川内原発安全審査の茶番 九電が「活断層調査」の誤り否定 | 函南発「原発なくそう ミツバチの会」 ノブクンのつぶやき

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 「原発の安全審査は茶番」――そうした声が聞こえてきそうな、電力会社と原子力規制委員会との馴れ合い審査の実態が浮き彫りとなった。

 

 原発再稼働第一号になることが確実視される九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の安全審査をめぐり、国の地震調査研究推進本部(推本)が否定したはずの九電による「活断層調査」を、九電側が「間違っていない」と認識していることが明らかとなった。

 

 九電が提出した安全審査のための書類には、推本の指摘を反映させた基準値振動の値を明記した九電だが、これ自体、形ばかりのものだったことになる。



否定された九電の活断層調査


 
 HUNTERは昨年1月、推本が実施した活断層再評価のうち、川内原発に近接する「市来断層帯」に関する議事録を文部科学省に情報公開請求。平成24年5月17日、同6月25日、同7月26日にそれぞれ行われた第16回、第17回、第18回の地質調査委員会長期評価部会の分科会議事録を入手した。




分科会議事録 議事録によれば、平成24年に行われた会議で九電の地質調査結果(平成21年『川内原子力発電所敷地周辺・敷地近傍の地質・地質構造(補足説明:その2)』。右が表紙)である。右がその表紙)を酷評、川内原発にもっとも近接する「市来断層帯」を大幅に海側に延ばすなど、川内原発の安全性に疑問符を付けた形となっていた。

 
 市来断層帯に関する議論では、同年5月17日の第16回分科会で九州電力の資料を基に議論することで一致。6月25日には川内原発沖の甑海峡にある甑断層が北に延びる可能性と、内陸を走る市来断層の海域部分がさらに延びることなどが確認されていた。



 詳細な検討については「原子力保安院の会議で行うべき作業」と指摘し、再評価結果が川内原発の安全性評価に影響を与えることを示唆している。下は、この時の議事録の一部だ。

 
(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)



 同年7月26日に行われた第18回分科会ではさらに踏み込んで、九電作成の資料について「参考資料3-1-2の解釈はとにかくひどいものである」と酷評、「最もひどいのは、地表面(海底面)にまで断層変位が及んでいるにも関わらず、断層の存在を全く無視していることである」として、未公表の断層があることも示唆していた。

 (下はその議事録。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)



 この推本の再評価結果を受けて、原子力規制委員会は九電が出した川内原発の安全審査に対し、次のような指示を行っている。



《検討用地震の震源としている断層について、地震調査研究推進本部が平成25年2月に公表した「九州地域の活断層の長期評価(第一版)」(以下、「推本評価」という。)による断層長さより短く評価したものなどについては、少なくとも推本評価を反映して評価し直すこと》――下の文書、赤いアンダーラインの部分が活断層評価に関する指示である。



規制委指摘2.bmp



 規制委の指示を受けた九電が提出した最終的な資料が次のものだ。

活断層評価.bmp 活断層評価2.bmp



 地震動評価や津波影響評価において、推本の再評価を反映させた形とはなっているが、九電がかつて国に提示し、推本から酷評された活断層調査については、間違いだったのかどうかさえ明示されていない。


《一部の活断層については、当社より長く評価》と表現、自社調査の結果について、大した間違いはないと言わんばかりだ。



 しかし、推本は、九電調査の『一部』について酷評したのではなく、前述の「市来断層帯」を含めて、川内原発周辺すべての九電調査について評価し直していた。



 九電資料は、川内原発周辺の活断層をF-A、F-B、F-C、F-D、五反田川断層、F-E、F-Fの7つに分けて評価しているが、推本ではF-C断層、F-D断層、五反田川断層をそれぞれ甑海峡中央区間、吹上浜西方沖区間、市来区間と呼んで再評価。残るF-A、F-B、F-E、F-Fの活断層は、上甑島北東沖区間、辻の堂断層を含む区間および甑区間の三つに区分され、「甑断層帯」として再評価していた。


下左が九電の資料、右が推進本部の公表資料にある図面である。

九電資料にある川内原発付近の活断層分布図  推進本部の公表資料にある図面



 それぞれの断層についての九電側の評価と、推本による再評価結果は大きく違っている。


まず、九電の言い分。

【F-A断層】
 F-A断層については、活動性を考慮し、北東部は断層が認められないs14測線まで、南西部は後期更新世以降の地層に変位・変形が認められないNo21m測線まで延長した長さ約18kmとして評価する。

【F-B断層】
 F-B断層については、活動性を考慮し、北東部は後期更新世以降の地層に変位・変形が認められないs24測線まで、南西部は断層が認められないs30測線まで延長した長さ約15kmとして評価する。

【F-A断層とF-B断層の連続性について】
 F-A断層及びF-B断層はそれぞれ累積的な変位・変形構造が認められ、F-B断層の北東側の伏在断層については後期更新世以降の活動は認められない。
 ブーゲー異常においては、F-A断層及びF-B断層周辺では連続する構造が認められるものの、前期更新世の地層であるC層の層厚分布の形態等からは、両断層が連続する構造は認められない。
 後期更新世以降の活動が認められる両断層の離隔は5km以上である。


 以上のことから、F-A断層及びF-B断層は連続しないものと判断した。



 一方、地震調査研究推進本部の再評価ではこうなる。


【地震調査研究推進本部の再評価】
 甑区間の北東端の位置及び南西端の位置については九州電力株式会社(2009)に示されている。九州電力株式会社(2009)は、本評価の甑断層が上甑島の南方海域において途切れ、これより北東側をF-A 断層、南西側をF-B 断層とした。九州電力株式会社(2009)は、この活断層が途切れるとした区間における構造について、地下でF-A 断層とF-B 断層をつなぐように伏在するものの、海底に近い部分にみられる反射面の不連続は不整合面であり、活断層ではないとした。


 ところで、甑断層は重力異常の勾配の大きい領域に一致し、この領域は九州電力株式会社(2009)が活断層ではないとした区間でも認められる。また、この不整合面とされた区間を含む甑断層の南西部分の音波探査断面には、海底に窪地状の地形が存在し、さらに、九州電力株式会社が不整合面とした反射面の不連続の上盤側では地層に引きずり状の変形が認められることから、甑区間の活動を示している可能性がある。

 
 以上のことから、甑区間は上記の北東端から南西端にかけて途切れることなく断層が連続して分布しているものと推定した。


 そして推本の結論――《甑断層帯においては、過去の断層活動に関する調査研究が行われておらず、現状では地震後経過率等の評価を行うことができない。今後、最新活動時期や平均活動間隔など、過去の断層活動を明らかにするための調査が必要である。甑区間は、推定される活動時の地震規模がM7.5 程度と大きいうえ、上下方向のずれを伴う沿岸海域の活断層であることから、津波の発生を検討する必要がある》。



 「M7.5」、「津波の発生」― 政府機関が甑断層帯について大きな危険性があることを指摘した形だが、これは川内原発の安全性に警鐘を鳴らしたも同然だ。


 右上の写真は、川内原発の現在の状況である。川内原発の温排水を放出する「放水口」近くの砂浜から撮影した一枚だが、一帯に樹木が生い茂るだけで、防潮堤などの整備は行なわれていない。これで本当に安全と言えるのだろうか。



九電―「間違っていない」


九州電力 推本の活断層再評価結果を反映させ、基準値振動を「620ガル」に引き上げたという九電だが、想定されるマグニチュードがどの程度のものか、資料には明示されていない。そもそも九電は、自社の活断層評価をどう見ているのか――、九電に取材した。



 驚いたことに、九電広報の答えは「当社の活断層評価は間違っていません」。推本の再評価で酷評されている調査結果を、「間違いではない」と主張する。何度聞いても同じ答えで、それが九電の正式見解なのだという。それでは、なぜ基準値振動の策定に推本の再評価を反映させたのか?これに対しては、明確な回答はなかった。要は、川内原発再稼働を急ぐため、とりあえず規制委の言う通りにやったということだ。ために「620ガル」の根拠があやふやで、なぜこの数字に落ち着いたのかの科学的裏付けが出されていない。



「再稼働ありき」が規制委の姿勢


 
 これを良しとした規制委も随分と無責任だ。前述したように、推本の再評価における議論の中では、市来断層帯について詳細な検討については「原子力保安院の会議で行うべき作業」と指摘している。これは、再評価そのものが不完全だったことを示している。しかし、保安院を引き継いだ形の規制委は、この検討作業を行っていない。


不完全だった推本の再評価結果を九電に丸投げし、審査が通るように配慮したとしか思えない対応なのだ。つまりは茶番。「再稼働ありきの審査」ということになる。フクシマの教訓は、何も生かされていない。


知事もグル


 「再稼働ありき」は、川内原発を抱える鹿児島県知事も同じ。つい先日も、規制委が川内原発を優先審査する方針であることについて、「ありがたい」と明言。もともと再稼働への同意は県と立地自治体だけで十分と公言するほどの知事だけに、わが意を得たりの心境なのだろう。周辺自治体でも説明会を開くというが、どうせ形だけ。


この知事は、アリバイだけ作れば何をやってもいいと考えている独裁主義者。原子力ムラとグルになって、再稼働に向けてがむしゃらに進んでいくものと見られている。原発がらみはどれも茶番だ。

  明日はこの知事の独裁ぶりについて報じる予定だが……。




「HUNTER」より転載



こんな水準でも、「安全審査」をクリア出来るのなら、他の原発もみんなOKということになる。
少なくとも規制委員会は、評価の矛盾をどうするのか、きちんと説明しなければ、何でもかんでも再稼働ありきと言われざるをえないだろう。