特別支援教育部門 第2位
発達障害部門 第9位
今日は「状況把握の困難」が原因で、物事の因果関係がつかめずトラブルになってしまう事例について、触れてみたいと思います。
さて、発達障害児には、物事の因果関係が中々つかみづらい子が居ます。簡単に言うと、「あれが原因で、こうなっている」ということがわかりづらいのだと思われます。
【因果関係がつかめないトラブル事例】
例えば、A君が何気なく隣の子を押してしまったとします。
当人に悪気は全くなく、それは偶然でした。
ところが、相手のB君は押されたと思って、押し返してきました。
きょとんとしたA君でしたが、
B君に対して、激しく怒ってしまいます。
「なにするねん!」と突き返した結果、
ふたりは掴み合いのけんかになってしまいます。
あとで、先生が両者に聞き取りをすると、
B君は「わざと押されたと思ったのでやり返した」と証言。
ところがA君は「ぼくは何もやっていないのに、
急に押されてん」と訴えてきます。
先生が周囲に聞き取りをすると、
どうやら、A君が偶然押してしまった事がきっかけだと判りましたが、
それを説明しても、A君はピンと来ない様子でした。
【当人には中々わからない現実】
これが定型発達の子であれば、
自分が押してしまった事は単なる偶然でも、
それによって相手が怒ったという状況が、何となく判るものです。
ひと言、「あっ、ゴメン」と言えば、それで済む状況です。
そこを押し返した上に、
自分のした事を棚に上げたような態度をとると、
思ったよりも大きなけんかになってしまうこともあるようです。
このように因果関係がつかめないというのは、
意外に大きなトラブルを産んでしまうのです。
【うちの息子の事例】
さて、うちの息子にも同様のことがありました。
1年生の春のことでしたが、
一緒にお風呂に入っていると、
「○○ちゃんに、キモイって言われた」
と女の子の名前を言って、突然泣き出したのです。
結構、深刻に泣くので、次の日妻から先生に事情を聞いてみました。
すると、息子の幼さや無邪気さに原因がある事が判ったのです。
どうも、うちの子は、保育園の頃の延長線上で、
相手が女の子でも、親しみを感じると、
抱きついてしまっていたそうなのです。
ところが相手はもう小学生気分ですから、
男の子から、そんな事をされると、もう嫌がる年頃なんですね。
それで「キモイ」と言ったそうなのですが、
息子には、それが自分に原因があると分からずに、
言われたことだけを受け止めて、
夜になって思い出して、泣き出してしまったのです。
これは笑い話でもなんでもなく、
当人はいたって真面目に言っているのです。
ふざけている訳でも、無責任な訳でもないようなのです。
実際、本当にその因果関係がわかっていないのですね。
【トラブル対処法】
でも、発達障害児も、ちゃんと理由を説明されれば、理解は出来ます。
当然、それはそうなのです。
この場合も妻から、
相手の子が「キモイ」と言った理由について、
息子に説明をしました。
そして、
「もう小学生になったら、
女の子に抱きついたりしたら、
嫌がられるねんで・・・。
女の子は、そういうの恥ずかしいねん。
それはもう、あかんねんで」と話すと、
コクッと素直にうなずき、
もうそれ以降、同様のトラブルはなくなりました。
【説明以上に大切な、相手への共感】
また、こうしたことを説明する際に、
もうひとつ大事なと思うのは、
「君は女の子に『キモイ』っていわれて、嫌やってんなぁ」と、
その子の気持ちに、ちゃんと共感の姿勢を表すことだと考えます。
発達障害児は、話せば判る理知的な子達ではありますが、
本人なりに分からない事が原因で、
たとえそれが社会的にはおかしなことであったとしても、
その当人が傷ついて、悲しんでいる事に、変わりはありません。
親や担任の先生が、
当人のそうした気持ちをきっちりと読み取って、
そこに共感の姿勢を示すことで、
より一層本人は、素直に忠告を聞き入れられるのだと思うのです。
「そりゃ、あかんよ!」
「そりゃ、嫌われるわ!」
・・・と言い放つだけでは、
こちらの事情の押し付けに過ぎないと考えます。
発達障害児の事情というか、
あちらの世界の論理に対しても、
その世界にちゃんと足を踏み入れて、
そこに理解を示した上で、
定型の論理を説明する事が、大切なのだと考えます。
発達障害児は、こうした経験を積み重ねることで、
やってはいけないことは、ちゃんと理解して言ってくれるので、
「えっ、なんでそんなことが判らないの?」
と呆れてしまうなどは、最もよくない対応だと考えるのです。
発達の世界も、定型の世界も、
どちらが間違っている訳でもないという視点も、
また、大切ではないかと考えるのです。
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