札幌にいる間に、好んで利用していた2つの店が幕を下ろした。
1つは市内の官庁街の文房具屋さん。
もう1つは郊外のイタリアンレストラン。
どちらもいわゆる「個人商店」で、地域に根差してコツコツと真面目にやっていた。
しかしこのご時勢。個人商店には突風の向かい風が吹いている。どちらも惜しまれつつ、閉店した。文房具屋さんは昨年7月に。イタリアンレストランは今年の1月に。
何のせいなのか、誰のせいなのか。毎日のように通いながら考えていた。時代が悪いのか。経営者に努力が足りなかったのか。小泉が悪いのか。景気が悪いのか。
私は、こう思った。
全員が少しずつ悪い。しかし、閉店を惜しむ客がいたとするならば、その人が一番悪い。
小さな店に逆風が吹いている今の時代は、殺伐としている。その流れに誘導した政治家は悪いし、それを支えた有権者も悪い。しかし、経営者はそれを乗り越える強さを持っていたい。それを持ち得なかった経営者も悪い。
しかし、一番悪いのは、閉店を惜しむ客だと思った。これだけ厳しい条件が揃っていて、経営者の努力だけでは如何ともしがたいところまで来ている。客だってそのことは重々承知のはずだ。
閉店を惜しむなら、閉店しなくて済むように、本気でサポートすべきなのだ。極力利用する、知人友人に紹介する、宣伝する、等々。こういった努力をせずに「残念だ」「頑張って」「新たに開店したら教えて」なんて薄っぺらい言葉を吐くのである。
私も、その一人だ。確かに職場の先輩が万年筆を買おうとしていたからその文房具屋に連れていったし、飲み会の幹事をやった時は職場から地下鉄で5駅のレストランで開催したり、それなりの努力はした。しかし、それはあくまで「それなり」の努力だ。もっとできることはあった。
両店の閉店時、閉店を惜しむ常連客が、人によっては涙を流して大量に訪れていた。この人たちが、努力をしていれば、違う結果になっていたのかもしれない。
この殺伐とした時代、お気に入りの店を守る責任が客にも課せられている。そう噛み締めている。