塚越寛さんに教わったこと ― 私のブログをたどる追悼
「かんてんぱぱ」で知られる伊那食品工業の最高顧問・塚越寛さんが、2026年6月29日、老衰のため伊那市のご自宅で亡くなりました。88歳でした。7月2日に親族のみで密葬を終え、お別れの会は9月4日、かんてんぱぱガーデン内のかんてんぱぱホールで開かれるとのことです。
塚越さんの「年輪経営」――急がず、毎年少しずつでも確実に成長し、社員の幸せをこそ目的とする――という考え方に、私はこのブログを通じて長く学んできました。けれども伊那で私がいただいたものは、塚越さんや伊那食品工業さんから直接学んだことだけではありません。伊那経営フォーラムをはじめとする学びの場で、志の高い方々と出会い、その一人ひとりからも多くを教わりました。伊那は、私の交流関係を大きく広げ、人生と人間的成長に深い影響を与えてくれた場所でもあったのです。
訃報にあたり、これまで自分が塚越さん、そして伊那食品工業さんについて書いてきた記事を振り返り、そこで何を受け取ってきたのかを、あらためて確かめたいと思います。古い記事から順にまとめました。読み返すと、十数年にわたって同じ人・同じ会社・同じ場から、少しずつ違う角度で学び続けてきたことがわかります。
2006年
フォーラム分科会研修三回目 ・・・ らしい研修会になりました。(2006年10月13日)
ネッツトヨタ南国、伊那食品工業、未来工業、リッツ・カールトンなど、尊敬する会社を題材にした研修会の記録。良い会社の共通点を仲間と語り合っています。
100キロウォークの応援に行ってきました。(2006年10月29日)
100キロウォークの応援記。差し入れの「飲む寒天」の中身が伊那食品工業さんの寒天だったというエピソードに、身近なところで支えられていることを感じています。
負けてられない。(2006年11月19日)
塚越さんの生き方や伊那食品の姿勢に触れ、自分も負けていられないと奮い立った一篇。学びを自分の行動へと引き寄せようとする、初期の記録です。
熱い想いを明確に伝えられるか(2006年12月26日)
理念や想いを、いかに相手に届く形で伝えるか。塚越さんの伝え方を手がかりに、「伝える」という行為そのものを問い直しています。
2007年
シナブロ 閑話休題(2007年3月21日)
好きな言葉をめぐる話題のなかで、伊那食品工業さんの「木の年輪のように」という生き方に触れた一篇。年輪の比喩が心に残っていることがうかがえます。
どこで働くか? より 誰と働くか?(2007年5月15日)
「日本を元気にするセミナー」で大久保寛司さんが伊那食品工業を例にした話を受け、場所ではなく「誰と働くか」の大切さを考えています。
激動の日々(2007年7月9日)
慌ただしい日々のなかで、塚越さんの言葉や伊那食品の話題に触れた記録。忙しさの中でも軸を見失わない大切さがにじみます。
文明は退化しない(2007年9月27日)
「文明は退化しないから活用しなさい」という塚越さんの言葉をめぐる一篇。道具や技術を素直に活かす姿勢に共感しています。
社員のことをどれだけ大切に思えるか(2007年10月3日)
経営の根っこにある「社員を大切に思う」という一点。塚越さんの社員第一の哲学を、自分ごととして受け止めています。
経験は奪い去れない(2007年10月12日)
どんな境遇でも、積み重ねた経験だけは奪われない――塚越さんの半生と重なる気づきを綴っています。
2008年
金が欲しければ、遠きをはかれ!(2008年2月21日)
二宮尊徳の「遠きをはかる者は富む」に通じる、塚越さんの長期の視点。目先ではなく将来を見据える経営観に触れています。
伝える力(2008年5月15日)
理念を組織に浸透させる「伝える力」について。塚越さんの語り方から、繰り返し伝えることの意味を学んでいます。
50周年記念ガーデンパーティー&伊那フォーラム(2008年6月9日)
伊那フォーラムに参加し、伊那食品工業の50周年記念ガーデンパーティーにも入場できたという記録。節目の祝いの場に立ち会えた喜びが綴られています。
伊那フォーラム3(2008年6月11日)
伊那経営フォーラムの参加記録。塚越さんの講演で語られた、組織が原点からそれていくのをリーダーが巻き戻すという話などをメモしています。
ヒケツは写真家の視点 伊那フォーラム4(2008年6月13日)
写真好きの塚越さんの「プロの写真家の目を持つ」という視点。物事をよく観る力が経営にも通じることを受け取っています。
文明のたすけ(2008年6月19日)
「文明は退化しないから活用しなさい」という塚越さんの言葉に、あらためて共感した一篇。道具を素直に使う軽やかさを綴っています。
伊那谷へふたたび(2008年7月10日)
岡崎商工会議所主催の伊那食品工業の見学記。塚越会長の同級生との縁など、現地で得た手ざわりのある学びが記されています。
自分を抱きしめる(2008年9月10日)
「日本を元気にするセミナー」で塚越寛さんが大勢の前で語った話題に触れつつ、自分自身を受け入れることについて綴っています。
青全交2日目(2008年9月12日)
研修・大会の記録。伊那食品の塚越会長の「プロの写真家の目を持つ」という視点を引きながら、観る力について考えています。
第2回名古屋楽心会(2008年10月1日)
やすらぎ・思いやり・親切を人に与えるという学びの記録。伊那食品工業の社員さんはそれが自然にできている、と受け止めています。
一回だけのおまじない(2008年10月22日)
横田会長や四国管財の中澤社長らと並び、伊那食品工業・塚越会長のメッセージに触れた記録。尊敬する経営者たちの言葉を束ねています。
精度の高い普通を目指す。(2008年11月7日)
ネッツトヨタ南国の「凡事一流」を思い出しながら、伊那食品や川越胃腸病院に共通する、当たり前を高い精度でやり切る姿勢について考えています。
何かおかしい(2008年12月1日)
世の中の風潮への違和感を綴るなかで、塚越さんの価値観を一つの物差しにしています。
いのち輝く(2008年12月2日)
「奇跡の経営」として伊那食品工業と並び称される川越胃腸病院の望月院長の著書を紹介。何に影響を受け何を学ぶかを問う一篇です。
2009年
正月は(2009年1月6日)
「学び方を学ぶ」教育や、競争ではない在り方に触れたとき、真っ先に伊那食品工業さんを思い出した、という一篇。同社が思考の基準になっています。
空気が違う。(2009年1月14日)
伊那食品工業や川越胃腸病院など、訪れると空気が違うと感じる会社について。表紙の言葉だけでも学びになる、と書き留めています。
リストラなしの年輪経営(2009年3月12日)
塚越さんの代表的著書『リストラなしの「年輪経営」』をめぐる一篇。年輪経営の核心に正面から向き合っています。
目白押し(2009年3月19日)
予定が詰まった日々の記録のなかで、塚越さん・伊那食品に関わる話題に触れています。
血が騒ぐ(2009年4月28日)
学びや出会いへの高揚を綴った一篇。塚越さんの世界に触れる楽しみが伝わります。
伊那経営フォーラム2009(2009年6月28日)
伊那経営フォーラム2009の参加記録。塚越さんの講演から受け取ったものを書き留めています。
2010年
「いいもの」(2010年5月3日)
伊那食品工業が新入社員教育で教育勅語を扱っていると聞いた話をきっかけに、戦争教育と混同されがちだが本来大切なことが書かれている、と考察しています。
伊那経営フォーラムの報告(2010年6月14日)
2010年フォーラムの導入。塚越会長の「野心」など、当日の内容の予告とともに、学びの記録を始めています。
伊那経営フォーラム2010 その2(2010年6月15日)
第2部・塚越寛会長の単独講演「人・まちが幸せを感じる経営」の記録。経営の結論は「利他」という言葉を書き留めています。
伊那経営フォーラム2010 その3(2010年6月16日)
講演の続き。組織はどんなときも遠心力でそれていく、それをリーダーが原点へ巻き戻す――という塚越さんの組織観をメモしています。
伊那経営フォーラム2010 その4(2010年6月17日)
薄い層を何層も重ねてこそ強くなるという話と、塚越会長のヒノキや屋久杉の年輪の話を結びつけ、年輪経営の比喩を深掘りしています。
伊那経営フォーラム2010 その5(2010年6月18日)
シリーズの締め。塚越会長が怒鳴ったときの根底にあるもの――認めているからこそ叱れる、という愛情のある指導観を受け取っています。
夏はこれ。(2010年7月16日)
夏におすすめの寒天の話題。伊那食品工業さんに心身ともにお世話になっている、という一言に、暮らしと学びの両面での縁がにじみます。
「ずくをだし、みやましく」について(2010年8月11日)
信州の言葉「ずくをだし、みやましく」をスローガンにと本気で考えた一篇。それを当たり前に体現している伊那食品工業さんを引き合いに出しています。
世界夢ケーキ宣言(2010年9月3日)
塚越寛氏が推薦する書籍を紹介した一篇。塚越さんの推す本を通じて、その価値観の広がりに触れています。
第12回あいち経営フォーラム2(2010年11月10日)
あいち経営フォーラムの記録。伊那食品にまつわる話題に触れつつ、良い会社の姿を自分の会社にどう灯すかを考えています。
前提は何?(2010年12月21日)
いい会社が共通してもっている「前提」を問う一篇。J&Jの信条や、伊那食品工業の「人として当たり前のこと」を例に、土台となる価値観を見つめ直しています。
2011年
元気玉を一発かましたい(2011年3月24日)
塚越会長と鍵山相談役の対談などに触れながら、自分も周囲を元気づけたいという思いを綴っています。
西水美恵子さんのお話(2011年5月31日)
西水美恵子さんの講演記録。途中で塚越会長も登場したといい、その場の学びを書き留めています。
西水美恵子さんのお話2(2011年6月1日)
講演記録の続き。西水さんの印象を、大久保寛司さんの言う「伊那食品を代表とするいい会社」の空気に重ねて綴っています。
西水美恵子さんのお話3(2011年6月2日)
シリーズの3回目。焼きつくような感情を与える原体験として、塚越会長の歩みを重ねて振り返っています。
お勧め本(2011年9月22日)
塚越さん・伊那食品に関わる書籍を含むおすすめ本の紹介。学びの入り口として本を薦めています。
2012年
モノを作りすぎ。(2012年3月29日)
「今の世の中はモノを作りすぎ」という塚越会長の講演での言葉を起点に、作りすぎない・売りすぎない姿勢について考えています。
幸せになる生き方、働き方(2012年4月21日)
塚越さんの著書や、受勲記念に作られたものへの期待を綴った一篇。生き方と働き方を地続きで捉えています。
「愛を込めて祈りを込めて心を込めて」の科学性(2012年6月27日)
心を込めることの意味を、伊那食品の姿勢と重ねて考えた一篇。理念が現場の質を変えることに触れています。
映像本 いい会社をつくりましょう。買いましょう。(2012年9月4日)
文屋の映像本『いい会社をつくりましょう』の紹介。「いままで一番いい話ができた」という塚越さんご本人の言葉を伝えています。
本質に迫るインタビュー(2012年9月16日)
「絶対に」と添えて薦めた一篇。塚越会長の100分のインタビューと社員インタビューの素晴らしさを強く推しています。
理念が独自性を生む(2012年11月13日)
理念こそが他にはない独自性を生む、という視点。伊那食品を例に、ぶれない理念の力を綴っています。
2016年
使命感・価値観・軸を確立すればするほど、ストレスから解放される(2016年3月20日)
戦わずして勝つ場所を決めるという戦略論のなかで、伊那食の塚越会長の話を引きながら、確固たる軸がもたらす自由について考えています。
2019年
一枚岩になるまで知らしめる(2019年2月19日)
理念を組織に徹底して伝え、一枚岩になるまで知らしめることのパワーについて。「塚越さんと文屋さんに感謝です」と結んだ一篇です。
振り返って
こうして並べてみると、私が塚越さんから受け取ってきたものの輪郭が見えてきます。急がず確実に育つ「年輪」の考え方。売上や規模ではなく、社員が前より幸せになったと感じられることこそが成長だという定義。理念は繰り返し伝えてこそ組織に根を張るということ。そして、名を求めず、静かに「いい会社」をつくり続ける誠実さ。
そしてもう一つ、忘れてはならない恵みがあります。伊那という場が、私に多くの出会いをくれたことです。伊那経営フォーラムなどに足を運ぶたび、意識の高い方々と知り合い、その方々からも学び、語り合いました。塚越さんと伊那食品工業さんという中心があったからこそ、そこに人が集い、私の交流関係は大きく広がっていきました。塚越さんから直接いただいた学びと、その場に集う人々からいただいた学び――その両方が、いまの私の人間的な土台をつくってくれたのだと思います。
塚越さんの言葉は、これらの記事のなかにいまも生きています。あらためて読み返しながら、教わったことを自分の日々の仕事と生き方のなかで、少しずつでも実らせていきたいと思います。
塚越寛さんのご冥福を心よりお祈りいたします。
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写真も...
これは、2010年6月の伊那経営フォーラムに行った際の1コマです 若い(^^;
