一般化かもしれませんが、欧米人は日本人より単刀直入に話すというのは間違いではないと思います。それで、欧米人は建前と本音の差がより小さいです。もちろん、思ったことをはっきり言えない人もいますが、大体欧米の文化では直接話すことが期待されます。相手によって、意見をコロコロと変える人は偽善者にみられます。そういう考え方があるので依頼をする時も要求をはっきり言わなければなりません。そうしないと結果と期待に差があった場合は、依頼者が責任を取らなければなりません。欧米の常識では「人は読心術家ではありません。」

 

欧米の文化に馴染んでいなくて日常生活で推測するのに慣れている日本人の立場から見て、外国人はきっと微妙なニュアンスを推測できない馬鹿だと思うかもしれませんね。誰かを見習うことと遠まわりな話に囲まれて育った日本人が社会に出る頃にはもう相手の行動や選んだ言葉から期待されていることをはっきり理解できると思います。幸い、日本の文化に全く馴染んでいない欧米人はその微妙な現象に気づかないまま自文化のルールを守って行動し続けることができます。(そういう時困るのは日本人でしょう!)残念ながら、多少文化を理解してきたら、日本人と話す事は地雷敷設面を歩くようなものです。私の経験では、日本語がある程度上手になったら、文化も完璧に分かっていると思われることが多いです。「今言われたことの本当の意味はなんだろう?」とついつい思ってしまいます。「推測が合ってなかったら、どうしよう?」と私は何回も悩んだことがあります。日本の文化と関わり始めて20年以上経つ今でもうまく推測できない時がまだあります。

 

今回はその「ちゃんと推測できなかった」話を皆さんとシェアしたいです。一番目は日本の文化をまだあまり知らなかった時の話です。二番目は日本の文化を少し理解し始めた頃の話です。今回の投稿の目的はどちらの文化が一番いいかを判断することではありません。お互いの文化の異なる点に気づいてもらうことで、返って、より理解し合うことを望んでいます。読んで「そう言う事は確かにあるね」とか「あ!あの時、似たような状況だったかも!」と思ってくれたら光栄です。

 

ーイジメ!?(じゃないけど)ー

2003年の秋は早稲田大学に留学することになりました。同じ年の夏に、秋田県でホームステイの経験があって、東京でもホームステイしようと決めました。寮に住む選択肢もありましたが、秋田県での経験があまりにもよくて、東京でもうまく行くだろうと思っていました。その時点で、日本のことは多少分かっていると思っていましたが実はあまり理解していませんでした。人間の(日本人も含めて)建前を保てる時間は限られていると思うので、当然、ホストファミリーと長く住むにつれて、お互いの本音を見せ始めてしまいました。

 

ホストファミリーが住んでいたのは東京下町の戦前の二階建でした。かつて、建物の一階の前半分は喫茶店の営業に利用されていたことで、表口を使うことはほとんどありませんでした。実は私が住んでいた頃はそこは物置に使われていたので歩くスペースがなかなか残っていませんでした。それで、実際の入口は小さな横道に面した、とても窮屈な玄関につながっていました。ヨガマットの半分以下くらいのスペースを想像してください。頑張っても、二人でとても立てないくらいの面積でした。

 

大学に通っていたことで、私は毎日、朝晩、家に出入りしていました。靴は何足か持っていましたがほとんど毎日同じ靴を履いていたのでその靴を家に帰ってきた時、玄関に脱いで揃えて置いていました。下駄箱の存在はわかっていましたが、「どうせ明日またすぐ履くし」と思って毎晩出しっぱなしにしていました。次の朝は必ず靴が下駄箱に入っていました。最初はなんとも思いませんでしたが同じことが何ヶ月繰り返し続いて、もしかしてホストファミリーのお母さんは私をいじめていると思い始めました。お父さんと仲が良くて可愛がられていたのでホお母さんは嫉妬している気もしました。(はい。馬鹿でした!)

 

ある朝、お母さんにお茶を左手で注いでいたのを見られたのがきっかけになって、いきなり怒られました。

 

母「あんたはね、どうして靴をぬいだままにするの?」

私「??」

母「下駄箱に入れなさい!」

私「入れて欲しいですか?」

母「当たり前でしょう!見ればわかるのよ!」

私「最初からそうお願いしていたら、やりますよ!」

 

その後、他の苦情もたくさん受けましたが原因は全てお互いの文化をちゃんと理解しあっていないことでした。例えば、お父さんのお兄さんの家に泊まっていた時に大皿に盛られた料理に小さなハエが入っていたのを皆の前で指摘したことがありました。私の考え方は「誰かがそのハエを食べたら嫌だな。ここにいる人は皆好きな人だから。」けれども、お母さんには「その食べ物に欠点があります。はずかしくないですか?」と聞こえたのだと今思います。悪気がなかった私は文化の差のせいで勘違いされてお母さんに恥をかかせました。何回も、私の本音の発言や行動は、お母さんにとっては、隠された動機があったと思われてしまったようです。そして、私は「誰かの行動を見習う」という日本で子育てに使われている概念を知らなかったのでいけないことをしたり言ったりしていたのがわかりませんでした。お互い、相手の文化について何を理解していなかったのかは知りませんでした。

 

残念ながらその後は仲がより悪くなって、寮に入ることになりました。何年後かにもう一度連絡して仲直りしようとしましたが関係を維持することができませんでした。元々気が合わない二人だったのかもしれません。

 

早稲田の留学生の卒業式 (若い!)

 

ー遠回しー

2007年から2010年までは八幡平市の教育委員会に雇われました。ALTでした。基本的にALTは夏・冬休みや期末テストの時期に学校へ行く必要がないので私の場合は市役所で仕事をしているふりをしながら暇つぶしをする時期になっていました。その頃、八幡平市にALTは私を含めて3人いました。来る日も来る日も市役所で退屈な時間を過ごしていた私たち英語圏の3人は当然雑談をしていました。

 

教える学校のスケジュールがそれぞれ多少違っていたので市役所を離れる日も違っていたのです。ある日は、同僚のALTの二人はもう学校でまた仕事をし始めていたので部署に外国人は私しかいませんでした。同じ島に座っていた結構好きだった上司にいきなり話しかけられました。

 

上司:ステファニーさんジェーソンとアルドより上手だから、次3人揃って市役所にいる時は日本語で喋ってあげたらどう?そうしたら彼らも日本語上手になるかもしれない。

 

普段はその上司といろんな話題で盛り上がっていましたがその話は初耳でした。なんと答えたのか覚えていませんが「変な提案」と思ったのを覚えています。英語が共通語の人と日本語で話すわけがないでしょうとその話を同僚に伝えることにしました。

 

次の日は上司がいませんでしたがALT3人はたまたま市役所に揃っていました。ジェーソンとアルドに前の日の出来事を話したら2人も変だと思いました、アルドは日本人と結婚していたので奥さんに相談することを決めました。何日か後、結果が出ました。

 

奥さんの言葉を語るアルド:あなたたち3人は英語で喋る時はうるさいから日本語で話すことを提案しました。外国人の間で日本語で話すのは難しくて不自然なので絶対すぐに諦めます。それで、部署が静かになります。

 

そんなことを言われて本当にびっくりしました。直接「もうちょっと静かに話してください」と言えばよかったのにと思いました。でももっとびっくりしたのはアルドの奥さんの素早い理解力でした。アルドによると話を伝えたら、彼女はすぐに状況をわかって説明してくれました。遠回しのメッセージを受けた3人の私達はその後も英語で喋り続けました:日本語は同僚の2人には難しすぎました。残念ながら、好きだった上司に裏切られたと感じた私は距離を置くことにしました。その後、彼は異動になって、会うことは二度とありませんでした。

 

ALTの私(八幡平市立松尾中学校)

ー最後にー

今回話した文化の差で起きる問題は私の立場からしか語れませんが日本人は欧米に来て、逆の経験をするに違いないでしょう。直接過ぎる話し方で傷ついたり、存在しないのに隠されていると思っている動機を推測してみたり、本音で素直に話せなくて必要なものをなかなか手に入れられなかったりして疲れるでしょう。多分、私が想像すらできないことで困っていると思います。なので、お互いに優しくし合って、お互いの文化を理解してみましょう。