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今日は、杉山登志郎先生の著書「(発達障害の子どもたち (講談社現代新書)
」より、障害告知の遅れから、性不同一性障害を併発する事例について、お話します。
さて、発達障害の10歳~15歳あたりは、複雑な心境を抱える年齢のようです。周囲はどんどん大人びていき、コミュニケーション方法も大人並みに複雑になっていきます。一方、どこか幼い印象の発達障害児は、周囲との差を感じ始める年齢でもあります。
「何かがおかしい」
「みんなには、自分にはない、何かがある」
などの疑問を感じ始める子は少なくないようです。
さて、杉山先生によると、こうした思いが高じた結果、性同一性障害を訴える当事者が少なからず居るそうです。上記の「何かが違う」・・・を、『性別が違うのだ。だから、自分は周囲とうまくいかないのだ。』」と思い込んでしまった事例ですね。実際私自身も、こうしたお話をある親御さんから聞いた事があります。「本人は思い込んでしまっていて、翻意させるのは難しい。」とおっしゃっていました。
また、これは別の場で聞いた話ですが、告知を受けないまま、性同一性障害だと信じ込んだ男性が、やがて、性転換手術をしてしまったそうです。しかし、その後も対人関係などの問題は解決しないので、初めて精神科を受診したら、そこで「あなたは発達障害である」と告げられたというのです。しかし、もう既に体は元には戻せない訳で、その方は悲嘆にくれて、ひどい状態になっているということでした。
私が知る限りにおいても、こうした事例は上記を含んで、3例ありました。
杉山先生によると、
性同一性障害を併発した方々への対処は、
適切な告知を行い、
本人の納得を得て、
本来の問題の根本解決に立ち戻り、
その解決法を具体的に示すことだとおっしゃっています。
また、杉山先生ご自身の告知へのスタンスとしては、
「まず、心の理論を獲得する小学校高学年に第一段階、
そして高校入学時に、第二段階として、
もう少し詳しい説明をする」とのことです。
2回目をする時期と言うのは、
ちょうど、自分の判断で動き出す事が増え、
一気に世界が広がる時期だから、
「青年期の適応を順調にするためにも大切である」と述べられています。
杉山先生の経験からしても、
こうした告知をきちんと行った子ほど、
その後の適応の良い事が多かったそうです。
発達障害で二次障害を起こしていると、
親や教師のいう事には、
もはや耳を貸さないということも、
まれではありません。
また、そうなってしまっている子が、
自分を性同一性障害とご認識してしまうと、
その誤解を解くのは容易ではないそうです。
本人にしてみればようやく見つけた「解」である訳ですから、
余程、信用できるという人から言い含められるのでなければ、
受け入れないことが多いそうです。
こうしたケースはそう多くはないようですが、
やはり、適齢期を見極めた上で、
思春期に入る前に告知する事は、
非常に大切なように、僕は感じています。
自己否定や疎外された経験が、
散々積みあがった後で、
その状況を戻していくのは、
いろいろな方のお話を聞いても、
相当、難しいように感じます。
自分にある特性が、
「何かが違う・・・」「なぜだ?」「なぜだ?」でその時期を過ごすのか、
「自分は、人とは違うけれど、
そんな自分をどう生きていこうか?」と自問するのでは、
そのあとの人生に、大きな違いがあるように、僕も感じるのです。
記事中でご紹介した本です。
杉山登志郎 著
豊富な臨床経験をお持ちの医師で、
事例紹介や概念説明が、非常にわかりやすいです。
新書なので、少し理系チックな本ですが、
それほどぶ厚くもないので、
一気に読めてしまいますよ
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