとも当麻を認識できる唯一の存在。
   ある意味において、彼が新人類から進化した最初の人。

「正しい時間」の世界→先人類の干渉がない世界では当麻の死という始点から
           過去が書き換えられ存在しなかったことになっている。

※恐らく、「当麻という刑事を瀬文という刑事が射殺した」という事実はあっても、当麻がSPECを持った故に関わってきた事象や歴史はなかったことになり、「刑事だった」ということ以外は誰も認識できない世界ではないかと思われる。
よって家族にも仲間にも当麻に関する記憶はなく、SPECホルダーが存在したから起こりえた出来事もことごとく回避され、別の事象として書き換えられている可能性がある。
野々村係長や吉川の生存を示唆したり、地居と美鈴が恋人同士のような描写があったりするのはこのためで、それを出来事として知覚出来るのは当麻のみ。
あくまで推測だが、当麻の受け持つ概念は「超常現象」「奇跡」

アサクラ→ケイゾクでは実体のない悪の象徴として描かれ
     柴田たちはこれを裁くことが出来ずに終わった。
     そのことがあったため柴田は未詳を作り
     野々村や当麻に託したと思われる。
     SPECホルダーの一人かと推察されていたが
     結のラストで観測者として登場。会話の相手は不明。


あとは色々気になったことを。



【瀬文をボコった旧刑事物のヒーローたち】
当麻を射殺した直後、書き換えられた世界で瀬文が「刑事殺し」というレッテルのもとでボコボコにされるシーン。瀬文を襲う刑事たちは「西部警察」「踊る大捜査線」などの人気刑事キャラたちの衣装をまとっている。
瀬文がしたことは、当麻の意思を尊重し世界を守るという正義そのものであったが、殺人以外の何ものでもなく、「法の下の正義」と「個人の正義」の対比の表現に思われる。
瀬文は法に裁かれそれを受け入れている。


【ラストシーンとメッセージ】
宙を漂っていた当麻を瀬文が掴むシーン。
色々言われていますが、私は瀬文の命が尽きかけていて、当麻の左手に触れることができた、と思っています。この当麻が作った「正しい時間」の世界では、瀬文だけが当麻の存在を覚えていて、“認識される”ということで当麻が形を取り戻し当麻として目を覚ました、と。
最後に二人が街に佇むという場面がありますが、二人だけ止まったままというのも、その後二人で平行世界を観測して回ってる描写じゃないかなと思いました。
本来SPECを持たない瀬文には、当麻との死後の接点はなかったはずでしたが、セカイと対峙したときに発揮した「なめんな」力はやはり新種のSPECのようなものだったのではないかな。
それこそ、当麻と瀬文にとっては新しい人間としての来世なのでは。
二人一緒に時間を漂う。それが最後の「瀬かいはひとつじゃない」に繋がるのかと。

some one who love you
must be close to you

「あなたを愛する人が あなたのすぐ傍にいる」

死にたいのに死ねなくて瀬文の名を絶叫する当麻に
当麻の名を呼び応えた瀬文。
遠い存在であるはずの当麻にひたすらに寄っていく彼の姿が切なかったし
巻き込んでやるからな、と瀬文を求めた当麻も切なかった。

SPECは壮大なラブストーリーでした。