大島渚監督【忘れられた皇軍】衝撃度2万% | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 今から50年前の作品、その迫力は他の追随を許さない名作だ。
http://mokuou.blogspot.jp/2014/01/blog-post_9412.html
 登場するのは、両眼失明した人、足のない人、丸い金属のカギ型の義手をつけた人(↓21番のような義手をつけた映像が)、、、
      http://commonpost.info/?p=49498
 いずれも実在の日本軍在日韓国人傷痍軍人会に所属する障がい者たちである。彼らが「目なし、腕なし、職なし」の幟を掲げて首相官邸や外務省や韓国大使館を陳情巡りしている様子も容赦なく撮影されていた。’’カメラは加害者’’であるからだ。

 この作品を一言でいえば【全編に満ちた怒り】、これに尽きる。その最後のナレーションまで「日本人たちよ、私たちよ。これでいいのだろうか、これでいいのだろうか」という極めてドラスティックであった。

 朝まで生テレビの吠えまくっていた大島渚を知る40代50代は多かろう。その大島渚の墓碑銘は「深海に生きる魚族のように、自らが燃えなければ、何処にも光はない」(byハンセン病の歌人。明石海人)というものだが、この作品は怒りの人、大島渚の面目躍如である。
 
 大島渚監督が松竹ヌーベルバーグの旗手だったことは有名な話だが、この作品は、クローズアップの多様、アートブレイキーのA Night In Tunisia、安保闘争の時代のにおいのプンプンする名作ドキュメントだ。

 法律家として解説を加えると、司法の次元では、最高裁2002/7/18 判タ1104号147頁にて、日本軍在日韓国人を日本人と異なり恩給支給対象外とする法律であっても違憲ではないと決着がついているので、彼らを救済するには立法措置しか残されていない。
 
 今や国会議員が予算措置を講じるか否かにかかっている。
 ちなみに上記最高裁の理屈は次の①~⑧のとおりである。

①サンフランシスコ平和条約の発効により、在日韓国人は日本国籍を喪失した(つまり日本人ではなくなった)。

②その翌年、軍人への恩給支給が復活したが、恩給法ではその受給資格を日本国民に限定し、かつて日本人であったが日本人ではなくなったものという例外は設けなかった。

③例外を設けなかった理由は、在日韓国人の日本国に対する請求権の処理は、日本政府と韓国政府の二国間協議で以後、外交的に取り決めることとなったからである。

④だから、恩給法で日本人軍人と在日韓国人軍人とで支給の有無を区分する扱いをしていても、合理的な区別で憲法14条に違反しない。

⑤その後、日韓請求権協定が締結された際、日本側は在日韓国人軍人への補償問題は既に解決済みとのスタンスをとり、韓国側は自国による補償対象外の存在であるとのスタンスをとったので、いわば★在日韓国人は両国のいずれからも補償されない状況におかれてしまった

⑥しかしながら、戦争被害を受けた在留外国人に恩給はじめどのような補償を付与するかは、国家財政や社会政策など総合した、立法府の合理的裁量に委ねられる問題である。

⑦日韓請求権協定の内容を踏まえ日本国民にしか軍人恩給を施さない恩給法を在日韓国人も保護する内容に改正するかどうかという問題は、高度な政治外交問題にほかならない(=政治外交のプロではない司法が政治外交問題に干渉することは極力避けなければならない)。

⑧日韓請求権協定後もなお恩給法で、日本人軍人と在日韓国人軍人とで支給の有無を区別する扱いを存置していたとしても、立法府の裁量を逸脱したとまではいえず、憲法14条に違反しない。
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