内閣総理大臣 岸田文雄 様

外務大臣   上川陽子 様

 

 

要 望 書

(2月16日の回答を受けての追加事項)

 

 

私たちは、イスラエルが現在、パレスチナ市民に対して継続しているジェノサイドとアパルトヘイトを止めるための活動を行っている市民のネットワークです。今年、1月26日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、同機関職員が昨年10月7日のイスラエル攻撃に関わっていたとのイスラエルの訴えがあり、調査を行うとの発表を行い、それを受けて日本政府は、UNRWAへの拠出金を停止する措置を取りました。それに対して私たちは、ガザの人道状況を悪化させる拠出金停止措置の即時撤回と、事実が判明していない段階でこのような拙速な判断がなされた経緯と理由についての説明を求める要望書を2月9日に提出しました。そして、2月16日には、外務省大阪分室にて外務省でとりまとめた回答を口頭にて伺いました。

回答を文書で示さず、録音もさせないという対応も非合理的であり早急に改めていただきたいと考えていますが、回答内容そのものも、私たちの質問に正面から答えておらず、市民社会の声に向き合おうとしない後ろ向きの姿勢だけが目立つものでした。

1月28日以降も、ガザでは毎日100人以上の住民が殺害され続けています。日本政府がUNRWAへの拠出金を停止してから50日が経とうとしていますが、その間およそ5000人の方の命が、イスラエルによる空爆により、あるいは支援物資搬入の妨害がもたらしている飢餓状態により奪われ続けています。日本は、この5000人の命の喪失に対して責任があると言わざるを得ません。

現在の危機的状況をもたらしている責任は、第一義的にはイスラエルが負うべきものでありますが、より根源的には、100年以上にわたりパレスチナ人の自決権がないがしろにし続け、77年にわたりイスラエルに対する「不処罰」の伝統を維持してきた国際社会の責任こそが問われなければなりません。パレスチナにおけるユダヤ人国家設立に道を開いたサンレモ会議への参加(1920年)に始まり、今回のUNRWA拠出金停止措置に至るまで、日本自身、様々なかたちでこの問題に関わってきたのであり、まさに当事者として危機打開の努力を行うべきです。

 以上の認識から以下、あらためて要望させていただきます。

 

 

 

1. 上川外相は3月15日の記者会見で「UNRWAが一日も早くその役割を果たせるような取り組みをUNRWA自身が進めることが重要だ」と述べ、「UNRWA独立評価グループ」による中間報告発表が支援再開の条件であるように述べていますが、そもそも、EUやノルウェー、サウジ、トルコなどは停止措置を取っておらず、また、カナダやスウェーデン、オーストラリアは中間報告をまたず、支援再開を決定しています。いまガザでは、60万人近くの住民が「飢餓の一歩手前」にあるとされ、すでに子どもの餓死が多数報告されています。このような人道危機状況において長年パレスチナ支援に関わってきた日本が、その経験や経済力、憲法の理念に見合ったイニシアチブをまったく発揮できていないことは、極めて恥ずべきことです。ただちにUNRWAへの資金拠出を再開してください。

 

2. 2月16日の回答では、「外務省を中心に対応を検討した結果、国連による調査が行われ、対応策が検討されるまで、UNRWAへ追加的な緊急支出を一時停止せざるを得ないとの判断に至った」とのことでしたが、私たちがもともと質問していた、国連の調査結果が出る前の段階にもかかわらず支援を停止したことの説明にはなっておらず、経緯を繰り返し述べたにとどまっています。日本の外交政策は、イスラエルの情報操作や欧米諸国のイスラーム蔑視によって左右されてはいけないはずです。

昨年10月25日にも外務省は同月17日のアハリー・アラブ病院に対する爆撃について、「各種情報を十分に考慮し、総合的な判断として、イスラエル軍の攻撃によるものではないと考えている」と述べていますが、その後の調査によりイスラエルの示した根拠には多くの矛盾があり、イスラエル軍の攻撃としか考えられないことが明らかになっています。

今回のUNRWAの問題に関しても、具体的な証拠がイスラエル側から全く開示されておらず、また、長年にわたるイスラエルによる反UNRWAキャンペーンという政治的背景を考えれば、イスラエルによる情報操作の可能性を疑う必要があることは明らかであり、欧米諸国、とりわけ米国の対応を後追いするかのような拙速な措置を取ったことは、外交の主体性を放棄する愚行です。ガザで起きていることについてイスラエルが発する情報と、それに対する欧米諸国の反応が極めて歪んだものであることを客観的に認識し、より公正な視点から状況分析を行い、対米従属ではない中東政策を打ち出すことを強く求めます。

 

 

3. 上川外相は1月27日、国際司法裁判所がイスラエルに対して発出した暫定措置命令を受け、「ICJの暫定措置命令は、当事国を法的に拘束するものであり、誠実に履行されるべきものです。・・・全ての当事者に、国際人道法を含む国際法の遵守や、関連の国連安保理決議に基づいて誠実に行動することを求めつつ、人質の即時解放、人道状況の改善、そして事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けていきます」との談話を発表されました。これらの文言は2月16日の回答にも含まれていました。

ICJの暫定措置命令は、ジェノサイドがすでに行われている可能性を前提として出されているものであり、事実上、イスラエルに対して攻撃停止を命じるものです。また、イスラエルはジュネーブ第四条約の締約国として、ガザ住民を保護する義務があるにもかかわらず、その真逆のことを行っています。住民の一部が10月7日の攻撃に参加したからといって、その他大勢の住民に被害を及ぼすような攻撃を行うことは、同条約が禁じる集団懲罰に当たります。そして、日本はこの条約の締約国として「条約の尊重を確保する」義務があります。関連する最も重要な国連安保理決議の一つがイスラエルに占領地からの撤退を求める242号であることは言うまでもありません。

現在イスラエルは、150万人の避難民が集中しているガザ地区南部の町ラファへの地上攻撃の準備を進めています。2月16日の回答に嘘偽りがないのであれば、外相自身が「惨事となることは明らか」と認識されているこの地上侵攻の開始を絶対に許さず、イスラエルに対してただちにガザに対する攻撃を停止し、即時撤退することをイスラエルに対して強く求める姿勢を明確にしてください。

 

4. 2月16日の回答では、「パレスチナ武装勢力とイスラエルとの間での武力衝突と停戦の繰り返しに終止符を打つため、ガザにおけるパレスチナ自治政府の立法的な統治の確立、持続的な停戦合意および国際社会の協力による国際的なメカニズムの構築が不可欠です。これらを通じてガザ地区への武器流入を阻止し、封鎖の緩和によってガザ地区の人道状況の改善がなされることが重要と考えています」とのことでした。ここには、イスラエルがパレスチナを占領しており、パレスチナ人の自決権が侵害されているという認識が完全に欠落しています。結果として、ガザ地区への武器流入のみが問題視され、イスラエルへの米国等による武器供与にはまったく言及されていません。パレスチナ人の抵抗権を無視し、イスラエルの「自衛権」のみに注目するダブルスタンダードこそがパレスチナ問題の根幹を構成するものです。

上川外相は、3月13日の国会答弁で、イスラエルのガザ攻撃が国際人道法違反であることを明言し、それまでの「法的評価を差し控える」との立場からようやく一歩前進されました。日本が批准している武器貿易条約においても、ジュネーブ諸条約の重大な違反は、ジェノサイド罪などとともに、当該国への武器移転を禁止すべき要件とされています。

日本は、2014年に武器輸出三原則を撤廃すると同時にイスラエルとの関係強化を進め、同国との武器関連取引の規制を大幅に緩和してきました。イスラエルの軍需・セキュリティ関連企業と日本企業とのビジネスが奨励されてきた結果、多くの日本企業がイスラエルの戦争犯罪に加担するリスクを抱えることになっています。イスラエルの最大手軍需企業エルビット・システムズと結んだ協力覚書の破棄を選択せざるを得なくなった伊藤忠商事や日本エアクラフトサプライもそうした企業に含まれます。ファナックという日本のロボットメーカーが、イスラエルで使用されている武器を製造している軍需企業に製品販売しているという深刻な問題も指摘されています。

 もし日本政府が、イスラエルのガザ攻撃を重大な国際人道法違反であると認識しているのであれば、ただちに、国連憲章および武器貿易条約等にもとづき、イスラエルに対する全面的武器禁輸を実施してください。

 

2024年3月17日

 

関西ガザ緊急アクション

 

連絡先

〒540-0038大阪市中央区内淡路町1-3-11-402

市民共同オフィスSORA気付

Email: ysige1971@gmail.com(役重)

 

(以上、写真は2月16日回答受け取り行動の時のものです)

 

追記:3月24日、下記各政党に、上記要望書添付の上、日本政府に国会等で、UNRWAへの資金拠出再開を追及されるよう、郵送申し入れしています。

 

自由民主党大阪府連合会

 

公明党大阪府本部

 

大阪維新の会

 

国民民主党大阪府総支部連合会

 

立憲民主党大阪府総支部連合会

 

社会民主党大阪府連合

 

日本共産党大阪府委員会

 

れいわ新撰組

大石あきこ事務所

 

衆議院外務委員会

青柳仁士 維新 大阪14区

 

こくた恵ニ 共産 近畿比例区

 

参議院外交防衛委員会

松川るい

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【参考】

以下、2月9日、外務省大阪分室への、「UNRWA資金拠出停止撤回申し入れ」の 要望書とその時の写真です。

 

 

内閣総理大臣 岸田文雄 様

外務大臣   上川陽子 様

 

要 望 書

 

日本政府による国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への「資金拠出一時停止」の撤回を求めます

 

私たちは、「中東和平」に深く関わってきた日本に暮らす市民として、現在のガザ地区における壊滅的状況を深く憂慮し、去る1月28日に日本政府がUNRWAに対する資金拠出の一時停止を決定したことに対し、強く抗議します。

ガザ地区のパレスチナ保健省によれば、10月7日以降約4か月間に、ガザ地区では2万6000人が死亡し、6万5000人以上が負傷、8000人以上が行方不明になっています(1月29日現在)。

1949年の設立以来、UNRWAが行っている食糧支援・教育・保健医療等のサービスは、現在、ガザ住民が甚大な被害を受け、過酷な避難生活を強いられている状況において、人々の生活と生命を維持するために必要不可欠なものであることは誰がみても明らかなことです。日本政府を含む18か国が資金拠出を停止したことは、イスラエルのパレスチナ人に対する民族浄化・ジェノサイドへの加担です。

 

 1万3000人いるUNRWAのパレスチナ人職員の中の12名が「アル=アクサ―の洪水」作戦に参加したとのイスラエル側の訴えにもとづく「疑惑」は、UNRWAへの拠出金を停止する理由にはなり得ません。そのことにより、ガザにおける食料、水、医薬品の欠乏、不衛生な環境下の感染症が進行するのは明らかです。これは集団懲罰に当たり、国際法違反です。

1月26日には国際司法裁判所(ICJ)が、南アフリカ政府の訴えを受け、ジェノサイドを防ぐために手段を尽くすこと、必要な緊急支援を可能とする措置を行うことをイスラエルに命じる暫定措置命令を出しました。上川外務大臣も、「この暫定措置命令は誠実に履行されるべきもの」との談話を発表しました。今回の日本政府のUNRWAに対する拠出金停止は、国連加盟国としての当然の責務を述べたこの談話にも矛盾するものです。

 

 

 そもそも、歴史的に見れば、パレスチナ人の苦難は、ヨーロッパにおける反ユダヤ主義の問題をパレスチナ人の犠牲によって解決しようとしたシオニズム運動を欧米諸国が支持したことに始まります。1948年のイスラエル建国以来続くイスラエルの民族浄化・アパルトヘイト政策の中、パレスチナ人はその人間としての尊厳を賭けて闘い、生き抜いてこられました。10月7日はその歴史の中で迎えられた日であることに心せねばなりません。長年続いているイスラエルによるUNRWA攻撃は、自らの加害の歴史を

抹消しようとする試みに他なりません。

 

 一方、この日本は、アイヌモシリ・琉球・台湾・朝鮮半島・中国大陸・・・等に対する侵略と虐殺を繰り返して来た加害の歴史を持ちます。これを心から反省し、世界の人々に約束する意味で1947年、日本国憲法を制定し、その前文で、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と謳ったのではなかったのでしょうか。国際社会とは、欧米諸国だけではありません。今回の日本政府の措置は、いま世界中で起きている脱植民地化の潮流に真っ向から対立するものであり、大きく変わりつつある世界の中で日本が「名誉ある地位」を占めようとする努力を自ら公然と放棄する所業であると考えます。

以上に認識にもとづき、以下要望します。

 

1.日本政府は、UNRWAへの資金拠出の一時停止措置を撤回してください。また、同様の措置を行った他国に対しても、拠出停止の撤回を働きかけてください。

2.国連による調査が行われている段階であるにも関わらず、ガザにおける人道危機をさらに深刻化することとなる上記決定を極めて短期間で行った経緯と理由を明らかにしてください。

3.日本政府は、ICJによる1月26日の暫定措置命令を尊重し、ジェノサイドを防ぐためにガザ攻撃の即時中止とガザからの即時撤退をイスラエル政府に求めてください。

4.対イスラエル武器禁輸を求める国連総会決議(ES-9/1、1982年)、入植地ビジネス終結を求める人権理事会決議(A/HRC/RES/22/29)、およびイスラエル軍によるジェノサイドの可能性を前提としたICJの暫定措置命令等を考慮し、イスラエルに対する武器(デュアルユース製品・技術を含む)および入植地製品の輸出入を全面的に禁止してください。

 

以上、それぞれの項目に対する政府の見解をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

 

ガザ・パレスチナの人々と共に生きていくために。

世界の希望、人間の未来を拓くために。

 

 

2024年2月9日

関西ガザ緊急アクション

 

連絡先

〒540-0038大阪市中央区内淡路町1-3-11-402市民共同オフィスSORA気付

Email:bds.kansai@gmail.com

(役重善洋)