先日社会スキル(ソーシャルスキル)の例として「休戦協定」のお話をしましたが、今日は職場でのスキルとして、「上司の訓話や指示をどう解釈したらよいのか」について記事にしてみたいと思います。
当事者さんの職場での戸惑いに、
「上司の指示があいまいで困る・・・」
「言うことがコロコロ変わって困る・・・」
というのがあるとお聞きします。
「これ、ちゃんとやっといてね!」みたいな指示で、
何を、どう、ちゃんとやれば困るという曖昧もあるようですが、
「朝、ある訓話があったので、その通りにやったら、
『もう少し、考えて仕事をしなさい』と怒られてしまいました」
というような事もあるようです。
僕は、ここに定型同士の上司と部下の関係を、
当事者さんが掴めていないという原因があるように感じます。
【定型特有の行動特性と、それを見越した言い回し】
もう少し詳しく説明するなら、
「世間では、部下は、上司が言うことを100%鵜呑みに実行するものだとは考えていないということです。上司も、自分が言った指示を、そのままに部下が100%は実行しないだろうし、むしろ、実情に合わせて、柔軟に対処するだろうと指示を出している・・・ということです。」ということです。
あるいは、「上司は部下が、自分が100%の指示を出したとしても、部下は60~70%程度の努力しかしてくれないと心得ているし、そこを見越して100%の指示を、少し厳しい目や杓子定規気味に出している」ということなのでしょう。
ちょっと人のココロの裏を探るようなずるい言い方に言い換えると、「部下は上司の言ったことは、60~70%程度やれば、さほど怒られないことを心得ている。」ということです。そして、職場での定型社会というのは、こうしたバランスの元に成り立っているということです。
発達障害者が、職場での社会適応に混乱する要因として、
僕はこれが結構大きいのではないかと考えています。
念のためにいいますと、
これは決して仕事をサボっていいという意味ではありません。
しかし、指示をそのまますべて実行しようとすると、
たいてい無理も来てしまうというお話です。
また、上司は、何が何でも、
指示を守れといっているわけではないというお話です。
【想像性を見越した発言・・・・】
ここでは何が起こっているかと言うと、
上司は部下の想像性を見越して、
指示を与えているという事実です。
「自分が、こういう風に言った所で、
部下はその場に合わせた状況判断をするだろう。
けれども、みんなの気持ちを引き締める為に、
少し厳しい指示を出しておこう」
・・・などと、意図しているのが通常なのでしょう。
実はこの話、ある成人当事者さんとの会話の中で、
僕が話したところ、相手の方が、
「今までそんなことぜんぜん知らなかった」
と感心されたことで、
ぼくはかえってびっくりしたというエピソードなのです。
そして、この話を他の3人の当事者さんに話したところ、
その内、2人からも感心されたのです。
当事者さんは、「意外にこんなことでも躓いているのだぁ」と、
思ったのでした。
ちなみに、最初に感心されたという当事者さんは、
家に帰って親御さんに、「今日こんな話を聞いたのだけれど、
それは本当か?」と訊ねたら、
「今まで気づいていなかったのか?」と驚かれたというのです。
こうした意識のずれは、定型発達者と発達障害者の間で、
世間のいたるところで起こっているように、
僕は感じたのです。
【校則と社訓の違い】
これが学校なら、先生の訓話や指示は、
ほぼ100%守ることが求められます。
また、守る生徒は、単純にほめられることでしょう。
校則というのは、ある程度、
杓子定規に運用されることが求められています。
でも職場は違います。
いい例が、社訓です。
よくある社訓に、
「社会に貢献する社会人であろう」とか、
「倫理をわきまえ、誠意を尽くそう」
などというのがありがちですが、
では、営業部長が部下に、
「顧客への誠意・誠実をモットーに、
いつ何時でも倫理優先で、相手に奉仕せよ」
と指示するかというとそうでは在りません。
実務では、ずるく立ち回ることや、
相手の弱みを付いたり、自分の強みを押し付けたり。
そして民間企業で、何よりも優先されるのは、
社員の生産性向上と、会社の利益UPです。
社訓が求めているものは、
「厳しい競争社会で会社が利益を上げ、
生き抜くために、利潤の追求は大切だが、
そんな業務の根底に、
大切な精神として心得よ」
という意味だと、ぼくは受け取っています。
また、多くの定型発達者はそう受け取っていると思います。
たとえ、「今日から、利益が15%以上取れない仕事は
もう、受注しない」という営業部長の訓話が合ったとしても、
「なら、利益の低い仕事はみんな放棄して、
営業として追いかけるのはやめよう」
などと考えてはいけないのです。
また、多くの定型の部員は、
「そうは言っても、この厳しい買い手市場で、
そんなに利益が取れる仕事なんてないよな。
実際、年度末が迫ってきたら、少々利益率が低くても、
受注量の維持優先に舵は切り替えられるだろうし、
とりあえずは、利益UPは心得るけれども、
利益の低そうな仕事もフォローしておこう」
という風に考えるのです。
ここで大切なのは
「とりあえずは、利益UPは心得るけれど」
というこの精神です。
実行ではなく、心得ることが大切で、
その後の会議などでは、利益UPを意識した発言や、
頑張ろう問うする姿勢を問われるわけです。
15%の受注利益という結果が出るかではなく、
やろうと心得ることが大切なのでしょう。
そして、部長はこの訓話を通して、
実は、「もう少し、利潤UPを追求し、
せめて10%の受注利益は確保するように」
ということ言いたかったりするのです。
最初から10%というと、それも満たされなくなるので、
15%などというノルマを与えてみただけ
ということも在るのでしょうね。
【上司の言葉にしばられすぎないことの大切さ】
今日は上司の訓話にこめられた意図
について記事にしてみました。
言い換えると、相手の言うことに振り回されすぎずに、
ただ、「その意図は理解してますよ」と心得て、
その心得を態度に示すことの大切ということですね。
もちろん、こうした周囲に与える印象を意識した行動こそが、
当事者さんには難しい部分もあるのですけどね。
ここまで出来るようになるには、
それなりの経験とスキルアップが必要なのでしょうね。
でも大丈夫。
僕は思うのですが、まずは、
「上司の言うことは100%守らなければ!(実行しなきゃ!)」
という呪縛から気持ちを解き放すことから
始めて見てはどうでしょう。
「70%を守ればよい!」と考えてしまうのです。
そこにしばられない気持ちを持つことだけでも、
随分違うと感じます。
職場で、上司の指示の対処に困っているという方は、
一度試してみてはいかがでしょう。
今日はそのあたりのスキルを整理してみました。
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今回は、午前に勉強会を開催し、午後はグループワークです。
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