うつ病は突然何もかも奪いさります。
今まで何事もなく過ごせていた日常生活を180度変えてしまう恐ろしい病です。
うつ病と私の出会いは小学校3年生の時が初めてでした。
それまで元気に仕事をし、友人も多く、世の中のために尽くしていた父がある日限界をむかえました。
自分で言うのも恥ずかしいですが、父は忙しい中でも人一倍子供の面倒をよくみてくれていました。
平日は夜中に帰ることが殆どでしたが、休日は必ず家族と共に過ごし、夜には絵本を読み聞かせてくれるなど温かみがあり頑張り屋さんでした。
そんなどこにでもある日常がある時を境に音を立てて崩れ始めます。
ある日学校から帰宅すると何故か普段は居ない時間に父がいた。
普段ではありえないパジャマ姿、目は虚で顔も高揚というか赤くなっていて落ち着きがない様子で部屋を歩き回る光景に子供ながらに風邪等ではない何か大変なことが起きたんだと察したのを覚えています。
そう、頑張り耐えてきた父はうつ病という名の悪魔の病気になってしまいました。
その時を境に今まで当たり前であった日常が手の届かない非日常へと激変し20年にも及ぶ闘病生活が始まります。
日中は殆どベッドから出れず、ご飯も少量しか食べれない。
明るく話ていた父が一言も発しなくなる姿に私は戸惑いを隠せませんでした。
いったい何があったんだ?今の状況は何なんだ?
なぜ母まで追い込まれている顔をしているんだ?
子供心にあれこれ考えたけど、正直状況は飲み込めない。
でも時が立てばまたいつも通りになるだろう、その時はそんな感じで考えていたのを覚えています。
でも我が家はありふれた日常を送る家族に戻ることはできませんでした。
療養中の父を支えるために必死で働く母、3つ上の兄は私より事態をわかっていたのか深刻な表情をしていました。
明らかに家庭内が不穏に包まれ、それも悪くなる一方。
時が解決するどころか悪化の一途を辿っていく現実。
そんな日々も数年経ち何かできないかと思い、ある時父をキャッチボールに誘いました。
私「お父さんキャッチボールしない?」
父「ちょっと今は無理かもしれん」
私「ちょっとでいいからお願い!」
父「悪いな、本当にちょっとしかできんぞ」
信じられませんでした。
今まで自ら近所の土手へ連れて行ってくれ、何時間もキャッチボールや他の遊びをしてくれていた父はここまで弱ってしまったのかと。
それでもキャッチボールがしたくて近所の公園へ半ば強引に行きました。
きっと長くは出来ない、一球一球を大事に投げるようにしました。
父「学校は楽しいか?」
私「楽しいよ!」
父「友達と仲良くするんだぞ」
私「うん」
こんな会話をしながらキャッチボールをしていました。
でも途中から気付いた、父は10mくらいの距離を投げるのでさえ凄く辛そうにしている。
子供心に悟ったのはこれが多分最後のキャッチボールになるということでした。
それを思うと最後の方は涙が止まりませんでした。
多分それを父も理解したのでしょう。
無言ながら一生懸命に投げてくれました。
全部でキャッチボールは20球もできなかったと思います。
この時に初めて理解しました。
父はとてつもなく重い病気になってしまったんだということを。
続きます!