前回、金利を上げて「通貨の尊厳」を取り戻せと説いたが、今回は企業の「お財布」と「通信簿」の話をしたい。
今の日本企業はどうだ。過去最高の利益を更新し続け、内部留保(利益剰余金)は500兆円を超えて積み上がっている。一方で、我々の給料は遅々として上がらず、国内の設備投資もどこか腰が引けている。経営者は一体どこを向いて仕事をしているのか。
彼らの「視線」を強制的に国内へ向けさせる、二つの「劇薬」を提案したい。
■ 劇薬一:法人税を上げ、「ケチな蓄財」を損にさせる
「法人税を上げれば企業が逃げる」……。経済団体や御用学者は口を揃えてそう脅す。だが、現実はどうか。税率を下げても、その分が賃金や国内投資に回らず、ただ内部留保という「死に金」として積み上がっただけではないか。
ならば、いっそ法人税を上げてはどうだ。 「税金で持っていかれるくらいなら、社員の給料を上げて経費にしよう」「税金を払う前に、国内の新しい工場に投資しよう」――そう経営者に思わせる「逆転の発想」が必要だ。 もちろん、闇雲に上げるのではない。**「賃上げや国内投資をした分だけ税を控除する」**というアメとセットにすれば、企業は否応なしに国内で金を使うようになる。
■ 劇薬二:「海外連結決算」という見せかけの粉飾を剥がす
もう一つの問題は、決算の仕組みだ。 今の経営者は、円安を背景に「海外子会社がドルで稼いだ利益」を日本円に換算して、連結決算の数字をよく見せることに汲々としている。国内事業がボロボロでも、海外の数字を足せば「過去最高益」という看板が立ち、株主への体裁が整ってしまう。
これをいっそ**「国内単独決算」を評価の主軸**に変えてみてはどうだろうか。 海外投資の利益を連結して「見かけの良さ」を競うのではなく、日本国内の拠点でどれだけ稼ぎ、どれだけ付加価値を生んだかを厳格に問う。海外投資そのものを否定はしないが、国内を疎かにして海外の数字で帳尻を合わせる「逃げの経営」を許さない仕組みを作るのだ。
■ 「グローバル」という免罪符の終焉
経営者たちは、口を開けば「グローバル競争」と言う。だが、その実態は、日本の安価な労働力と低金利の恩恵を受けながら、利益だけは海外へ逃がす「空洞化」の片棒を担いでいるだけではないのか。
彼らが「愛国心」で動かないのであれば、制度という「外枠」を変えるしかない。 法人税を引き上げ、連結決算の魔術を封じる。そうすることで、経営者は「日本という市場で、日本人の知恵を使って、どう稼ぐか」という、本来の難問に真っ向から向き合わざるを得なくなる。
■ 結論:日本を「捨て石」にさせないために
我々還暦世代が見てきた「強い日本企業」は、決して海外の数字で身を飾る集団ではなかった。国内の現場を磨き、社員を家族のように大切にし、国内から世界を圧倒する製品を生み出していたはずだ。
企業が「日本を捨て、海外で生き残る」ことを選ぶなら、我々も「日本を大事にしない企業」を優遇するのをやめるべきだ。 税制と決算。この二つの鎖を掛け替えることで、日本の「血液」である資金を再び国内の隅々まで循環させる。それこそが、次の世代に豊かな産業基盤を残すための、最後にして最大のチャンスではないだろうか。