戦争に従事する人々の思いとは…人を殺しあるいは殺される怖さを想像できるのか | 函南発「原発なくそう ミツバチの会」 ノブクンのつぶやき

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安倍政権が戦争法案を閣議決定、日本の戦後史の転換点に今僕たちは立っている。
そうした中で、実際の戦闘行為に駆り出される可能性が高い自衛隊員たちは何を思っているのか。
「朝日」と「毎日」の記事を読んでみた。



安保法案:本当に撃てるのか…
防衛大卒55歳記者は聞いた


◇東京社会部編集委員 滝野隆浩=防衛大卒、55歳


 春先、一人の青年に会った。一般の難関大学に入れるのに防衛大を受験し、合格した。聞けば、進路を考えていた時に中学の先生の顔を思い出したという。日ごろから教科書にはない現代史を語り、自衛隊の大切さを説いたらしい。青年はまっすぐに私を見て言った。「防大進学は自分で決めました。僕は人のためになりたい」。後日、彼の母にも会った。一人息子だという。母はつぶやいた。「これから、本当に、大丈夫でしょうか……」


 私も37年前、防衛大に入学した。幹部になる仲間たちと4年間ともに学んだが、文系の私に自衛官(海自)という仕事は技術系に思え、卒業後に退職。1年後、記者となった。

 卒業から三十余年、自衛官の任務は激変した。1990年代に海外派遣を開始。インド洋上での米軍などへの補給活動という「戦時」派遣をへて、イラク復興支援の「戦地」派遣も経験。憲法を考えれば、ここまでが限界だったと思う。

ただ、海外派遣に合わせるように隊員が戦死した場合の準備を進めてきた。派遣先にはひつぎを運び込み、医官に遺体修復技法(エンバーミング)を研修させ、東京・九段の日本武道館で「国葬」級の葬儀のための日程を把握する。それは組織としての「死の受容」だった。


 安倍内閣は昨年7月1日、集団的自衛権行使容認を閣議決定。10カ月間の与党内論議をへて、14日、新しい安保法案を閣議決定した。成立すれば、自衛隊が海外で「ふつうの軍隊」並みにふるまう枠組みができあがる。


 親しい陸自将官OBは「憲法9条で守られてきたのは実は自衛隊だった」と漏らす。日本に攻めてきた敵とは戦う。だが、海外で自衛官が殺したり殺されたりする事態は、9条により免れてきた、と。

「自衛隊は創設から60年、1発の銃弾も撃っていない」といわれる。部内ではそれが少々恥ずかしいことのように言われるが、私は日本人の誇りだと思う。その封印がいま、解かれようとしている。


 米陸軍元中佐のデーブ・グロスマンは著書「戦争における『人殺し』の心理学」で、まず「人には、人を殺すことに強烈な抵抗感がある」と指摘する。同書によると、第二次大戦で米軍兵士が敵に向かって撃てた発砲率は15~20%だった。その後、敵を非人間視させる訓練法などにより、朝鮮戦争で55%、ベトナム戦争では90~95%に高まった。実際に撃った兵士が、後に命じた指揮官よりも重いトラウマ(心的外傷)に苦しむという。


 自衛官は本当に、撃てるのか--退官した同期生に私は聞いてみた。「やるさ。おれたちはこれまでずっとキツいことやってきた」。政治が決めたことに従うのは当たり前だという。そして、最後にこう言い添えた。「60年遅れで、自衛隊は米軍に追いつこうとするんだろうな」


 防大に入学した青年の、まっすぐなまなざしを思い出す。起床ラッパで一日が始まる生活に、もう慣れただろうか。母の不安げな表情も浮かんだ。


 歴史を見れば、軍が変わる方向に社会の意識も変容する。自衛隊の変化に私たちは無関心でいてはならない。この新法制には国民的な合意がどうしても必要だ。まもなく始まる国会審議を、私は凝視する。


「毎日新聞」より転載


不満、覚悟、懸念…交錯する自衛官の思い 安保法制

 14日に法案が閣議決定された安全保障法制に基づき、海外の紛争地などで、従来以上にリスクを背負う可能性がある自衛隊。「専守防衛」に徹してきた隊員の中には、覚悟や使命感に加え、不満や戸惑いを口にする人もいる。家族らも不安を募らせる。

 午後6時すぎ、首相官邸であった記者会見。「自衛隊員は自ら志願し、危険を顧みず、職務を完遂することを宣誓したプロフェッショナル」。安倍晋三首相は隊員たちをこうたたえた。

 隊員側は法案をどうみるのか。

 「現場を知らない官僚や政治家が作り上げた法案。隊員が殺し、殺される、血なまぐさい話が避けられている」。10年ほど前にイラクに派遣された陸上自衛隊の幹部は、危険な任務を担わされる自衛官の命の問題と向き合わない机上の議論が進んでいると感じるという。

 法案により、襲われた他国軍を武器を使って助ける「駆けつけ警護」が可能になる。米軍はイラクで救出作戦を行う際、戦闘ヘリも使って制圧を図っていた。「武器の使用は必要最小限にとどめると政府は言うが、手持ちの火器でやみくもに応戦しても、犠牲が増えかねない」と話す。

 一方、陸自北部方面隊北海道)の40代の幹部は「普段、助けてもらっている他国の人間を助けに行くのは当然」と受け止める。憲法上の制約など、「日本の事情なんて、理解してもらえるわけがない」。

 PKO部隊の予備要員になった当時、万が一のために家族に遺書を書いた。娘からは近ごろ、「行けと言われたら、危険な所にも行くの」と尋ねられる。「当たり前だ」と返すのがいつものパターンだ。

 「今後は殉職するケースも出るだろう。自衛官になる若い人は、以前より覚悟が必要になる」と語る。

 取材に対し、こうした戸惑いや危機感を語る隊員は多くはない。箝口令(かんこうれい)が敷かれたという職場もあり、大半は「命令があれば行きます」などと口は重い。現場にはまだ、具体的な説明はないという。

 1991年にペルシャ湾へ機雷掃海に出動して以降、多国籍軍への給油や海賊対処などを続けてきた海上自衛隊。ある中堅幹部は、日本へ原油を運ぶシーレーン(海上交通路)の安全確保に関与できる自負を感じてきた。「新しい法律で沿岸諸国などと軍事的協力を深められる。戦争準備ではなく、地域の安定を図る関係強化だと思う」

 別の海自幹部は、国民の関心の低さが気になる。海外派遣の度に政治の場で議論にはなるが、すぐに忘れられてきた。「拡大解釈して色々できるようになるのは待ってくれと思う。災害派遣に比べ、海外派遣は国民にとって身近ではないのかも」と感じる。

 安保法制の背景には、米国の防衛政策の一端を担うことで、両国の連携を強化する狙いがある。ある航空自衛隊基地の中堅幹部は、自衛隊が外交カードになっているように映る。いざとなると、「外務省が『やってくれ』とお願いしてくる。自衛隊の任務はその繰り返しで増えた。真綿で首を絞められるようだ」。

 自衛官の家族らは、議論の行方を注視している。

 「正直、嫌です。自分の大事な家族だし、幼い子どももいますから」。空自小松基地石川県)に所属する30代の空曹の妻は、自衛隊の活動範囲が広がることが心配だ。「アメリカを手伝って、敵視された相手から自衛隊が攻撃される時が本当に怖い」という。

 陸自隊員の長男がイラク派遣に参加した中部地方の60代の母親は、昨年の解釈改憲や、今回の安保法制に関するニュースを不安な思いで追いかけてきた。

 イラクの時は、出発前になって黙り込むことの多くなった長男を、涙を流して見送った。無事に戻ってきたが、「ほかの隊員には、心がおかしくなったやつもいる」と漏らしていた。

 あれから10年。幹部となった長男に先日、電話をかけ、「大丈夫? 今度はホントにだれかが死んでしまうよ」と尋ねたが、「命令されたらオレは行くよ」と答えた。母親は「こんなに危険なことを、なぜ国民が反対しないのか。自衛官の家族は不安でいっぱいのはずです」と語る。

 OBにも懸念の声がある。空自の戦闘機パイロットだった九州在住の元幹部は「自分の現役時代と比べ、自衛隊の任務は様変わりし、危険は増すに違いない」とみる。戦闘行為が行われている現場では実施しないとされる他国の軍隊への後方支援について、「戦場は線を引くように明確に区別できない。今の憲法と整合性がとれない。まず憲法改正を国民に問うのが筋だ」と指摘する。

■「大きな岐路」「もう少し議論を」 市民の反応は…

 市民たちは、安保法制をどうとらえたのか。

 安倍首相の記者会見が始まった午後6時、官邸前では閣議決定に抗議する市民らが集まり「戦争法案、絶対反対」と声を上げた。

 様子を見守っていた東京都葛飾区の予備校生、山口卓巳さん(18)は「自分たちの世代にいずれ関わってくるから、真剣に考えようと思って来た」という。大学で建築デザインを学ぼうと受験勉強に励んでいる。「勉強したいことや夢もある。だから戦争なんて絶対に起きてほしくない」

 道路を挟んだ向かい側から眺める人も。名古屋市の会社社長の男性(51)は仕事で上京したついでに訪れた。「戦争に向けて一歩踏み出すことになるのが心配だが、日本は助けてもらうばかりでいいのかという思いもある。もう少し議論する時間がほしい」という。

 会社員や買い物客でにぎわう東京・JR有楽町駅前でも閣議決定に反対する人たちが抗議の声を上げた。

 東京都板橋区の女性(42)はツイッターで知り、仕事帰りに立ち寄った。「戦争は絶対反対。安倍さんになって『おかしい』と思うことが増え、今何かしなければ後悔すると思って来ました」と話した。

 東京都多摩市の大学生、中野悠人さん(23)はアルバイトに向かう途中にチラシを受け取った。「友達の弟が自衛隊に入ったばかり。海外の危険な紛争地に行くとは思っていなかったのでは。すごく気になる」という。「平和の中で育ってきたが、日本は大きな岐路に立っていると感じる」

 東京都中野区の男性(43)は「仕事で手いっぱいで、関心を持つひまがない」。職場のテレビで会見が流れていたが、誰も注目していなかったという。「安保法制は普通の国として当たり前の部分もある。ただちに戦争をする国になるように言うのは大げさ。心配な点は国会で審議すればいい」と話した。



「朝日新聞」より転載


世界の憲兵を自認して、米国憲法に規定された宣戦布告の議会決議も無く戦闘行為を国防の名の下に政府の判断で全世界で展開してきた米軍兵士の実態を「しんぶん赤旗」は「きょうの潮流」でこう書いた。



イラク戦争やアフガニスタン戦争から帰還した米兵は約280万人ともいわれます。退役軍人でつくる団体のアンケート調査によると、53%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患に苦しんでいます

▼自殺を考えたことがある人は31%。自殺した帰還兵の知人がいる人は40%にも。米国では深刻な社会問題になっています

▼そんな元兵士と家族らの姿を追ったノンフィクション『帰還兵はなぜ自殺するのか』(亜紀書房)が話題です。著者は、米紙ワシントン・ポスト記者を23年間つとめ、ピュリツァー賞の受賞経験を持つジャーナリストです

▼描かれている一人ひとりの体験が壮絶です。ある帰還兵は帰国後、イラクで3歳くらいの少女を殺したことを何度も家族に告白。悪夢で目が覚めると、「そこらじゅうに子どもたちの姿が見える」と。結局、彼は自ら命を絶ちました。1歳の娘を残して

▼イラク戦争は「イラクの大量破壊兵器保有」という大ウソで当時のブッシュ米政権が始めました。侵略されたイラク国民とともに、戦争に駆り出された米国の若者の心身も壊しました。作家の保阪正康氏はこう評しています。「今の日本でもっとも読まれるべき書」と

▼安倍政権は、日本を「海外で戦争する国」につくりかえる戦争法案を閣議決定しました。先立つ与党の最終合意(11日)を米軍準機関紙「星条旗」は伝えています。「この国の平和主義政策の重大転換」。そんな転換を許してはなりません。たたかいは、これからです。



そして「東京新聞」の署名記事を胸にとどめたい。



問われる国民主権 政治部長・金井辰樹

 安倍内閣が、他国を武力で守る集団的自衛権を使えるようにする安全保障関連法案を閣議決定した。憲法の解釈を変えて集団的自衛権を行使できるように内閣が初めて決めたのは昨年七月。以来、十カ月半の間に、政府・与党は一直線に法案をつくりあげた。この間、世論の反対は根強く、法案を今国会に急いで提出する必要はないとの意見は多数を占め続けたが、主権者である国民の声が反映されることはなかった。

 憲法九条は、戦争を永久に放棄し、戦力の不保持をうたう。「戦わない」国になると宣言した。

 条文を素直に読めば自衛隊の存在を認めることさえ難しい。二十三万人弱の自衛隊員を抱え五兆円近い防衛予算を毎年使う日本の現状は九条の枠を超えてしまったようにもみえる。そして自衛隊は、最近二十年あまりの間、なし崩し的に海外に派遣されてきた。

 それでも自衛隊は、一度も人に向けて発砲せず、一人も殺さず、一人の戦死者も出していない。日本は、戦後七十年間、戦争に加わらなかった。九条の縛りがあったからこそ「戦わない」一線がぎりぎりで守られてきた。

 閣議決定された法案に目を向けてみる。「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」があれば、他国のために武力行使できるようになる。「根底から」とか「明白な」という抽象的な言葉が並ぶ条文を読み、政権のさじ加減で海外での武力行使が決まってしまい、地球のどこでも「戦える国」になりはしないかと心配になる。

 法案は十五日、国会提出され、その是非は国会議員に委ねられる。「戦える国」に踏み出すか。九条の縛りの中で踏みとどまるか。国会の論戦は、変質する平和主義の行方を決める。これまで安保法制の議論から外されてきた国会の存在意義が問われる。

 そして国会の議論では、国民主権そのものが問われる。主権とは、国のあり方を決める権力のこと。国会が主権者の考えと離れたことを決め、その結果、政権が「国のあり方」を思うままに変えられるようになれば、国民主権は形骸化してしまう。そのことを主権者である国民に選ばれた国会議員は忘れてはならない。私たち一人一人も、自分が主権者であることをしっかりと胸にとどめたい。