複合体国家への道 ―安倍新政権の危険性― | 函南発「原発なくそう ミツバチの会」 ノブクンのつぶやき

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違憲状態のまま衆議院を解散し、戦後最低の投票率を記録して総選挙が終わった。有権者にとって争点は何だったのか、審判が下ったいまもよく分からない(ちなみに筆者は憲法改正と軍備拡張の是非こそが争点だと思っていたが・・・)。

 原発、増税、TPPと国の未来を左右する重要課題ばかりだったはずだが、自民圧勝の決め手は「民主党ではない安定勢力」という一点に尽きるのではないだろうか。
 だとすれば、小選挙区制度の弊害とはいえ、安易な選択で自民党を勝たせ過ぎたことが、この国の未来に疲弊をもたらすことを予告しておきたい。


「土建国家」の復活

 有権者が自民党の打ち出した景気対策に賛同したというのなら、目先の利益に目がくらむ土建業者と変わらぬ選択ということになる。「土建国家」の復活である。
 なぜなら、同党の景気対策の目玉は「国土強靭化」という名前の公共事業ばら撒き策だからだ。

 一体どこに10年間で200兆円ものカネがあるのだろうか?

 カネがなければお札を刷れとばかり、安倍首相は大幅な金融緩和を主導する。
 さらに国防軍まで作るということになれば、またたく間に財政規律が弛み、国家財政が破綻するであろうことは自明の理である。旧態依然という言葉があるが、これでは戦前まで時の針を戻すのと同じだ。

 軍事国家、土建国家、いずれも政・官・業癒着の上に成り立っていたことを忘れてはいないか。

懲りない自民党 


 27日に発足した第二次安倍内閣は、来年夏の参院選を意識した布陣らしいが、一見重厚そうに見えて論功行賞とお友達優先の結果でしかない。


 最たる例が麻生太郎氏の財政・金融相への起用である。漢字が読めない彼が、数々の舌禍騒ぎを招いたのは記憶に新しいが、平成20年度にその内閣の下で定額給付金という名のばら撒きを行ったほか、同年度から21年度にかけて計3度の大型補正予算を含む数十兆円規模の経済対策を行っている。

 いずれの施策も功を奏さなかったことは、現在もデフレ不況が続いていることで証明済みだ。
 公共事業の乱発で景気が良くなったのは昔の話。新たなニューディールが求められているはずだが、自民党政権は票とカネのために古女房にしがみつく構えだ。
 原資は税金。同党にとって、国民から吸い上げた血税は自己の利益を確保するための道具なのである。

 新政権は、安倍カラー全開で参院選まで突っ走ると見られるが、早くも未着工原発の建設凍結の白紙化や、自衛隊の増強といった国民の望まない方向性を打ち出してきており、福島第一原発に象徴される3.11の悲劇は忘れ去られた形だ。


 復興や防災といった事業は建設業界への餌に過ぎないし、原発推進は財界をはじめ読売・産経といった右寄りメディアに対するアピールなのである。
 あらゆる意味で、自民党は過去の失敗にまったく懲りていない。

複合体国家

 大雑把な括りではあるが、アメリカは軍事産業と軍部などで構成される軍産複合体が支配する国である。巨額な軍事費が特定企業を潤す一方で、国民生活は圧迫される。軍事優先である限り、暮らし向きの予算が大幅に増えることはないからだ。

 兵器開発には膨大な時間とカネが必要となるが、その大義名分を得るために、武力行使―すなわち戦争を繰り返すことを余儀なくされる。軍産複合体が存在し続ける限り、アメリカに真の平和はない。

 それでは日本はどうか―。軍産複合体に匹敵するのが、公共事業を軸に「政・官・業のトライアングル」などと称されてきた建設業界と役人、そして自民党の関係である。軍産複合体ならぬ、公共事業複合体による支配だ。

 戦後、インフラ整備の推進が豊かな国民生活の大前提であった時代が続いた。経済成長を支えたのは紛れもなく公共事業であり、経済界をリードしたのは重厚長大型の企業だった。
 そして自民党は、経済界から提供される豊富なカネと人を政治活動につぎ込んで強固な地盤を築くとともに、役人と結託して次から次へと公共事業を生み出してきた。
 大きな事業があらかた片付いてしまえば、ムダと言われるのを承知で、必要のない事業までひねり出してきたのである。

 その結果が、900兆円とも1,000兆円ともいわれる借金の山と、政治とカネをめぐる事件の頻発である。この間、年金は崩壊し、経済も疲弊。将来に希望を抱くことの出来ない国になったのは周知の通りだ。

安倍政権の実相 

 民主党が提唱した「コンクリートから人へ」のキャッチコピーは間違いではなかった。ただ、政権を担当したことのなかった同党があまりに幼かったがために、混乱を招いただけの3年間となってしまったことが悔やまれる。

 長すぎた自民一党支配が、健全野党の育成を阻んだということなのかもしれないが、自民党に対抗する勢力が存在しない限り、この国の未来は危険な方向に向かい続けるだろう。

 繰り返し述べてきたが、安倍自民党が目指しているのは憲法改正と国防軍の創設による軍事国家だ。
 アメリカ並みに軍産複合体が肥大化する可能性が大ということになるが、これは国家予算に占める軍事費(自衛隊が国防軍になれば、国防費ではなく軍事費と呼ぶのが妥当であろう)の割合が大幅に増えることを意味している。

 同時進行で、国土強靭化などというふれ込みの公共事業予算が増え続けたらどうなるのか。答えは財政破綻か「さらなる増税」しかない。

 戦後の日本が急成長したのは、日米安保によってアメリカの武威に守られ、軍事費を抑えることができたからに他ならない。この国には、軍事と公共事業という二兎を追う力などなかったし、現在はさらにその傾向が顕著だ。
 デフレ不況下、税収は上がらず、公共事業を増やす予算は国債発行に頼らざるを得ない。同時に軍事費を積み増す余裕などどこにもないはずである。

 しかし、安倍首相の視線の先にあるのは、アメリカと日本を疲弊させてきた軍事と公共事業の予算の両方を増やすことでしか実現できない社会だ。巨大複合体の頂点に君臨するのは、もちろん安倍首相自身である。

 そして有権者は、それを承知で自民党を選んだということになる。

 勝手にしろと言いたいところだが、半数近くの有権者が棄権することでささやかな抵抗を試みたと見るなら、少しは希望が残っているのかもしれない。

 自民党の目指すところを実現するためには、ねじれ状態の国会で参議院の議席を大幅に増やす必要がある。
 来年夏の衆・参ダブル選挙を予想する声も上がっており、自民党が衆・参で3分の2を超える議席を得れば、この国は間違いなく憲法改正、そして軍事国家への道を歩むことになる。
 公共事業費や軍事費が国を蝕むことは、述べてきた通りだ。


 どこまで自民党や極右の連中に付き合うのか、腹を決めるべきなのだろう。


「HUNTER」より転載