発達障害部門 第10位
今日は、定型発達と当事者さんの会話のやり取りの中で生じやすい、当事者さんが「人の気持ちが判らない」といわれる状況についてのお話です。
最初に結論を言うと、定型側からは「この人は、ひとの気持ちもわからないのか!」という感情を抱くケースというのは、実は、定型側が想像する範疇の態度や発言が、当事者さん達から返って来ない時である場合が多いようです。
実際に人の気持ちが判っていないのではなく、
定型側にそれを感じさせるような
反応が出来ない為、誤解されている
・・・というケースが非常に多いように感じます。
そして、これは、定型の会話プロセスに、
その原因と真相が隠れています。
今日はそのプロセスについて記事にしたいと思います。
【定型発達の会話プロセスから】
本シリーズの1回目に、会話プロセスの例をあげました(詳しくはこちら)。
会話中の定型発達の脳内では、
無意識のうちに、相手の考えや状況を、
その言葉や顔の表情、身振りなどから想像し、
自分の返答を、複数の選択肢の中から、
選びながら進めるというプロセスがあると書きました。
ところが実際は、これだけではなく、
更にもう一歩踏み込んだプロセスが、進行しているのです。
それは、自分が返答を選ぶ時に、
その返答をした後に、相手がどう返事をしてくるか、
・・・まで想像して、判断基準としているというプロセスです。
そしてその先読み傾向が、
定型発達者の語会の元となりがちなのです。
【会話における定型思考の例】
たとえば、次のような会話での脳内プロセスを再現してみましょう。
AさんはBさんと会話をしています。
A:「ねぇ、こないだ頼んだ仕事、あれ、忙しそうだしこっちでやろうか?」
今回も、Aさんは言った瞬間に、無意識に相手の分析が始まっています。
B:「そうねぇ!?どうしようかしら・・・」
今回もBさんははっきり返事をしません。
どうしようか迷っている様子で、妙な間が2人の間に漂います。
そこでAさんの脳内では、次の言葉を捜し始めます。
(A:やっぱり、すぐには仕事が出来そうにないのね。
聞いてみてよかった・・・・・。)
こう思考した瞬間に、Aさんの脳では、次の発言の候補があがってきます。
1.「本当にダメなの?言ってはみたけど、本当は出来そうに思うけど」と少しつっこみ気味に問うパターン
(元々、引き受ける気はなく、期日までに仕事が終わってないと困るので、ちょっと聞いてみた時に、こうした返答をぶつけることも多いでしょう。)
2.「実際、どんな感じ?忙しい?」と相手の事情の質問をしつつ、状況を見極めようというパターン
(本当はこちらも忙しくて、容易には引き受けたくない場合、まずは相手の状態を聞いてみようという姿勢)
3.「遠慮なく言ってよ!何とかなるから、引き受けようか?」と中止を前提に助け舟を出すパターン
(自分の仕事の状況が、手助けできそうか考えつつも、何とかなりそうなら、こうした返答が採用されるでしょう)
そして、Aさんは思考します。
(1だと、ちょっとキツイよね。相手も「なんだ、言ってみただけかぁ!Bさんなら『それなら、間に合わせてよ!ってはっきり言ってよ』なんて、言い返されそう・・・」、この台詞はまずいわね。2だと、相手の意思をそれとなく確かめられるし、無難よね。3なら、相手も頼みやすいし、こう返す手もあるわね。)
Aさんは、迷います。
(どうしようかな、2がいいか、3がいいか。ここは自分の仕事の状況で決めるしかなさそうね。今、こっちも忙しいし、Bさんにはいつも指導してあげてるんだから、まさか、厚かましく「お願いします」なんて、言ってこないわね。もし、頼んでくるとしても、「実は、かくかくしかじか・・・」と事情を丁寧に説明してくるよね。心底、頼まれたら、しょうがないから、引き受けるか!)
このように想定して、
どれが返ってくる確率が高いかを想定したり、
自分にとってはどれが返ってきてほしいのか、
また逆に返って来てほしくないのかなどを考えているのです。
そして、こうした全ての候補を検討した後に、
今返す台詞を選ぶわけです。
【想像した反応を待つ、定型発達の行動パターン】
当然、こうしたプロセスは、
ほとんど無意識におこなっています。
しかも、瞬時に思考されることが多いです。
(もちろん、悩ましい状況などでは、
意識化で熟考することもありますが。)
そしてこのケースでは、2が選ばれました。
A:「実際、どんな感じ?忙しい?」
Aさんは、「自分でやります」と言ってくるか、
「かくかく、しかじか・・・」と相当恐縮しながら、
事情を説明してきて、相談されると想像しています。
2人の関係性や、互いの忙しさを考えて、そう想像しています。
ところがBさんの応えはこのようなものでした。
B:「なんだか忙しくって。じゃぁ、お願いできますか!」
こういったBさんは、相手のAさんの反応にギョッとします。
Aさんの顔は少しこわばり、
またもや沈黙が漂ったからです。
【想定外の返答に、定型が感じる怒り】
Aさんは思っています。
(「なんだか、忙しくって」って、なによ。
忙しいのはあなただけじゃないわ。
この子は、なんでも甘えてくるだけなのね。
言って損した! 信じられない!
まだ、恐縮して言ってくるならまだしも、
こんなにシレ~っと言ってくるなんて、
そんな子だったのね。)
Bさんにしてみれば、
実際仕事がこなせるか不安でもあったので、
助け舟をもらったと思って、
言葉通りにとって、甘えただけでした。
また、当事者性から「どんな感じ?」と聞かれて、
なんと答えてよいのか困ってしまったのもあったのでしょう。
こうした曖昧な質問は、更に誤解の元を産みやすいようです。
でも相手の反応をして、
何かまずいことを言ったことだけはわかります。
どうしたら良いものかも浮かばず、
嫌な沈黙が続きます・・・・。
【定型側の先読みの予想に反することでされる誤解】
定型側が、「この人は、こちらの気持ちがわからない!?」と思うときって、このように相手が自分の想定外の返事を返してきた時が多いように思います。
特に、今回のように自分の気遣いを理解してもらえず、
そこを無視したような返答をもらった時に、
定型発達者は感情的になりやすいようです。
例えば、もし
1)「実は、昨日も一昨日も、
次々と部長に仕事を言われていて。
すごく困ってはいるんだけど、
Aさんも忙しいんじゃない?」
・・・・などと、言ってくれば、Aさんも沈黙することはなく、
相手の相談に乗るつもりだったでしょう。
それを、躊躇なく依頼してくるBさんの態度は、
Aさんにとっては、想定外の返事です。
無碍もなく、「じゃぁ、お願い!」なんて言った日には、
「もう、二度とあの子には、相談しないわ!」
ということにもなりかねません。
【誤解が、不安を生み、社会適応を困難に余計にする】
このように、当事者側が、
定型の予想する態度や反応を返せないことで、
性格や人格までをも疑われてしまうケースは、
社会に結構多いように思います。
当事者さんは確かに、
相手の親切そうな言葉を鵜呑みにしたかもしれません。
でもそこに悪意があったわけではなかったのに。
Aさんは、自分の配慮を汲み取ってもらえなかったばかりに、
Bさんの態度に「厚かましい」と悪意すら感じています。
僕は、ここが両者のすれ違いであり、
齟齬だと考えています。
定型発達者は自分にある想像性が、
相手にはないことがわからず、
無い為に起こる行動にまで、想像が働きません。
その結果、相手の言動を、
自分の尺度で解釈・判断してしまっているのです。
また、想像性のない側からすれば、
有る者の心情はわかりません。
こうした場合では、当事者側にしてみれば、
自分がなぜ相手に嫌な思いをさせてしまったのか、
中々判り難いように感じます。
時には「わたしって、実は嫌われている!?」と、
あらぬほうに考えてしまうこともあるでしょう。
そして、こうしたことが続くと、
次は、相手の言葉を深読みするようになり、
益々、即答が出来なくなり、
会話の妙な間が、日常化することもあるでしょう。
こうした迷いが、当事者側に出てくると、
その人と話すことすら、段々コワゴワになっていき、
その社会適応は、当事者側に、
精神的負担が掛かる状況となってしまいます。
さて、今日は、定型発達者側の
会話の思考プロセスの先読み傾向が、
当事者さんの行動を誤解し、
相手の何気ない行動を、
悪意のある言動と解釈してしまうパターンについて、
記事にして見ました。
このケースに、更に定型側の言葉に、
何らかの意図が含まれていると、
もっと事態は複雑になります。
明日はそのあたりについて記事にしてみますね。
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