古今集の昔から、


何百首何千首となくある桜の花に関する歌、


古人の多くが花の開くのを待ちこがれ、


花の散るのを哀惜して、


繰り返し繰り返し一つことを詠んでいる数々の歌、


・・・少女時分にはそれらの歌を、


何と云う月並みなと思いながら


無感動に読み過ごして来た彼女であるが、


年を取るにつれて、


昔の人の花を待ち、花を惜しむ心が、


決してただの言葉の上の「風流がり」ではないことが、


わが身に沁みて分かるようになった。


                        谷崎潤一郎  「細雪」より




ブラームスのOp.117-2のインテルメッツォは


はらはらと際限もなく散る桜のイメージ。


去りゆく「とき」を惜しみつつ。


曲は、世に出た時から、作曲家だけのものではありません。


本を読んで曲の背景を探るのも大事だけど、


誰かの演奏を聴いたり、自分でポツポツ弾いたりして


自由にイメージをふくらませるのもステキです。




だから弾く時も


風に舞う桜の花びらのように、


重ささえもなく、はらはらと舞ってゆく。


ブラームスがこんな顔をしてるからといって






ごりごり弾かないでください。


手の小さい人にはキツいかもしれないけれど、


鎖骨と肩甲骨を動くようにして、


肩関節でも腕が内側に回ったり外側に回ったり、


ひじでは前腕が左に傾いたり右に傾いたり


手首では掌が左に向いたり右に向いたり


そして指は手首のところから柔軟に広げて、


桜の花びらのようにひらひらと舞わせて。



曲のイメージを自由に展開して弾いてみよう('-^*)/