最高裁2015/9/15 です。事案は次のとおり
2002/6/14に金融業者との間で「消費者が業者に対し金44万4467円を24回分割で支払う。☆業者と消費者は、本件に関し、本件調停の調停条項に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認する☆」という特定調停が成立しました。☆の部分を清算条項といいます。
ところが、消費者と業者との取引は、実は1987年から始まっていたのですが、特定調停の際、業者は1998年3月からの4年分の取引履歴しか調停に開示しなかったのです(そのため計算上は過払にならず)。
調停成立後に、15年に及ぶ全ての取引履歴の取り寄せが可能となり、利息制限法で引き直すと、2002/6/14時点で借金どころか234万6414円の過払い金が存在していたことが、判明しました。
原審はこの調停合意を、利息制限法に抵触する公序良俗に反する無効なものとして、よって、清算条項も無効になるから消費者からの過払い金請求は可能としました。
ところが、最高裁は意外な解釈を採用し、かつ、同じく消費者からの過払い請求を是認する形をとりました。
「特定調停は、消費者の借金を対象とするもので、消費者の過払金は当然には予定していない。
だから、清算条項もあくまで消費者の業者に対する債務が特定調停で取り決めた金額以上にならないことを意味するにとどまり、消費者が業者に過払い金を持っているかどうかは、清算対象には含まれない。
よって、この特定調停での合意が特に公序良俗に違反することにはならない。」
最高裁が原審と異なる解釈を採用した事情は次の2点ではないかと推察します。
1、2002年当時は取引履歴開示義務の存否そのものが下級審で争われており、業者が任意に開示する範囲の取引履歴の中で特定調停をすすめていかざるを得ない状況にあった。
かような状況下での、簡裁での特定調停でさんざんぱら公序良俗に違反する合意が取り交わされていたと言ってしまっては、裁判所の権威(?)に関わる。
2、とはいえ、素直に全ての取引履歴を開示しなかった業者が不当に得をするのを見逃すことは、不正義を放置することになる。
そこで、清算条項に債権債務と明記されているにもかかわらず、制度目的を重視した限定解釈することで、なお消費者が過払い金請求が可能という解釈を持ち出した。
消費者も簡裁も一見傷つかない判決といえる。
ただ、特定調停の合意は依然有効とすることで、2002/6/14の調停成立以降の24回の分割金は、本来それを支払うべき義務は消費者にはなかったんだけど、調停で分割を約束しちゃった以上は返還請求不能というヘンテコな結論を導いている。
この最高裁が出たことで、次の論点も浮上してくるが、おそらくは消費者を救済する後者の解釈になるのではないかと予測する。
だって、消費者にとって平成14年5月に過払い金返還請求権を行使することは事実上全く不可能だったからこそ、そういう特定調停をしたのだから。
《平成14年5月に48万円を24回分割する特定調停をした。実はその時点での過払い金は200万円だったが気づかず。
過払金10年の消滅時効の起算点は平成14年5月の調停成立時か、それとも、特定調停による分割金の支払を終了する平成16年4月か》
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