昨夜はTの病室に付き添って泊まった。
以前来たときよりも床が汚れている。
仕方がないのだろうな。
彼はきちんとやろうと思っても出来ない。
本来なら怒ってしまうかもしれないところを
私は年下の看護師さん達の彼に対する優しい対応を見習う。
そして自分を恥じる。
Tはもう
当然、健常ではない。
しかも周囲の手を借りなければ生きては行かれない。
そんな現状を
私は受け入れたくなくて
今までと同じように彼に接してきたけれど
私自身も残酷な人間に感じてしまう。
Tは相当、自分の状態を解っている。
私はそれを受け入れられずに
普通に接しようとするけれど
彼の状態を目の当たりにして
心が抉られそう。
菜の花と茹で卵の粒マスタード和えを持って行ったら
半分は食べてくれた。
Tといると何故か辛すぎて早く帰りたい。
病室が暑すぎるせいもあるし落ち着かない。
結局一晩中眠れなかったから
グッタリしている。
問題は環境なのかな。
でもどうにもならない。
随時彼を診ていただけているわけだし。
なんだか息苦しくて
Tには
また来ると伝えて病室を去った。
帰り際に男性の看護師さんから
今夜来るのは無理ですよね。
そう言われた。
何故そこまで付き添いが必要なのか考える。
きっと
Tが頼んでいるのかもしれないし解らない。
自宅と病院を行ったり来たりは
相当疲れる。
いつも帰宅するとグッタリとして横になったまま眠る。
帰りはタクシー代が勿体ないから
また駅まで歩いて一駅乗って
再び長い道のりを歩く。
今日はいつにもまして暖かいから救われる。
なのに疲れがとれないよ。
こんなに天気が良いのに
身体がついて行かない。
帰宅しても
Tから頓珍漢なラインが来たり電話が来る。
本人が不安にならないように
直ぐに返答し電話も直ぐに出る。
こんな時思う。
シャントで彼の声が取り戻せたら。
シャントで声を取り戻して欲しい。
99%諦めながら
僅か残りの1%に夢をかけている。
T
貴方の声が聴きたいよ。
でも
私は疲れているよ。
病院の看護師さんから電話が来た。
Tが来て欲しいと言っているらしい。
今日は行くつもりでいたから問題は無いけど
また荷物が多い。
抱えて歩いて行くにも
もう外は真っ暗だった。
仕方がないけどタクシーで向かって
明日の帰りは歩こう。
スマホの事を看護師さんに聞いたら
機内モードになっていて繋がらなかったらしい。
その後
Tから電話が来た。
身内の人が来たかどうか尋ねたけど
会話が出来ないから返事が解らない。
私が行ったところで意味は無いのだけど
きっと行っても会話は無理だし
むなしいな。
かと言って家にいてもハッピーと二人でじゃれるだけで
何も無い。
動画を撮りかけたけど
いい加減な動画になってしまいそうで悩む。
菜の花の茹で卵和えを作った。
自己流で味付けしたら私にはしょっぱかった。
小さなタッパに入れてTに持って行こうと思う。
茎は食べやすいように短めにカットしたけど
食べてくれるかな。
少しほろ苦い菜の花を口にすると
ようやく春の訪れを感じる。
灰汁が強いから沢山は食べられないけれど
店頭にこれが並ぶと嬉しくてつい購入してしまう。
Tと知り合いこの街へ来て
菜の花を食べることも初めて知った。
関東にいた頃には目にすることの無い食品が
この街には沢山あって少しずつ学習している。
そう言えば店頭にフキも売られていた。
値段も相当安いし煮たら瑞々しくて食感もよい。
また買って煮ようかな。
ブログを打っていたら
そろそろTの病棟へ向かう時間になってしまった。
また
サンタクロースのような荷物を抱えて出かけなくては。
やっと買い物に行かれた。
3時間も掛かってしまった。
店内が広すぎて目的の食品を探すのに時間が掛かる。
Tの身内の方が3連休中に様子見に行ってくれるらしい。
泊まりは無理でもそれだけでも助かる。
昨日今日とTに電話をかけたけど
電源が切れている。
ラインも来ない。
スマホの充電すら
どうでもよくなってしまったのかな。
明日行かれたら付き添いに行こう。
病室に泊まると
沢山の不安が押し寄せてきて
息苦しくて動悸がしたり寒いのに汗が出たりして
横になっていられなくなる。
そんな不安があって行くのを躊躇していた。
もしかして
私もおかしくなっているのかな。
パニック障害とか聞くけれど
それと似た症状だった。
空っぽの車椅子を押して田舎道を歩く。
帰りには食材を積んで帰宅した。
買い物は出来ればもう月3回程度に済ませたい。
食事の配分は中々微妙だけど
いざとなればTが蓄えて置いてくれた非常食も沢山ある。
リビングを覗くと
小首をかしげた愛犬のハッピーと目が合う。
可愛い。
ずっとTがいないことに気付いているのかな。
自分でTのシートクッションを引っ張り出してきて
私の布団の上に載せて、その上に座っていた。
とっても可愛くて賢い。
Tの匂いがするのかな。
いつもTはハッピーのことを聞いてくる。
走り回っているハッピーの様子は
彼の元気の源なのだと思う。
声を失ってから話せない苦しみの中
唯一
彼の心の拠り所はハッピーだったのだと思う。
ハッピーも私には背を向けないけれど
Tには背を向けて座る。
そして彼がいれば
私のことなど知らんぷりだった。
人工血管を入れた彼の傷口は塞がずに
毎日、洗浄が繰り返されている。
合併症も感染症も無く無事に過ぎていても油断は出来ない。
万が一は日々隣り合わせな状況でもある。
心配はずっとつきまとい
考えてもきりが無い。
ちょっとしたことで嗚咽しそうなほど
悲しみがこみ上げてきたりして
食事が止まってしまうこともある。
感情のコントロールが出来ない自分が情けなく思う。
今日
菜の花を買った。
辛子和えにして明日Tに持って行こう。
食べてくれるかな。
少しほろ苦い味を口にしたら
ボンヤリとしている彼でも
春の訪れに気付いて貰えるかもしれない。