二冊の本
これは非売品であろうが、入院中に2冊の本が届いた。
一冊は、美術館からの『潮流・下関2021』で、一昨年度の美術館の企画として私と清水恒治氏の写真展を開催された記録冊子である。モノクロながら会場雰囲気と作品群一切を記録したもので、本当に有り難いものだった。
実は、入院前日その校正が美術館から送られてきて、当日は一部の構成の組み換えを指摘した程度で、文章の細部まで目を通す気力がなく、そのまま美術館に届ける様にお願いして入院し、これが製本されたものである。
期待の反面、細部を見なかった怖さもあったが、まずは良かったと安心した。
内容として『一語一会』などは、会場に展示されていなかった一連の全作品も掲載されていたのは有難かった。写真な小さくても、企画展の全貌を再度彷彿できる冊子が出来たことは大変嬉しかった。しかし、写真解説のいくつかに校正ミスもあって申し訳なかったとも思ったが、今ではあの入院前の痛みの思い出にもつながっている。
もう一冊は、山口市在住の木本信昭さんからのもので『セラトニア(第2号)』という記録誌だった。
山口県出身の画家・香月泰男氏のシベリア・シリーズ研究会(シベ研)と称する会に、木本さんも会員として誘われているようだ。月例会を開催し作品群の研究や合評を行い、その成果として第2号が発行されたものである。普通なら、香月氏全体をと思いがちだが、あえてシベリア・シリーズに絞っての研究会に驚いた。
この冊子が届いたのは、木本さんの長年のライフワークでもあった「香月世界」を、作品『左官』の存在を考察しながら、多くの文献などの誤りなどにも触れながら、シベリア・シリーズの成立プロセスを、この冊子に約60ページの大論文を発表されたことにあるのだろう。木本さんは、「この小論が〈シベ研〉の皆さんが議論を深めていただく一助になれば」と投げかけていた。
この冊子の中では、香月作品で『二人座像』がオークションにかけられこれが落札されずに現在は下関市立美術館にあることや、『日本美術全集』(小学館)の香月作品の取り上げ方に残念な想いがあること、ゲハルト・リヒターと同時代の芸術家が戦争の爪痕をアウラとも感じさせた感覚などと、研究会の真剣でまじめな様子を伺わせる小論を読ませていただいたことを嬉しく思った。入院中の退屈な暇々に感慨深く読ませて頂いた。
写真は二冊の冊子『潮流・下関2021』)(左)と『セラトニア』
