発達障害の認知パターンにおける「細部へのこだわり(とらわれ)」は、日々生活の中の生きづらさを生む要因になっているようです。しかし、この認知特性は利点になる場合もあります。今日は、発達特性を特技に活かす・・というお話です。
(この記事は、視知覚認知について
定型と発達障害を比較した連載記事です。
【目次】はこちら )
これまで、この「視知覚認知テスト」では、発達障害の視覚認知に「概念化」が機能しないため、効率よく視点を切り替えていくことが出来ないと説明してきました。しかし、この認知パターンが、たとえば、雑誌などの「校正」に活かせることがあるのです。
ぼくは昨年、発達支援団体の運営で、冊子編集の仕事に携わっていましたが、「校正」では複数の当事者さんに、本当に助けていただきました。単に誤字・脱字の発見にとどまらず、非常に微妙な言い回しや言葉使いの部分などにも、きめ細かく目が行き届かれるのです。
その能力の高さには本当、驚かされました。
また、そんな大層なことではなくても、ゲームの「間違い探し」が得意という当事者さんは案外多いのですが、これも同じ理由によるのです。「間違い探し」というのは、実は「定型発達の概念化特性」を逆手に取ったゲームなのです。定型には違うものが同じに見えてしまうわけですね。でも、当事者さんにはこのようなことが起こりません。結果として、よ-いドンで、定型発達と当事者さんが「間違い探しゲーム」をやると、後者のほうが早く見つけてしまうことになるのです。
[間違い探し:7つの間違いを探してください]
画像提供:http://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/news/machigai.html
Bさんも、かつて仕事で「校正」に携わり、それが得意だったそうです。ご自身の弁をお借りすると・・・・・
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>定型の「概念化」というものができていれば、 ちょっと間違えているものを見ても、
>自分の中で「脳内補完」して一般的な正しい読み方をしてしまって、見過ごしてしま
>うところを、 私はその「概念化」が抜け落ちてしまっているために、 かえって、細か
>いミスが目についてくれるのでしょうね。
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特性を逆手にとって、特技に出来る可能性があるわけです。
しかしBさんのご経験では、今の社会ではそれだけでは、仕事を続けていくことは難しかったそうです。
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>特にスピード化が加速するばかりの今の社会で、
>私の居場所はなくて、
>これまでどんな職場でも、スピードで躓いてきました。
>
>仕上げのクオリティには自信があっても、
>時間内に仕上げることができなければ、意味がないんですね。
>ビジネスでは。はぁ……(T_T)
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この部分が、社会が発達障害に考えていかなければいけない、バリアフリーではないかと思います。彼らが彼等の能力を活かせるように、何を彼らに求め、何を彼らに求めるべきではないのかを。今、社会は激しいコスト競争の結果、人員削減と効率化が何よりも最優先される社会になっています。これこそが、発達障害の問題を顕著化し、彼等の生きづらさを加速させている原因に違いないと、思うところです。
発達障害の方には、定型発達にはない、
特技として活かすことが出来る能力があると、僕は思います。
かつては、「バリアフリー」などと言わなくても、
社会が自然と、発達障害の能力を活かすことが出来たのだろうと思います。
かつて職人の世界で、「達人と言われる人ほど、元は不器用であった」という言葉があるそうです。「とっつきの良い人は、すぐに覚えるがすぐに飽きる」というのです。これは、ぼくはきっと「発達障害の方が、たゆまぬ努力を続け、周囲の支えを得ながら成長発達し、その道を究めた結果」ではないかと思うのです。当事者の方が心底その道を極めた時に、その技は、定型発達にはとても届かないような孤高の頂きに登り詰めるのではないかと思うのです。
それを実現するも、当事者さんを社会の片隅に追いやるのも、周囲の人としてのあたたかい支え(支援)があるかどうかに掛かっていると思うのです。
かつて30年以上前の日本なら、特別支援教育などという言葉はなくとも、発達障害の方々は、普通に職を得て、納税し、周囲からそれとなく関わりがある中で、生活されていたのだと考えます。発達支援の先進国イギリスでは、「放置すれば生活保護者、支援すれば納税者」という言葉があるそうです。「働きたい」と思っている当事者さんが、いくら望んでも仕事に就けないような社会であってよいのかどうか・・・これは社会全体がもっと考えていって欲しいと願います。
この問題は、ひと言では語りつくせないので、また別の機会を持ちたいと思います。
今日はこれまでとします。
次回からは、Dさん(途中で追記しました)の認知を分析していきます。
【視知覚認知テストからみる発達障害のこだわりの実例 目次】
(4)C君の認知(認知のゆがみの実情)
(5) C君の認知(10歳頃の成長の不思議)
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