第7話 僕の打ち上げ花火 その2 | 彼女になれますか? 【AKB創作小説】

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AKB48のメンバーをモデルにした長編創作小説サイトです。男体化あります。少し不思議な学園ラブコメ風な内容になる予定です!チームK&二期生中心。





第7話 僕の打ち上げ花火 その2






***



帰り道。ちょうど太陽が真上に位置する時間帯。
増田と別れ、一人で帰り道を歩いていると後ろから「さいかー!」と声をかけられた。
それは聞き慣れた声で、呼ばれただけでその姿を見なくても誰だかわかる。

「優子。」

振り向くと制服を着た幼馴染が後ろから走って来た。
夏服に衣替えした半袖のワイシャツに赤チェック柄のリボンを胸元に付けたその格好は涼しげで、見るだけで夏が来たと実感させてくれる。

「あれ?学校行ってたの?」
「あー、希望者だけの夏期講習!」

ほー、と感心したような声を出しながら自然と並んで歩く。
優子は「あつー!」と叫んだ後、俺の顔とスポーツバッグを交互に見ながら問いかけてきた。

「部活?」
「んー。あと3年の引退挨拶とか…」
「あー、そっか。これから3年生は受験だもんね。」

その会話の後、次第に沈んでいく俺の心を読み取ったかのように「落ち込みすぎ!いい加減元気だせ!」と俺の背中を叩く優子。
試合に負けてから何度このやり取りをしただろう。
いつもは優子のこの一言で切り替えられるのだが、今回はそうはいかなかった。

自分でも面倒くさいと感じる性格に申し訳なくなっていると、優子がチラチラとこちらを見ていた。
その姿は何か言いたげで、言い出すタイミングを図っているようだった。

「…どうした?」
「え?」
「なんかあった?」
「あー、あのさ…」

少し言いづらそうにする優子のその態度に何かあったんじゃないかと不安になる。
優子は指で頬を掻いてから明るい表情で俺を見上げた。

「今さー、夏じゃん?」
「は?」
「なんか涼しくなりたくない?」
「まぁ、確かに…」
「でしょー?ということで!ちょっと気晴らしにどっか行かない?」

突然の誘いに驚いていると「例えばさ、海とか!」とニッコリ笑いながら提案してきた。

「海?」
「うん!みんな誘ってさ、行こうよ!絶対楽しいよ?部活が休みの日もあるでしょ?」
「んー、あるっちゃあるけど…」

じゃあ決定!と言った優子の顔はすごく楽しそうで、そんな彼女を見ているとさっきまで乗り気じゃなかったのにその気になってくる。

「誰々誘えるかな?」
「んー、増田とたかみなは行けると思けど…」
「私はにゃんにゃん誘っちゃおー。あ、そうだ!サエちゃんは?」
「サエ?」
「うん!絶対必要!ねぇ、誘っておいてよ。」
「うん、わかった。」
「あと、梅ちゃんも呼びたいし。たかみながいるならあっちゃんも呼んだ方がいいよね。」

なぜたかみながいるからという理由で敦子を呼ぶのだろう?と不思議に感じるが、敦子はたかみなの幼馴染だし、大勢で行った方が楽しいからだろうと納得する。

「じゃあ俺、優子、こじぱに増田、たかみな、梅ちゃん、敦子…あとサエでいいか?」
「うん!みんな行けたらいいんだけどなぁー。」

そう言いながら部活の日程を教え、いつなら行けるかを考えている時だった。
後ろからチリンチリンと自転車のベル音が聞こえて振り向くと、松岡学園の制服を着た女子生徒が自転車でこっちに向かっているのが見えた。

「秋元くーん!」

途中で自転車から降りた彼女は、よく見ると我が学園の生徒会長。
ニコニコと何を考えているかわからないその笑顔を振りまき駆け寄ってきた彼女は、一度チラリと優子の方を見て微笑んだ。

「あ、大島さん。こんにちは。」

その一言に優子は更に眉をひそめて嫌そうな顔をしていたが、次の瞬間「…。こんにちは。」と心情を隠すようにニッコリ笑った。
そんな様子をまったく気にせず、麻里子はぐいっと顔を近づけてなぜか楽しそうな笑顔で聞いてくる。

「ねぇねぇ、なんの話してたの?」
「あー、みんなで海行こうかって…いでっ!」

急に足に痛みが走ったので何かと思い下を見ると、優子が俺の足を踏んでいた。

「へー、海!いいねぇ!どこの浜辺に行くとかもう決めてるの?」
「いえ、まだです。じゃあ私達はこれで…」
「私の家の別荘で良かったら使っていいよ?」

無理やり話を終わらせ立ち去ろうとしていた優子は、最後のその言葉を聞いて固まった。

「べっ、別荘!?」
「うん、湘南なんだけど海沿いだし浜辺も目の前だから海水浴にはピッタリだよー。」

「すげぇ!」と素直に感動の声を漏らすと、麻里子が人数を聞いてきたので、8人と答えると「あ、大丈夫。」とあっさり返してきた。

「優子、麻里子の別荘貸してもらおう?泊まれるし丁度いいじゃん。」

うう…と唸り声を上げて戸惑っている優子に、麻里子は更に畳み掛けた。

「向こうで体洗ったり休憩する場所もなしに日帰りで慌ただしく帰るよりはゆっくり出来ると思うけど?タダで一泊出来るし、バーベキューセットもあるし、何よりうちの別荘付近の浜辺は人あんまり来ないからプライベートビーチ気分も味わえるよ。」

怒涛の責めに怯んだ優子に、「これでも断る?」とでも言うようにニッコリ笑うこの天下の生徒会長。
謎の空気感と沈黙が辺りに漂うと、優子は俯きながら呟いた。

「お願いします…。」

その言葉に「おっけー!」とニンマリ笑う麻里子に、詳しい日にちと人数、誰が来るのかを伝えた。
「ニャロも来るの!?」と小島が来るかもしれないということに目を輝かせた麻里子は、あまりにも楽しみなのか鼻歌を歌い出す。
しかし、その鼻歌は悲しいことに所々キーがズレていて、原曲が何なのかがわからないものとなってしまっている。

こっちも詳しい日時とか場所とか連絡したいから、ということで麻里子とアドレスを交換する事になった。
優子は終始嫌な顔をしていたが、最後には諦めたのかふぅーと一息吐いてから、私にも連絡先教えてくださいと麻里子に言っていた。

アドレスを交換すると麻里子は満足そうに笑いながら再び自転車に跨り、「じゃあ後で連絡するねー!」と言いながらその場から去って行った。

なんだか嵐のような女だな…と思っていると、優子が「早く帰ろ!」と言いながらカバンを引っ張ってくる。

麻里子が関わると途端に不機嫌になるのはなぜなのだろう。
まぁ、どこの世界にも反りが合わない奴っていうのはいるみたいだし。
でも麻里子はああ見えてそこまで悪い奴じゃないし、むしろ後輩思いの良い奴なんだって事はわかってほしいと思う。

そうこうしているうちに家の前までたどり着いた。
隣の家に住んでいる優子は、玄関に入ろうとする俺を「ちょっと待ってて」と呼び止め、自分の家へと入って行った。

暫くすると優子は少し大きめの紙袋を持ってこっちへと向かってくる。
不思議に思っていると、その紙袋を俺に差し出し照れながら口を開いた。

「はい、誕生日おめでとう。」
「は?」
「は?って…。今日誕生日でしょ?」

…。そう言われて気が付いた。
そうだ、今日は7月26日。俺の誕生日だ。

「ちょっと…まじで忘れてたの?」

うわー、まじバカ!と大笑いする優子に「うるせぇ!」と反論するが、誕生日を忘れていたなんて自分でも呆れてしまう。

ここ数日間は気落ちしてそれどころではなかったからだろうか。
それほどあの試合が悔しかったということを再確認してしまう。

紙袋を受け取ってから感謝の言葉を告げると、優子はソワソワしながら「開けてみて?」と言った。
それに従い大きなその袋を開けると、入っていたのはメンズ用のリュック。
それは前に香菜が「これ男用だけど女の子が持っててもかわいいよねー?」とショーウィンドウの前で話していた物。
妹とその会話をして以来、見かけるたびに欲しいと思っていたのだ。

「おー!これ!」
「あははっ!前に欲しいって言ってたでしょ?」
「ありがとー…まじ嬉しい…」

そう呟くように言うと、優子は満足そうに目を細めて笑った。
しかし気になることがあり、彼女に問いかける。

「って…これ欲しいって言ったの、結構前じゃねぇか?」
「え?」
「そんな前の事覚えててくれたのか?」

記憶力すげぇなーと思いながら問うと、「あっ、いや!その…」と少し挙動不審になる優子。
その頬は心なしか赤くなっているように見えた。
何はともあれ俺の欲しい物を覚えててくれたんだから、感謝しないと。
優子に再度礼を言うと、なぜか落ち着かない様子の彼女。

「海水浴の準備しなきゃ!じゃ、また後で!」

そう言いながらいそいそと自分の家へと帰っていく優子の後ろ姿を見送った後、自分も家に入るため玄関へと向かう。



***



「海ー!?」
「えー?いいなぁー!ずるい!」

家族が用意してくれたケーキを食べ終え、リビングで団らんしている時。
サエを海に誘うと、キラキラに目を輝かせて俺を見る天使と妬むように俺を睨みつける実妹。
そしてその話を嗅ぎつけて近づいてくる母親。

「あらぁ~!海ですってぇ!?ちょっとまぁ~!」

何故か海という単語だけで盛り上がっている母に疑問を感じた香菜が、不思議そうに首を傾げた。

「めーたん、なんでそんなテンション上がってんの?」
「だって夏といえば海!海といえば!水着!!ということはビキニ!」
「ビキニ?」
「私も若い頃は結構はしゃいでたのよねぇ。夏になるとよくゴールドビキニで海に繰り出したものよぉ~!」

ゴールドビキニ!?と驚く子供達を無視して、「サエちゃんに貸してあげるわぁ。まだ取ってあるから!」と何もわかっていない天使に押し付けようとしていたので、無理やり止めさせる。

「ダメダメダメ!悪影響のある物を与えるな!」
「もぉ~、才加ったら本当堅物なんだから。」

露出が好きだとは何となく気付いていたが、若い頃の話は知らなかった。
まったくこの親ときたら…とブツブツ言っていると、めーたんがニヤニヤと笑いながらこちらを見る。

「海水浴で一泊ということは、ふしだらな夏になるわねぇ~!」
「ならねぇよ!!」

そんな会話をしていると、テレビのニュースから「次のニュースです。」と聞こえてきた。

『昨日、ドライブをしていた男女4人が停車した車内で意識不明の状態になっているところを、近所の住人によって発見されました。なお、運ばれた病院で意識を取り戻し、命に別条はありません。』

「あれ?またこのニュース?最近すごい多くない?」
「あらやだ!これ家の近所じゃないの!怖いわぁ~!」
「海!うみー!いしししー!」

不気味なニュースなんてまったく耳に入らないほど浮かれている天使は、隣にいる香菜の肩に手を回しながら訳もなく「うぇーい!」と一人盛り上がっていた。


夕飯を食べ終えて母親に泊まりの許可を得たので、サエと一緒に自室へと戻る。
彼女は喜びに飛び跳ねながら「海!楽しみだなぁ!うみぃ!」と楽しそうにはしゃいでいた。
部屋に入ってベッドに座ってくつろぐと、本棚に並べられているある物に目が行く。
数日前から飾られているそれは、確か3つだけだった筈なのだが、なんだか数が増えている気がする。

「サエ」
「えー?」
「お前、またトミカ買ってきたのか?」
「おー!気付いた?かわいいでしょー?」

お気に入りはこの赤いのと緑色のやつ!と本棚から2つ手に取ると、こちらへと持ってきて自慢気に見せびらかしている。

「ちっちゃくてかわいいだろー?」

そう言いながら何故か持っているトミカを俺の二の腕当たりに置いて走らせている。
その訳のわからん行動に溜息をつき、「集めるのは良いけどほどほどにな」と言うと、安心したかのようにふふーっと笑いながら腕にしがみついてきた。

「今日、オカロの誕生日だから一個あげるー。」

そう言って手渡してきたのは、ヒョウ柄の小さな車。オカロっぽいから買ってきた!と楽しそうに言うサエに「ありがとう」と返す。

それにしてもトミカが好きだなんて。
小さな少年のようなその趣味に天使の感覚はよくわからないな、と思うのであった。