「そう・・でも、私の語学力では、まだまだ心配だわ。」

「大丈夫さ。慣れるより、習え?あ、違う、習うより・・・何だっけ」

「ふふ・・『習うよりも、慣れよ』ね。アーサーの日本語の方が、ずっと私の英語よりも堪能だわ。」

「僕は、子供の頃から、日本語を習ってたからね。
その割に、大したことないけど。
語学は、まだまだでも、恵理のビジネスセンスは、万国共通だよ。
ミセス=マーガレットは、片言なら日本語を話せるけれど、多分、彼女はほとんど日本語は使わないと思うから、春蘭に比べたら、かなり不自由になるかもしれないけれど、我慢して欲しいって、アレクから伝言。それから・アレクから、君への贈り物も一緒に到着するらしい。
楽しみに・・じゃ、行ってくるよ」

アーサーはそう言いながら、私にハグをし、いつものように、両頬にキスをした。

「ええ・・・気をつけて。」

「ん・・・・・恵理の香水のトップノートをかぐのは、初めてだ」

抱き寄せられたままの姿勢で、そうささやかれたときに、少し、胸がどきっとした。

あの、湖の事故での事が、脳裏をリフレインし、少し頬が赤らんだのを自分で感じて、一瞬の動揺。
だけど、反射的に

「早寝早起きすると、そういう特典もあるかもしれないわね」
と、答えていた。

「早起きは・・・えっと・・何得??」

アーサーは、わざと間違えたのかもしれない。
私の動揺を、感じないふりをして・・・

「私、春蘭に・・・・・・お別れを言った方がいいかしら?」

アーサーは首を振った。

「僕なら、しないね」