日の丸や旭日旗(軍旗)を掲げて街を歩き、「朝鮮人をたたき出せ!」などと声を張り上げるヘイトスピーチ(憎悪表現)デモ。差別をあおりたてるこのヘイトデモをどう考えればいいのか。日本の東西(東京、大阪)で、抗議活動の先頭に立つ2人に聞きました。
憂える人が声あげれば変わる
「仲良くしようぜパレード2014in大阪」運営委員 ITOKEN(いとけん)さん(33)
―ヘイトスピーチの現場で抗議行動をしていますね。
在日コリアンをはじめ社会的少数者を攻撃するヘイトスピーチは暴力です。リアルタイムで被害者を生み、その傷は場合によっては一生癒えることはありません。だからすぐにやめさせなきゃダメです。カウンター(抗議行動)は「応急処置」ですが、現場で反対を示すことで被害の拡大を防ぐ意味があります。
尊厳おとしめる
「ヘイトスピーチはレッドカード」であると社会に示すことも大事です。少数者の尊厳をおとしめるような発言を許すことは、この社会で暮らす人、一人ひとりが社会を作り上げる、という民主主義の原則を傷つけることでもあります。
―パレードもはじめましたね。
カウンターで知りあった在日3世の友人から「怒ってるばかりじゃ、しんどいから楽しいことしたい。こっちからメッセージを発信しようや」って話が出て、昨年7月「仲良くしようぜパレード」を大阪市の御堂筋でやりました。
やってみると、平和的な形で真正面から「国籍や民族の違いなどを理由に少数者を差別するのはよくない」って主張することには社会的な意味があると実感しました。参加者は約700人でしたが、ヘイトスピーチに反対する人がこれだけいるって示すことができたのは希望になります。
今年も7月に2回目をやり、参加者が1500人に倍増しました。性的マイノリティー(少数者)など多様な背景を持った人たちも参加し、ドラム隊、ヒップホップダンスもあって楽しくパレードしました。
―ヘイトスピーチが広がる背景には何があるのでしょう。
一つは、社会のあり方への不安や不満が背景にあると思います。いま個人が尊厳を持って生きるのがとても難しくなっています。エリートだっていつ首を切られるか分からないという不安定さがある。ずっと脅迫状を突きつけられているのと同じです。そんなストレスを受けるなかで他者への攻撃に転じる者が少なからずいる。社会的少数者や隣国をおとしめることによって、自己を保てると勘違いする人がいるんだと思います。
歴史認識の劣化
もう一つは歴史認識の劣化です。ヘイトスピーチを行う彼らに共通しているのは、日本の戦争を侵略と断罪した東京裁判を否定する歴史観です。「あの戦争は日本の自存自衛のためだった」と侵略戦争を正当化する日本会議の歴史観。安倍首相も本音は同じです。今回の内閣改造では日本会議の議員が大勢入閣しました。こういうことがヘイトスピーチを助長していると思います。
―克服の道をどう考えますか。
リベラル勢力が、がんばらないといけない。黙っていたら安倍首相は消費税だって10%に上げるんじゃないでしょうか。「安倍政権に任せていたらヤバイ」と考えている市民は相当いるはずです。また日本の将来を憂えている市民も多い。彼らが声を上げ始めれば事態は好転するのでは。しっかり考えて、それを行動に移す人がさらに増えていけば、どんどん変わっていくと思います。たたかいはこれからです。
聞き手・写真 内藤真己子
フェアな社会をぶち壊す存在
「東京大行進2014」を主催する TOKYO NO HATEのメンバー 木野寿紀(きのとしき)さん(32)
―ヘイトスピーチの恐ろしさは。
多数部族フツ族が少数部族ツチ族を大量殺害したルワンダ虐殺(1994年)では、ラジオで「ゴキブリ」と呼ぶなどして、ツチ族への憎悪を扇動した例があります。いままさに在特会が「ゴキブリ朝鮮人」と口にしています。ヘイトスピーチは差別的な権力構造を背景にしているだけに、憎悪を扇動し、最悪、虐殺にもつながりかねません。
在特会のヘイトデモにたいして昨年2月から、抗議活動を始めています。ドイツのドレスデンでネオナチの集会を市民が大々的に包囲する抗議運動があって、それを日本でもやりたいと思い、いろんな人に呼びかけています。難しく考えなくても、あのヘイトデモを1度でも見れば、誰でも「これは何とかせねば…」と思います。フェアな社会をぶち壊しにする存在ですから。義憤というと偉そうですが、ヘイトデモがあまりにも醜悪なので「叱ってやろう」という感じで始めました。
―国連の人権委員会や人種差別撤廃委員会が日本にたいしてヘイトスピーチ規制に関する勧告を出しました。
“おかしな空気”
これまで何回も出されていたことです。今回、やけにニュースとして取り上げられたのは、私たちの強い抗議活動によって問題化してきたことがあります。数年前に比べ、これだけ反中・反韓が増えるなか、「おかしな空気になってきた」と世間が気付きはじめてきたことも大きいと思います。
在特会が、いくら特定の民族をあげて「殺せ」だの「出て行け」だのと言ってもいまの日本では合法です。公共の場で特定の民族や人種への大量殺りくや迫害を呼びかけるなど在特会のデモにしか適用されないような、非常に慎重な規制も考えられます。
ただ、ヘイトスピーチの規制だけがホットに論じられていますが、国連が日本に勧告しているのは、包括的に差別を禁止する法律をつくれということです。
日本では、就職で「在日はお断り」とか、不動産賃貸でも「イスラム教徒はお断り」といった差別があっても罰せられない。欧米であれば、消費者運動が起きたりして、社会的な制裁を受けます。
東京オリンピックも近いのに、いまのままでは“入れ墨が入ったニュージーランドの先住民の入湯はお断り”といった事態がおきかねません。包括的な差別禁止法のようなものが必要な段階だと思います。本来はそうした法律をつくることは恥ずかしいことです。差別を許さない社会であれば法律はいらないのですから。
―「東京大行進2014」の日程が決まりましたね。
差別のない世界
11月2日、新宿中央公園に集合し、差別反対を訴える大規模な意思表示行動を計画しています。今年のテーマは「差別のない世界を、子どもたちへ。」です。
在特会が朝鮮学校を襲撃した事件では、子どもたちに不眠など精神的な被害がでました。その一方で、大阪のコリアタウン鶴橋で「大虐殺」宣言をしたのは中学生でした。
子どもたちが多様性を尊重し、差別される側にも、差別する側にもなってはいけない。そういう日本をつくろうと呼びかけたいと思います。
聞き手・写真 竹原東吾
ヘイトスピーチデモ 特定の民族や国籍、宗教、性的嗜好(しこう)に対して、侮蔑的な表現でおとしめたり、差別をあおったりするような言動のこと。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)のヘイトスピーチデモが国際的にも問題になっています。
「しんぶん赤旗」より転載
関連記事を。
山谷えり子国家公安委員長兼拉致問題担当大臣。 在特会のHPの言い分をそのまま借用してメディアに回答。自ら明かす(田中龍作ジャーナル)
驚愕の記者会見が世界に向けて発信された。警察行政のトップが、ヨーロッパなどでは犯罪にあたるヘイトスピーチを繰り広げる団体の言い分をそのまま使ってしまったのだ。
山谷えり子・国家公安委員長兼拉致問題担当相は、TBSラジオ番組の質問に対して「在特会については在日韓国人・朝鮮人問題を広く一般に提起し、彼らに付与されている『特別永住資格』の廃止を主張するなど、『在日特権』をなくすことを目的として活動している組織と承知している」と文書で回答していたことが分かった。
きょう、日本外国特派員協会で開かれた山谷大臣の記者会見でTBSラジオ番組のプロデューサーが明らかにした。
在特会(在日特権を許さない市民の会)のヘイトスピーチをめぐっては、国連人権委員会が7月に、国連人種差別撤廃委員会が8月末に、日本政府に対して法規制するよう求めている。
ヘイトスピーチはドイツやフランスなどでは法律違反で警察の取り締まりの対象となっている。
海外では犯罪となるヘイトスピーチを日本各地で平然と繰り広げている在特会の主張を、警察行政のトップが文書上で繰り広げたのである。
TBSラジオのプロデューサーは質疑応答で「在日特権とは何か?」と山谷大臣に質問した。会見場は騒然となった。記者団の追及に山谷大臣は「HPを引用したまで」とかわした。
週刊誌のインタビューで在特会の存在すら知らないと答えていた山谷大臣だが、彼らのHPを自身の回答に引用したということは、在特会が何であるかを知っていたということだ。ウソがばれた瞬間だった。
山谷大臣は自己紹介のすべてを拉致問題に割いた。横田めぐみさんの写真パネルを手に掲げながら英語で話すほどの念の入れようだった。拉致問題を 売り にする山谷氏はご満悦の体で自己紹介を終えた。
ところが質疑応答に入ると外国人記者から出た質問はすべて「在特会との関わり」だった。拉致問題を質問したのはNHK1社のみだった。
口火を切ったのはイギリス人記者だった。
大臣は増木重夫氏(元在特会幹部)との間柄を知らなかったと言っているが、増木氏のほうは15年前から知っているという。増木氏を何年前から知っていたか?何度会ったか? ザイトクカーイ(在特会)の主張は容認できないと公言して欲しいのだが?
山谷大臣の表情が一瞬にして険しくなった―
私は選挙区が全国であり、沢山の人と会う。増木さんという人が在特会かは存じ上げない。それは記憶にありません。沢山の人といろんな機会に会い、いろんな意見を聞く。一般論としていろんな組織についてコメントするのは適切ではない。
アメリカ人記者:
国連、米国務省、あなたが管轄する警察庁はいずれも在特会をヘイトクライムの犯罪グループと特定している。差別的な気持ちを煽動し、在日韓国人への憎悪を創り出している。警察のトップとして差別行為は許さない、人種差別は良くないといって欲しいのだが? 国連は何度も勧告しているし、国務省も言及しているのだが?
山谷大臣:
ヘイトスピーチに関しては特定の集団や人に対して名誉毀損、侮蔑的、憎悪感情を煽る、誠に良くない憂慮に堪えない事である。
昨今の日本でヘイトスピーチをする人、それに反対する人の間で暴力的な行為すら起きている。遺憾に思っている。警察としては適切な警備を行い、違法行為があれば厳正に対処していかなければならない。
田中:週刊文春とのインタビューで山谷大臣は在特会の名前も知らないといったが、今、国連からこれほど問題にされている団体の名前も知らなくて警察のトップが務まるのか?辞任に値しないか?
山谷:ヘイトスピーチ、ヘイトクライムに関しては憂慮に堪えない。遺憾に思う…(中略)週刊誌のやり取りに関しては、事実ではない。
山谷大臣は、どんな追及に対しても「違法行為があれば厳正に対処する」「ヘイトは憂慮に耐えない」などとかわした。在特会に対する厳しい姿勢は具体的に何も示さなかった。
ヘイトを取り締まれば自らの支持基盤が揺らぐ。かといって野放しにすれば、日本政府が国際社会で信用を失う。究極の選択を迫られているという認識が果たして山谷大臣にあるのだろうか?
http://tanakaryusaku.jp/より転載
こんな人物が国家公安委員長なんだから、この国の政治の劣化も極まれりだ。
安倍晋三も在特会幹部との写真がネット上に出回って、国連でどんな格好いいこと言ったって、ダメだろう。
人権感覚ゼロの政権の恥部をもっともっと日本のマスコミも追求しなさいよ。