第1冊 ショウコの微笑
著者は、チェ・ウニョンさんです。
プロフィール
1984年、京畿道生まれ。
高麗大学国文科卒。
『作家世界』で新人賞を受賞し、デビュー。
翌年には同作で第5回若い作家賞を受賞。
2016年に許筠文学賞、2017年に「その夏」で第8回若い文学賞をそれぞれ受賞している。
「その夏」も収録した短編集第2作『私にとって無害な人』は2018年に第51回韓国日報文学賞を受賞した。
静かで端正な文体でつづれれた作品は、長く濃い余韻をもって読者の心を動かすと支持されており、今後の作品に期待が高まる注目の若手作家の一人である。
訳は、牧野美加・横本麻矢・小林由紀さんです。
監修は、吉川凪さんです。
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この『ショウコの微笑』は2017年に実施された第1回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」の受賞者によって訳されました。
ーーーー『ショウコの微笑』の帯の内容ーーーー
「時と場を越え寄り添う七つの物語」
それと、温又柔さんが「心に比べると言葉は不完全だ。それでも心は言葉を必要としてしまう。」とコメントも書かれている。
本の後ろ側の帯には、七つの物語のうちに第一作目の「ショウコの微笑」の紹介から始まっている。
『高校の文化交流で日本から韓国にやってきたショウコは、私の家に一週間滞在した。
帰国後に送り続けられた彼女の手紙は、高校卒業間近にぷっつり途絶えてしまう。
約10年を経てショウコと再会した私は、彼女がつらい日々を過ごしていたと知る。
表題のほか、時代背景も舞台も異なる多彩な6作品を収録。
いずれも作品の登場人物も哀しみ、苦しみを抱えながら、他者と対話し、かかわることで、自らの人生に向き合おうとする。』
ーーーーーー以上が帯の内容ですーーーーーー
本書では吉川凪さんが収録された作品を、ごく簡単に紹介していますので紹介します。
「ショウコの微笑」
主人公の少女ソユは、高校の交流行事をきっかけにミステリアスな日本人の少女ショウコと知り合う。ショウコはソユには英語、日本語の話せるソユの祖父あてには日本語で手紙を送り続けていたが、ある時から連絡が途絶えた。ショウコのことが気になったソユは日本に訪ねてゆき、彼女の心の闇をのぞいてしまう。
「シンチャオ、シンチャオ」
ドイツの小さな町で、父親同士が同じ会社に勤務している韓国人一家とベトナム人一家は、家族ぐるみの親しい付き合いをしていた。しかしある夕べ、韓国のベトナム戦争参戦という過去の出来事が、彼らのなごやかな会話に亀裂を走られる。
「オンニ、私の小さな、スネオンニ」
実際に起こった冤罪事件をモデルにした作品。朴正熙の軍事独裁政権がしかれていた1970年代の韓国で、人々が貧しさや過酷な抑圧をどのように耐えてきたのかが、語り手の母と、母が慕っていたスネおばさんを通して描かれる。
「ハンジとヨンジュ」
進路に迷ったあげく、フランスの修道院にボランティアとして長期滞在することになったヨンジュ。20代後半の彼女は、同じ修道院に来た。ハンジという名のケニアの青年に淡い恋心を寄せる。
「彼方からの響く歌声」
大学のサークルに蔓延していた女性差別と闘い、傷ついたミジンは、卒業後にサンクトペテルブルクに留学した。その十年後、同地に訪れた後輩のソウンは、ミジンのルームメイトだったポーランド人女性ユリアとミジンの思い出を分かち合いながら、生きる力を取り戻す。
「ミカエラ」
母は、家長として無能だが社会正義のために奔走する夫を献身的に支えて生きてきた。夫亡き後は、娘の幸せだけを祈って働き続ける母と、大学を卒業し自立した独身女性としてソウルに暮らす娘は、お互いを思いやりながらもすれ違う。ローマ教皇の訪韓。セウォル号事件といった出来事との関りが、母の姿をいっそう鮮やかに照らし出す。
「秘密」
学校に通えなかったマルチャは、早くから夫を亡くし、一人娘をろくに構ってやれなかった。だから、孫娘のチミンにだけは、寂しい思いや苦労をさせたくないと思っていた。しかしチミンは、大学を出ても教員採用試験にはなかなか受からず、希望していた正規の教員になれない。娘夫婦はある時から、チミンは中国に行って先生をしていると言うようになったが、何か隠しているようだ。がんが再発して余命を宣告されたマルチャは、会えないチミンにあてて、チミンに習ったハングルで手紙を書く。
以上が7作品の紹介です。
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どの作品から読んでもいいのですが、やはり本のタイトルにもなっている『ショウコの微笑』からでしょうか。
ありがとうございました。