活発なニューテラダ21 -3ページ目

活発なニューテラダ21

                                                                                          

夏の名残惜しさに私達は川沿いで線香花火を始めた。

マフォのうなじに蚊が止まって血を吸い始めた。

私はマフォに尋ねた。

「蚊がとまっているから叩くがいいか?」

マフォは言った。

「万民を潤せ。」

翌日も蚊は同じところにとまっていた。

私はマフォに尋ねた。

「今日も同じところに蚊がとまっている。叩くがいいか?」

マフォは言った。

「3年待て。」

3年が経った。

大きく膨らんだ蚊のお腹に穴を開けると極上のワインが出てきた。

マフォは言った。

「万民を潤せ。」

噂はたちまちに広がりマフォのうなじには行列が絶えることはなかった。

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マフォはクロワッサンを食べた。

「おいしいクロワッサンだ。」

「ああ、おいしいクロワッサンだ。

だがしかし、そのおいしさの少なくとも

9割以上は空気の味なのだよ、マフォよ。」




マフォはコーヒーを飲んだ。

「おいしいコーヒーだ。」

「ああ、おいしいコーヒーだ。

だがしかし、そのおいしさの少なくとも

9割以上は水の味なのだよ、マフォよ。」




マフォはパブロンを飲んだ。

「おいしいパブロンだ。」





マフォのワインレッドのスープラに乗って私達はコバルトアワーの港町を走った。

「今夜はゴキゲンな夜だったがお前の運転もゴキゲンな運転だ。」

マフォは黙ったままアクセルをベタ踏みした。

返事が無いものと考え、しばらく間をおいてからまた言った。

「今夜はイカした夜だったがお前の運転もイカした運転だ。」

マフォは交差点をドリフトで右折した。

私は少し面食らったがやや落ち着いた素振りで言った。

「今夜はオサレでサクサクな夜だったがお前の運転もオサレでサクサクな運転だ。」

マフォは無言で路肩に車を寄せて停めた。

そして水中花から左手を離さないままで言った。

「私の沈黙があなたを3種類の言い回しへと導いた。

しかし回を重ねるごとにあなたは真実から離れていった。

おみくじは一回だけしか引いてはいけないって言うのご存知?

あなたはたくさんのものにつかまって縛られていないと不安で仕方がない哀れなお方。

そう、まるで自分で自分を縛るのが… 」

「危ない!マフォ、伏せろ!」

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「私達…」

マフォはスマホの画面を三度スワイプしてから言った。

「……そろそろ禁区かしら?」

鳥の鳴き声が朝を知らせた。

「行かないと、」

私は立ち上がってシャツに腕をとおしながら言った。

「それでだ。今の質問には答えが72通りあるんだな。」

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「あなたの言う酸っぱいって例えばどういうことかしら?」

マフォはスマホをバッグから取り出してさらに続けた。

「ところでこの写真、ご存知?」

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