緑のしま模様で描かれた視認性向上板が設置されたホーム=東京・九段下駅で(坂本亜由理撮影)
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東京メトロ半蔵門線九段下駅(千代田区)で四月、ベビーカーをドアに挟んだまま電車が発車した事故を受け、同社は四日、車掌の安全確認作業に余裕を持たせるため、来春以降、一部駅での停車時間を五~十秒程度延長すると発表した。
対象はホームドアのない五路線の駅の約半数に及び、始点から終点までの所要時間は一分程度延びるとみられる。輸送能力優先ではなく、安全性を重視した大規模なダイヤ改正は同社としては初めてとなる。
東京メトロの山村明義鉄道本部長らが四日、国土交通省で会見し発表した。対象は、半蔵門、銀座、日比谷、東西、千代田の各路線で、半蔵門線は来年四月に、他の路線も数年以内にダイヤを改正する。駅により停車時間は異なるが、現在二十五秒未満の駅は二十五秒以上停車させる方針で、計九十七駅の約半数で延長されることになる。
今回の事故では、女性車掌(23)が、ベビーカーの左前輪の挟み込みに気づかず発車。車内とホームで非常ボタンが押されたが走行を続け、電車に引きずられたベビーカーは、時速約五十キロでホーム上の柵に衝突した。ベビーカーに子どもは乗っておらず、けが人はなかった。
九段下駅の現在の停車時間は二十秒。この間に、車掌は停止位置の確認やドア開閉など十項目にわたる作業を終えねばならず、「熟練していない乗務員には余裕がないのが現状」(同社)という。
同社は再発防止策としてほかに、車掌が車両とホームの間の安全確認をしやすくするための緑色の板を、九段下駅を含む三駅のホームの端に設置しており、効果があれば今後拡大していくという。
◆多様な利用者に向き合う
ダイヤ改正は、都市の発展に歩調を合わせ「より早く、より多く」と輸送能力向上を長く目指してきた。一九九〇年代にその傾向は一段落し、運輸白書に安全を強調する傾向が見られるようになった。二〇〇五年に起きたJR福知山線脱線事故でその流れは加速した。
一四年三月、国交省が「電車に乗るときはベビーカーをたたまなくてもよい」と指針を示し、乳幼児を連れての電車の利用がしやすくなる中、その安全性に新たな課題を投げ掛けたのが九段下駅での事故だった。
横浜市営地下鉄でも昨年、駅の停車時間を延ばすダイヤ改正を実施している。社会が成熟し、バリアフリー化が進む中、効率よりも多様な利用者の安全性に配慮した視点が公共交通機関には求められている。 (皆川剛)
◆再発防止の主な追加対策
<1>ホームドアがなく、停車時間が25秒未満だった駅での停車時間を5~10秒延ばし25秒以上にする。
<2>ホームの狭い場所に乗客がとどまらないように構内放送やポスターで誘導する。
<3>車両の後方部にいる車掌は、トンネルの暗闇が背景となり車両付近に異常があっても見えにくいため、明るい緑色の板をホーム最前方に設置して安全確認しやすくする。
<4>非常停止合図確認灯を見えにくくしている案内看板を移設する。
<5>停車時や異常時の車掌の確認事項を分かりやすくマニュアル化。異常時の対応は時系列で表記する。
【ダイヤ改正対象路線】 半蔵門線、銀座線、日比谷線、東西線、千代田線
「東京新聞」より転載
この記事、トップ記事扱いだった。
今の鉄道事業が安全よりも効率性を最優先にしている事の反証かもと思った。
ベビーカー挟み込み事故が起きているのに、5秒から10秒停車時間を長くするだけで、なんでそんなに大騒ぎなんだろう。
事故直後にサッサッと対応すべき事だろうにと思う。
安倍政権はリニア新幹線などいう、愚にもつかない事業に財政投融資で3兆円を投入するという。
このリニア新幹線「狭い日本そんなに急いで何処に行く」の典型で、金食い虫、自然破壊、採算性度外視、安全性無視の酷い事業だが、この事業の背景にあるのも効率性最優先というか、一日に名古屋出張を三度可能とするような社会作りだろう。
そんな社会が人間にとって幸せなのか。
東京メトロの停車時間延長問題と同様、人はどう生きるのかに繋がる現代日本の病根の表れのように思えてならない。