今までに男の土下座を3回見たことがある。
多い方かもしれない。
一度目。
始めて就職した会社には、
超難関大卒や、大学院卒がごろごろいた。
その中で、日本で一番偏差値の高い大学の院卒がいた。
彼は勉強はできるけど、仕事が全然できなかった。
なんというか、
文と文の間の空気を読み取れないので、
仕事の指示がうまく伝わらないのだ。
あるとき、上司がその人と叱責した。
今まで声を荒げることのない上司だったけど、
今までのことが溜まっていたのだろう。
いまはアスペルガーとか色々あるけれど、
そのころは、そんな情報は無くて
何度説明しても伝わらないことや、
分かっていないのに返事をするところに
上司も切れたのだろう。
書類を音を立てて机に置いた後
「この仕事の指示をどう理解していたんだ?」
と強めの口調で言い放ち、
「わからないときはわからないと言え。」
と言った。
その瞬間、その人は
土下座して「すいません!」と言ったのだ。
上司も周りも固まってしまった。
凍り付く空気というのはああいうのを言うのだろう。
その会社はかなりホワイトで、
上司を社長含めてさん付けで呼ぶような会社だった。
威圧的な上司なんてものはいなかった。
土下座に何の意味もない。
本人にだって意味はない。
そう思った瞬間、
立っていた私は、持っていたコーヒーカップから手を離した。
派手な音を立てて、床に落ちた。
割れるコーヒーカップと飛び散るコーヒー。
「きゃ~!すいませ~ん。」
と言う私に、みんな大丈夫かと声をかけ、
雑巾を取ってきてくれるひとなどで
凍り付いた空気はほどけた。
その間に、土下座していた人は同僚が立ち上がらせ、
とりあえずその場は収まった。
その後、上司は土下座した人を別室に呼んで話していた。
その人は後日別部署に異動になった。
理系だったけれど、事務仕事になっていた。
自分が分かっていないことを自覚でき、指示がわかりやすい仕事に異動されたのだと思う。
あの土下座にもし意味があったとしたら、
異動が早まったことだけ。
あの場にいた人に嫌な気持ちを残しただけだった。
その後の飲み会で、
その上司には感謝された。
昨日の記事のようにそのころモテ期だった私はただの可愛いお嬢さんだったので、
「そういう時々抜けてるところが可愛らしい。」
という評価をいただいた。
あの局面で、偶然カップを落とす人はいないと思うけど、
なんというか、平和で善良な人が多い会社だった。
2人目。
昔付き合ってた男。
別れたいと話した後、
私の意思は無視して、ホテルに連れ込まれた。
そして、我に返った男に土下座で謝られた。
私もまだ若く、ホテルの前でケンカする度胸がなかった。
今なら、蹴りでも入れて、けっして連れ込まれたりしないと思う。
土下座された、その瞬間、絶対に別れてやる!
と思った。
土下座になんの価値があるのか。
俺(男=こんな偉い)が土下座するくらい、謝っている!
という図式が、虫酸が走るくらい嫌だった。
ホテルに連れ込まれた以上に嫌だった。
その男は、自分のしたことにひどく落ち込み、
その後あっさりと別れてくれたけど、
私が、別れを強く決心したのは、
ホテルに連れ込まれたことよりも、
土下座するような男だったことに、
その男は一生気づかないでいるのだろう。
3人目。
私は同居していた祖父を自動車事故で亡くしている。
夕暮れ時に道路を横断していて車にはねられた。
病院に着いたとき祖父はまだ息があった。
たくさんの機械に繋がれ、もう1時間ももたないと医師から言われてしまった祖父の手を握っていた時、
加害者の男性が、その母親とともに廊下に現れた。
そしていきなり土下座をした。
あれはきつかった。
祖父と血のつながりのない叔父が、
その人に声をかけ、立ち上がらせた。
私の記憶はそこまでで、
その後、その人がどうなったのか覚えていない。
土下座なんて意味はない。
夫の不倫が分かったとき、
相談した古い男友達に
「土下座してきたら、許す?」
と、聞かれ、
「土下座になんの意味があるの?」
と聞き返した。
「この俺がここまで謝ってやってる、
みたいなのが死ぬほど嫌。
そんなことした瞬間に別れる決意が固まる気がする。」
というと、友人は苦笑いしていた。
私は笑えなかったけど。
あの時、夫が土下座していたら、
再構築はしなかった。
今の生活は、全く違うものだったのだろう。
キースへリングは天才だと思ってます。
梅雨の前準備。
通学ヘルメットの下に。
アハモかUQか?
梅雨前にしておきたいエアコンクリーニング
いまだに悩んで買っていないファンデ。