さて、前日の続き です。

前述の細部にピンポイントに引き寄せられたり、

思考が停滞してしまう行動は、

なにも子どもにだけ存在するわけではありません。


私がこれまでに知り合った大人の発達障害の当事者さん達も、

こうした「認知のこだわり(とらわれ)」はあるとおっしゃっていました

障害は消えてなくなるわけではないのですね。

しかし、「それは克服できないものではない」

・・・というのも大事なことだと思います。



発達障害の特性は、

本人の気づきと成長でカバーされ、

困難が解消出来る可能性があることについて、

今回はお話したいと思います。


(この記事は、こちらを筆頭 とする連載ものです。)

【視知覚認知テストからみる発達障害のこだわりの実例  目次】

(1)出題

(2)正解ご披露!

(3)Aさんの認知(発達障害のこだわりの原因)

(4)C君の認知(認知のゆがみの実情)
(5) C君の認知(10歳頃の成長の不思議)

(6) Bさんの認知(凡化とは異なる精査の仕方)

(7) Bさんの認知(成長し続ける認知能力)


さて、回答者Bさんは、今回の絵の認知で120点を獲得され、高い能力を発揮されましたが、その回答に1~2分を要したとあります。同じ回答が出来たとしても、そこに彼女の困難さがあると、僕は思います。


生活の中の認知というのは、今回のようにじっくり絵を見れる場面ばかりではありません。日常会話やメールのやり取りの中にも、「視聴覚認知」は刻一刻と必要とされる能力です。会話などにおいては、例えば一瞬の間が空くだけでも、相手に異訳されて「言外の拒否」ととられてしまうこともありますよね。つまり、瞬時の認知能力を要求されることが多いわけです。


また、今回は「写真を見る」というシングルタスクでテストを行っています。しかし、実社会ではほとんどの場合、「見る」と「聴く」をマルチタスクで処理する必要があります。一度に二つのことを行うことに苦手のある当事者さんにとっては、更にハードルが高くなるわけです。


発達障害の方の対人関係の障害には、

相手の意図や社会的意味をくみ取れないとか、

相手の表情を読みきれないなどの

抽象概念把握の苦手だけではなく、

こうした認知スピードや認知や状況判断力の差も、

深く影響しているものと思われます


さて、まずは、なぜ当事者さんの認知スピードが上がらないかについては、Bさんご本人が詳しく説明してくださっています。


******************************************************

>とにかく、全体をざっと見渡すことが苦手なんですね。
>
まず「ディテールに目が行って」しまう。

>
「全体を見渡す」のはその後になるわけですが、

>
そこに行くまでたいてい時間切れ

>または集中力切れになる。


>
(つまりディテールを見るだけで終わってしまう

>全体を見渡すことなく、終わってしまうことが多い)


>ですから、学生時代のテストなどでも、

>いつも時間が足らず、問題を解き残す

>ことが多かったです。


>定型さんのスピードには

>どうしてもついていけなかったですね。

******************************************************



この「ディテールに目が行ってしまう」という部分は、前述の「こだわり=とらわれる」にあたる認知パターンです。


どうしても細部に気を取られるがゆえに、

効率的に視点を移していくことはままならず、

ひとつひとつ丁寧に精査していくことで、

ようやく全体像に辿り着くような、

認知パターンのことを言っておられるのでしょう。


大人になった彼女にしても、

こうした基本的認知特性は

息子と変わりがないことが判ります。


しかし、昨日も述べたとおり、

細部にとらわれ続けることが無い様に、

そして、周囲を見回すように気をつけることで、

絵の全体像をつかめるまで、

しっかり認知するよう心がけてらっしゃるそうです

今回は時間制限のない問題と言うことで

「何度か全体を見回して、確認もした」

とおっしゃっていました。


【A】~【G】のBさんの認知の様子を、模式図化してみました。



続けて、この方はこのようなこともおっしゃっています。


************************************************


>でも、一応あの女の子の写真、
>用心深く、にらめっこしましたよ。


>認知レベルが上がってきたと感じるのも、
>社会に出て、ある程度経験を積んでからの

30歳過ぎあたりから(つい最近(?)という感覚です、
>そうして徐々に「学んできた」、ということなんです。


>つまり、(発達障害というのは知らなくても)自分は他の人と比べて、

極端に察しが悪く、一般常識がわからない、思考回路もかなり人と違う

ということに、(痛い目に何度も遭うことで)自覚&危機感を持ち始め、
>そこからようやく意識して物事を認知するよう努めるようになり、

>そこから徐々に「学んできた」、ということなんです。


少なくとも20歳より前だったら、
ちょっとわからなかったような気がします(^_^;)

>だから、生まれつき発達障害の脳みそを持っていたとしても、
>一生、常識がわからないわけではなくて、

>訓練で理解していくことはできるのですよね、きっと。


>だからやっぱり、「早期発見! 早期対策!」が大事なんですね。 

************************************************



僕が、この数年間で学んだ、一番大切なところは、まさにここです。



確かに発達障害の認知特性は、生きづらさの元となるでしょう。

しかしそれは解決の道のない袋小路ではないということです。

また、定型とは違った方法ではありますが、

本人なりに試行錯誤を繰り返し、

人生経験を積んでいけば、

ゆっくりとその人なりのペースで、

当事者さんは成長し、

特性や困難を克服ていかれる

ということなのだと思います。


前述の通り、Bさんにとって、この写真を認知できる能力や判断力が身についたからと言って、それで、社会生活の困難がなくなるわけではありません。しかし、こうした発達障害の成長は生涯にわたり、続くというお話も聴きます。有名なアメリカの当事者であるテンプル・グランディン女史も、40歳前→50歳前の10年間でも、そのコミュニケーション能力や他者の気持ちをくむ力が向上していたと聞きます。(定型発達であれば、もうあまり進歩・成長の望めない年代ですよね。)


私自身も、所属した発達支援団体で、

1年ほどの間にメキメキと変わっていかれる当事者の変化を、

まのあたりにした経験があります。



この経験は、自分の子育てにおいて、

何か「ゆとり」というか「余裕」のようなものを、

与えた気がします。

親が子どもの成長を信じていくところで、

親子関係にも良い方向へ働いたように思います。


この経験は、これからも大切に活かして生きたいと、

ぼくは思っています。


今日はここまでとします。

次回は、視点を変えて、

発達障害の認知特性を

利点として活かす例についてお話します。


みなさんのクリックが大変励みになります!

ぜひ、ポチっとご協力をお願いします。



にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 発達障害へ       にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 広汎性発達障害へ