あや舞さんの笑顔 | Issay's Essay

あや舞さんの笑顔

696 『ガブリエルとオーボエ』の舞台と神代さんのインタビューに答える花柳あや舞さん(右)

 かれこれ10年位前に、AYAKOモダンバレエスタジオの公演のことをこの欄で書いたことがある。それはスタジオ30周年記念公演の時で、その時すでに亡くなられていた篠崎綾子さんが振り付けされていた「ボレロ」が日舞とのコラボレーションで発表され、感激しての状況報告のようなものだった。
 この度、第9回の発表会となるご案内を、スタジオを運営をされている花柳あや舞さんからのご招待があり、このプログラムには「篠崎綾子20回忌記念」とあった。
 前日までは晴天続きだった下関は、当日、篠崎綾子追悼記念の涙雨になり一寸荒れ気味の風雨の中を会場に着くと、そこは一変して華やかな雰囲気だった。
 あや舞さんのメッセージには「この20年間、叔母の残したものから新しい域へとスタジオが成長していることを感じます。これも叔母がお教室を託した稲田佳代先生が真面目に丁寧に指導、生徒さんたちを導いて下さるおかげと感謝しています」と書かれているように、綾子さんの「踊る気持ちを大切に」という心が、伝承されているのだろう。
 叔母・篠崎綾子さんは洋舞だが、綾子さんの姉は花柳三吉さんで日舞の重鎮、花柳あや舞さんの母である。三吉、綾子姉妹は昭和30年代ころ市内彦島に住まれていて、私たちの友達らと花見や何かの時に集まって一緒に語り合った仲間だった。バレーの綾子さん(あやちゃん)は仲間たちと一緒に、私たちのモデル撮影会にも協力参加されていた。
 今回の発表会で、司会を務めた声優の神代知衣(花柳百吉)さんは、下関出身で、3歳から20歳まで三吉さんに師事された名取で、先帝祭の振袖太夫も務めたとプロフイルにあったが、綾子さんの思い出を「金髪の長い髪を三つ編みして颯爽と町中を歩いていましたよね‥」と話されていた。
 発表会のプログラムは、2部構成で、第一部は現在のスタジオの皆さんが中心で、ほとんどが、稲田佳代さんの振り付け指導によるもの、第二部はスタジオシニアによる迫力ある「ボーグ」に始まり、2曲目が私待望の、早川マイ(チェロ)井戸ひろみ(ピアノ)さんによる『ガブリエルのオーボエ』の演奏で、花柳あや舞(日舞)稲田佳代(洋舞)さんが舞う4人のコラボレーションである。そのあとの12曲は篠崎綾子作品集、これにはOBやOBのスタジオ会員らも賛助出演して続き、最後に稲田佳代さんの自作自演で終了する。今回は、あや舞さんの記録だけと思っていたが、結局、全曲を1カットでも納めておこうかと手持ちながら記録していた。
 待望の『ガブリエルのオーボエ』は、私の知らない曲で特別な知識もなく、オーボエを低音のチェロに置き換えての演奏だろうか?などとも思いながら、舞台左の演奏者を撮影し、右に転回してあや舞さんを撮影、全景の4人をと撮影している間に曲は終わってしまった。プログラムを頂いたとき前もって曲を調べなかったのが失敗だった。
 「美しい旋律で深く心に残る、何とも癒される曲だなぁ」と、ゆったりと表情を見ながら撮影していたので、枚数も行かないままあっという間に終わってしまった。その間2分ばかりだっただろうか。
 毅然とした日舞のあや舞さんの崇高な姿に、助けを求め、すがるように稲田佳代さんが舞う様子に、ふと、横暴なロシアの侵攻に対するウクライナの人々の心情と悲哀を感じたのは私だけだったろうか。
 そのあと演奏演者4人に神代さんのインタビューがあったが、あや舞さんはその演技に何と答えられたか、ふと笑みを浮かべた。花柳あや舞さんは2014年、稲田佳代さんは2017年に、下関市芸術文化振興奨励賞を受賞された市内でも嘱望された芸術家、実力者である。その笑みは、20年目にしてみせた叔母・綾子さんへの照れ笑いであったかもしれない。
 写真は『ガブリエルとオーボエ』の舞台と神代さんのインタビューに答える花柳あや舞さん(右)