Tへ

Tへ

ブラックタイガーに濯ぐ .◦☆* 。*◦*~♪

ずっとブルーな気持ちで起きられない。

こんなに辛いなら消えてしまいたいと思うこともある。

でも人に迷惑はかけられない。

布団から出られずじっとしていても

愛犬に起こされるからそうもいかない。

渋々と起きて支度をする。

そして今日もTの病院へ必要なものを届けなくてはならない。

歩いて行こうと思ったけど荷物が重すぎて

タクシーを呼んだ。

片道2千円前後かかる。

往復で4千円前後。

帰りは歩いて電車に乗ってまた歩いて帰ろうと思う。

歩くのに結構な距離だけど身体にはいいかな。

彼の病室は最上階だから院内に入っても結構時間がかかる。

のぞき込むとあっけなく彼がいた。

なんだか眼力が戻っている。

問いかけへの反応も早い。

顔色も良くなってきている。

スマホが使えないのはアドレスを忘れてしまっているみたい。

先日

病院へ訪れたときに彼の息子さんが

ずっと寄り添っていてくれたことをTに話した。

そして彼の身内に別れたらって言われたことも。

Tは首を振った。

別れることはないと。

あの日

Tが救急車で運ばれたとき

命に関わることなのに私は呑気にしていた。

もっと早く連絡すれば

彼は人工心肺を入れたりと大事になることはなかった。

すべて私のせいだと思う。

だからもしかしたら彼は私に対して

不信感を抱いて信用できないと捉えているのではと不安でいた。

本当に自分が頼りない性格だと思う。

そのことをTに伝えたけど

意識不明で何も覚えていない彼は

けして私を責めることはない。

たとえ覚えていたとしても同じだろう。

コーラが飲みたいとジェスチャーしてくるから買いに行った。

それを渡したら美味しそうにゆっくりと吟味している。

今後、退院したら転院してリハビリをした方が良いと医師は言う。

なのにTは今日一緒に帰ろうとか頓珍漢なことを言う。

リハビリを終えてその後のことを考える。

やっぱり自宅にいて欲しい。

私は100%の介護は出来ないけど家がいいよね。

年齢的に施設には入れないし家に帰ってきて欲しいよ。

その後

クッキーが食べたいとジェスチャーしてきた。

院内のコンビニでチョコレートの乗ったクッキーと

イチゴのポッキーを買って渡し病院を後にした。

食欲も出てきて本人は意欲的な様子だった。

もう家に帰りたいみたい。

これはいつもと一緒だった。

今は栄養を摂ってリハビリで筋肉をつけて

元に戻ることが一番なのかな。

Tのいない家で朝を迎える。

もう食事も何もいらないからずっと横になっていたい。

心が辛すぎる。

寒くて起きるのも億劫だけどゴミ捨てに行かないと。

愛犬の世話もあるから何とか起き上がるけど

現実に戻ると辛い思いがこみ上げてくる。

車椅子にゴミを積んでゴミ置き場へ向かう。

途中で立ち止まった。

誰もゴミなど置いていない。

曜日の感覚がおかしくなっている。

ゴミの日は明日だった。

ゴミを積んだまま持ち帰る。

何となく車椅子を押しながら惨めな気分になる。

誰もが当たり前の日常なのに私は笑うことすら出来ない心情。

少しでも心の琴線に触れられたら立ち直れないほどガクッと崩れそう。

Tの事を沢山考えてしまう。

話せない彼は今、何を思っているのだろう。

私が病室を訪ねても彼に笑顔はなかった。

ただ

大きくて綺麗な瞳だけは

しっかりと見開いていた。

筋肉が落ちて腕も足も細くなり

そんな姿を目にすると苦しくなる。

持って行ったスマホにラインをしても

既読にならず当然返信もない。

起き上がることも出来ない程まいっているのがわかる。

脳の萎縮は治らない。

歩くことがおぼつかないまま

リハビリをしても

どこまで回復するのかも解らない。

Tがいないこの家にいるのが辛い。

愛犬のHappyだけは元気にはしゃいでるけど

時折、Tの姿を探している。

そう言えば今後の事で

Tの身内と病院に集まったときに

私は、あまりにも落ち込んでいて

饒舌に話すこともなく

ただ黙ってTを見下ろしていた。

そんな様子が、いつもと違うと感じたのか

Tの息子さんが黙ったまま

ずっと寄り添っていてくれた。

彼の息子さんはTに似ていなくて

細くて背の高い人だった。

私は彼に嫌われていると思っていたから

そんな誤解も解けた。

彼は結婚したから大人になってきたのかな。

本当に辛いとき

誰かが寄り添ってくれるだけで

少しは心が救われる。

明日はTに会いに行こう。

そして彼の息子さんの優しさを伝えよう。
 

Tが意識を取り戻した。

でも彼にとっての現実は地獄なのかな。

表情が険しいし生きていて辛そうなのは見て解る。

私からしたらエゴイスト。

彼に生きていて欲しい。

危ういときも助かった。

でも本人はそれが良かったのか疑問になる。

入院を終えても自宅には帰らないと医師が言う。

リハビリをして万全な状態でないと。

でもきっと私が彼を見てきた限り100%は無理だと思う。

彼の身内の方と一緒に今後の事を医師と話した。

待合室で私は言われた。


「籍も入れていないし車の運転もしないんだから

 この際これをきっかけに別れたらどうですか!?」


籍を入れないのは事情があるわけだし

車の運転は私の疾患があるからなのだけど

一方的にそう言われて落ち込む。

田舎町だし車の運転は必要だけど

そんなことで別れたらって失礼だなと思った。

本人は私を思って言ってくれているのかもしれないけど

それは私が決めることだからとやかく言われる筋合いはない。

やっぱり教習所に通い直して運転しようかな。

Tは入院先から退院しても自宅へは帰れない。

転院してリハビリが必要になる。

寂しいな。

これもすべて私が早く気付かなかったせい。

辛すぎるから掃除して逃避行したい。

それでも



生きていてくれて

ありがとう。