〔袴田事件再審開始〕開いた 「生」への扉   元裁判官、苦悩の告白も | 函南発「原発なくそう ミツバチの会」 ノブクンのつぶやき

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集まった支援者に笑顔で報告する袴田巌元被告の姉秀子さん(中央)。右は西嶋勝彦弁護団長=27日午前10時すぎ、静岡地裁前






“再審のゴング”がようやく響いた。静岡地裁で27日午前、再審開始の決定が出された袴田事件の第2次再審請求。待ちに待った知らせを耳にした瞬間、同地裁前の支援者たちに喜びが広がった。DNA型鑑定の結果などから、再審開始に自信を見せていた弁護団関係者も満面の笑み。直後に会見した袴田巌元被告(78)の姉秀子さん(81)は「長年の願いがかなった」と声を詰まらせながら、47年間にわたって拘置所生活を送る弟の体調を気遣った。



姉「ただうれしい」 弁護団「拘置停止、画期的」


 午前10時1分。静岡地裁から駆け出してきた弁護団関係者が、手にした幕を掲げた。「再審開始」。続いてゆっくりとした足取りで地裁から姿を現した秀子さんからは満面の笑みがあふれた。「ただうれしい。それだけです」


 事件発生から48年、袴田元被告の無実を疑ったことは一度もない。長年の拘置所生活による拘禁症状や認知症もあるとされる弟に代わって第2次再審請求の申立人になったのも、無実が証明されて釈放される日が必ず訪れると固く信じてきたからだ。


 共に支え合ってきた母親や兄たちは既に他界した。自身や袴田元被告の年齢を考えれば、今回の再審請求は実質的に最後のチャンスとの思いも強かった。それだけに、地裁の再審開始決定でこれまでの苦労が全て報われた気がする。秀子さんは「午後に東京拘置所に行きます。本人は分からないかもしれないが、良い知らせなので、粘り強く出てくるよう伝えたい」と話した。


 「袴田さんの47年間の死の叫びが届いた」―。西嶋勝彦弁護団長が力強く話した。犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕をDNA型鑑定した結果、弁護側推薦の鑑定人が「被害者のものでも袴田元被告のものでもない」とした今回の審理。弁護団の要請を受け、静岡地検に対し、これまで明らかにしていなかった証拠の開示を勧告した地裁の姿勢からも、再審開始は間違いないと自信を深めていた。


 ただ、袴田元被告にとって、失われた時間を取り戻せないのはもちろん、傷付けられた人権も癒やせない。西嶋団長は「検察には即時抗告をしないように当然、強く求めていく」と表情を引き締めた。弁護団事務局長の小川秀世弁護士は「死刑執行停止だけでなく、拘置停止も認めた画期的な決定だ」と語った。



「静岡新聞」より転載



素人が考えてもえん罪としか思えなかったのに、検察のメンツでかくも長き拘留生活を余儀なくされ、人生を狂わされた。
でっち上げの証拠を作り出した関係者は何の処罰も受けないのか。
僕は、弟を信じてその無実を晴らすために命をかけてきたお姉さんを心から尊敬する。
そして一方、この事件の裏にはこんな話もあった。




袴田事件:「やっていません」に涙出る…
1審死刑の裁判官

熊本典道さん=2013年11月、荒木涼子撮影
熊本典道さん=2013年11月、荒木涼子撮影


 

静岡市(旧静岡県清水市)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した元プロボクサー、袴田巌死刑囚(78)側の第2次再審請求。静岡地裁(村山浩昭裁判長)は27日、再審を開始し、死刑執行を停止する決定を出した。


 1審・静岡地裁で死刑の判決文を書いた元裁判官、熊本典道(のりみち)さん(76)は「公判で袴田さんが『やっていません』と言った姿が忘れられない。思い出すと涙が出る」と、今でも悔やみ続けている。


 真っすぐに裁判長を見据えて受け答えする袴田死刑囚の様子や、任意性に乏しい供述調書などを通じ、「有罪認定は難しい」と思っていた。だが、結審後に判決文を検討する中で、結果的に先輩判事に押し切られた、と振り返る。


 半年後、耐えられず退官し、弁護士に転じた。合議の秘密を破り、第1次再審請求中の2007年、「無罪の心証があった」と告白したが、請求棄却が確定した。先月末には古巣の静岡地裁を訪ね、再審開始を求める上申書を提出。「自分は他の裁判官を説得できなかった。償いをしたい」と訴えた。【荒木涼子】



「毎日新聞」より転載