対策には百億円単位の工事費が必要になる見込み。再稼働の断念を選択する電力会社が出る可能性がある。
素案では、福島事故の教訓から、地震や津波、さらには放射能からも作業員を守る拠点施設が求められる。航空機テロなどに対しては、通常の制御室とは別に頑丈な第二制御室を整備。非常用電源も備え、原子炉建屋の外から緊急冷却ができるようにする。
格納容器の破裂を防ぐためベント(排気)を迫られても、汚染された蒸気を浄化して放射性物質の放出を最小限にするフィルターも設置。さらには原子炉関連の重要な配管を多重化し、一つがダウンしても安全を保つ。
これらの対策は、原発の大規模な改造を伴い、工事計画を規制委が審査するのに半年から一年かかると見込まれる。工事も格納容器の穴あけなど難しいものが多く、時間がかかりそうだ。
ただし、昨年夏の関西電力大飯原発(福井県)の再稼働のときのように、フィルターや作業員の拠点など重要な安全対策が欠けているにもかかわらず、設置計画を発表しただけで再稼働を認めるようなことがあっては、再び規制機関の信頼が地に落ちるのは必至だ。一部は猶予期間が設けられそうだが、慎重な検討が求められる。
◆原発周辺の防災計画進まず
原発が新たな安全基準を満たせば、再稼働の重要な条件二つのうち一つをクリアすることになる。しかし、もう一つの重要な条件である住民の安全を守る「地域防災計画」づくりは各地で難航している。
計画は、規制委の防災指針に基づき原発から三十キロ圏内の二十一道府県と百三十五市町村がそれぞれつくる。田中俊一委員長は「地域の防災計画ができないと、最低限の条件はそろわない」と言明。三月十八日までの策定が求められる。
ところが、どれくらいの放射線量が検出されれば住民が避難を始めるのかなど肝心の規制委の議論が混乱している。いったんは毎時〇・五ミリシーベルトという数字に落ち着きそうになったが、国際基準より二倍厳しい値とはいえ、わずか二時間で年間の被ばく線量限度に達する。このため、もっと厳しい値にすべきかどうかについて、規制委の依頼で検討していた専門家の意見が割れている。
昨秋に公表した放射性物質の拡散シミュレーションで訂正が相次いだことも自治体を困惑させている。
たとえ計画がまとまっても、モニタリングや避難ルート、連絡網などが実際に機能するのか、訓練などで検証しないとただの紙。原発内外の安全が確保されなければ、再稼働はあり得ない。 (大野孝志、加藤裕治)
「東京新聞」より転載
どう考えても、採算に合わないというくらい厳しい基準を作成すれば、金もうけ最優先の電力各社は一斉に原発から撤退を決めるんじゃないの。
そのくらいのことやって欲しいもんだ。