UBEビエンナーレ | Issay's Essay

UBEビエンナーレ

717 UBEビエンナーレ会場の大賞作品『ディスタンス』

 今年は第29回になる現代日本彫刻展。10月2日から11月27日まで、宇部ときわ公園の彫刻の丘で開催された。
 「60年彫刻と住み続けてきたまちです。これからも」パンフレットの片隅に書かれているが、2年ごとに開催されるこの展覧会に、私もどれほど通ったことか。今回も、10月下旬に観させて頂くことが出来た。
 お天気に恵まれ、幼稚園か保育園の子供さんたちが芝生に座っていて、この子たちがどんな風に彫刻に接するのだろうかと思っていたら、もう帰りの時間で残念ながらその表情を見ることは出来なかった。
 会場に入ったとたんに眼にしたのは、木片を組み上げたもので可成り大きな作品、これは以前のも同じ様な発想の作品と感じが似ていたので近くには寄らなかったが、宇部の海岸に打ち寄せた流木を集めてオブジェにしたものと後で聞いた。
 今回は、近くにあるものはともかく、全体を見通して、興味のあるもだけを見たような気がする。私の怠慢だったと反省しているが、ステンレスを磨き上げた作品が目立っていたり、どこかで見たような、或いはこれも現代彫刻か?と感じるものもあって、ひときわ目を引いたのが湖面の近くにあったアクリル板を使用した作品だった。
 遠目では「地面から白いものが沸き立っているように見えた」思わず近づくと、やや厚めのアクリル板2枚を加工して立てた作品だった。作品を鑑賞するより前に“こんな大きな板状のものをどのように固定したのか、風が吹いたら?と気になって仕方がなかった。作品名は『ディスタンス』(大賞)だった。
 思えばアクリルを素材にした作品が今まであっただろうか。たしかにコロナの感染が流行して各所でウイルス飛沫感染対策の間仕切りに、対面接客や飲食店などに使用されるようになったが、素材そのものとしては私たちが子供のころには珍しい匂いガラスとして破片をポケットに入れていた有機ガラスである。
 たしかに、プラスチックはその素材によっては、太陽光線で変質したり衝撃や摩耗、あるは温度や環境変化に弱い一面もあったが、最近はこれらもかなり改善されたアクリル素材が工業用にも利用されている。沖縄の美ら海水族館の大型水槽に使用され注目されてから、最近では様々な生活用品にまで利用されるようになった。私が知らないだけかもしれないが、芸術作品に登場したのを見たのは初めてである。
 『ディスタンス』確かに時期を得た素材の利用であり発想である。戸板以上もある大きさの周辺を丸くして中央の重なりの部分には穴をあけ、いかにも二人が対話しているかに見える造形で下部の乳白色にぼかしたアクセントに温かみも感じた。平面から見れば素直に風景も観れるが、角度によっては太陽光を反射し複雑な色彩も現れる。まさに現代彫刻にふさわしい作品だと感じた。
 もう一作品は、気になった五角形の網模様出の像家作品は・前回と同作家のものであろうか『月と山、水脈』。これは湖畔の風を吹き抜ける爽やかさを感じて好ましく思ったし、顔のでかい藁人形が何時しか腰が曲がって四つん這いの動物に変わってしまった『変身』には現代の皮肉が込められているように思えた。そして表も内部も研きあげられた『青空の月』は、戦後話題になった鏡の間を感じさせる感覚になった。何時しか、この展覧会に、下関美術館賞が無くなったのは寂しい。
 写真はUBEビエンナーレ会場の大賞作品『ディスタンス』