東日本大震災の津波で町面積の約4割が浸水した宮城県山元町で、昨年秋からネズミが多数出没している。仮設住宅の住民からは「天井裏を走り回ってうるさい」「電気コードをかじられた」といった苦情が町などに寄せられている。今のところ原因は不明で、町の対策は注意喚起や駆除用粘着シートの配布にとどまる。町民は「今は寒さでおとなしいが、春にはさらに増殖するのでは」と心配している。
「こんなに掛かってるよ。震災前は1年に2、3匹出れば多い方だったのに」。同町笠野地区にある普門寺の坂野文俊住職(50)は、粘着シートに掛かったネズミ数匹を見てため息をついた。
ネズミは津波で全壊した境内の修繕が一段落した昨年9月ごろから、台所などに出没し始めたという。
町は昨年11月、町民からの連絡を受けて保健所とともに調査し、JR山下駅前でネズミの発生を確認。その後、出没情報や苦情は内陸部にも広がり、町内の仮設住宅の9カ所すべてから出没の報告があったという。
町社会福祉協議会の「復興応援センター」によると、これまでに仮設住宅の住民から「鳴き声や走り回る音が気になって眠れない」「エアコンの配線がかじられて壊れた」「子どもの靴の中で繁殖していた」などの声が寄せられている。
渡辺日出夫副センター長は「不自由な生活を強いられている住民が、新たなストレスを抱えて体調を崩しかねない」と気をもむ。
ネズミが急増した原因は、はっきりとは分かっていない。町民の間では「震災がれきの山で繁殖したネズミが、がれき撤去に伴い、民家に流入しているのではないか」(坂野住職)と指摘する声が多い。
これに対し、町は「農地の除塩作業で掘り返された土から出てきた可能性がある」(町民生活課)との見方だ。
町は広報などで食べ物の管理の徹底や侵入経路をふさぐなどの対策を呼び掛ける一方、仮設住宅の約1000戸に粘着シートを配布した。
宮城県によると、ネズミが増えているとの報告は、県南部の岩沼市、亘理町の津波被災地からも寄せられており、「仮設住宅の住民に何らかの支援ができないか検討している」(食と暮らしの安全推進課)という。
「河北新報」より転載
踏んだり蹴ったりだなぁ。