匿名訴訟は日本では原則として許容されていない | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 匿名訴訟とは、当事者の氏名や住所を裁判所に一切出さずに、訴訟を進行することを指す。
 匿名訴訟を可としてほしい理由に、当事者のプライバシー保護がある。例えば、加害者と全く縁のない性犯罪の被害者が、損害賠償を求めようと考えたとする。被害者は、加害者に正当な補償を求めたいと同時に、加害者の逆恨みやお礼参りは絶対に避けたいはずだ
 そのほか、世の中には源氏名だったりネットのハンドルネームだったり芸名だったりと、全く本名と関連しない名前で、フィールドを気づいている人もいる。例えば、ろぼっと軽ジKとか^^
 
 ところが、刑事訴訟法も民事訴訟法もそのニーズは汲み取っていない。
http://www.t-nakamura-law.com/blog/criminal-defense/post424/
 上記は刑事事件の話だが、民事事件については、民事訴訟規則2条1項1号に「当事者の氏名又は名称及び住所」を訴状に記載しなければならないと定めており(民事訴訟法133条2項1号でも当事者記載義務をとして記載)、訴状が民訴法133条2項に違反する場合は、裁判長は補正を原告に命じる義務を課されており、原告が不備を補正しないときは、裁判長は訴状を却下しなければならない(民訴法137条1項2項)。
 要するに、当事者の氏名又は名称を秘したまま提出された匿名の訴状は必ず門前払いせよという法律になっているのだ。

 法律家の間では今更ながらの論点であるが、薬害エイズ集団訴訟でその壁を突破した実績もある。
 高度のプライバシー保護という理由があるにせよ、如何なる形式的理屈を編み出して民訴法137条を発動させなかったのか、その点は福岡県弁護士会に所属する古賀克重弁護士(偶然にも私の同期です)のこの著書に書いてあると思われるので、興味がある人はぜひ読んでください。http://www.fben.jp/bookcolumn/2012/09/post_3386.html

 民事訴訟には閲覧制限 という方法が用意されているので、むやみやたらと一般人に秘密が漏れることはないように準備されているから、それで十分ではないか、やたらと匿名訴訟を許容したら濫訴を招くのではないか」という意見ももしかしてあるかもしれない。

  しかし、閲覧制限をたとえかけていても、法廷で言っちゃう確信犯もいるのだよ、しかも弁護士が。

http://mainichi.jp/select/news/20150515k0000e040203000c.html
  

 だから、ハッキリ「匿名訴訟を新設し、同時に、利用可能範囲を法律で画する」「匿名訴訟においてそれを破った者に罰則を科する」、民法の全面的改正なんかよりもこの2点について、民事訴訟法と刑事訴訟法の一部を改正することを先行させることが、よほど国民の方を向いた立法活動だと思うのだがなあ。利害調整も不要だと思うし。

PS:《大統領》という通称での訴訟提起が却下されず受理された案件として、東京地裁2002/5/21判時1791号53頁、その控訴審である東京高裁2002/10/31判時1810号52頁、それから、青梅簡裁2003/10/28 最高裁ウェブサイトがあるという情報提供が寄せられました

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