大吟醸酒『コロナに負けるな』 | Issay's Essay

大吟醸酒『コロナに負けるな』

661 ソバ屋のカウンターで見た大吟醸『コロナに負けるな』のラベル

 新型コロナの自粛ムードで、外食も殆ど無くなったが、とある日、待ち時間の関係で随分予定が狂ってしまい、昼食には全く久しぶりのソバ屋さんに立ち寄った。入口には手をかざすと自動的に噴霧液の出る消毒瓶が置かれ、店内各所にも対策がなされていた。
 なじみのカウンターに座ってふと前を見ると、アマビエのイラストが刷り込まれたラベルを貼った酒瓶が置いてあった。そのラベルをよく見ると『コロナに負けるな』とあり、「純米大吟醸―episode2始動―」となにやら意味ありげな文字も見える。ラベルの下方には、聞き覚えのあるお酒の銘柄が並んでいた。
 このお店は、飲み屋ではないが食事のときビールやお酒を出すこともあって、幾らかの酒も準備はしているようだが、目前の瓶は封切りしたものでもなく、いかにも魔よけのアクセサリーで置かれていたようにも見えた。
 その銘柄の一つ「東洋美人」は、何時かロシアのプーチン大統領が飲んで有名になった萩市の澄川酒造場の日本酒である。ひと時、水害に見舞われ、あわや廃業かと報道されたこともあるが、最近は山口県の名酒である。私は、あまり酒好きでもないが、やや甘口の東洋美人は好みではない。しかしこの連名が気になって家に帰って調べてみた。
 この「エピソード」の発想は、新型ウイルスの影響で、外食自粛ムードが広がり県内でも売り上げが減少し仕込み量を減らすなどの酒造蔵が出たとき、萩市と阿武町の酒造会社6社(阿武の鶴酒造と他はいずれも萩市の岩崎酒造、澄川酒造場、岡崎酒造場、中村酒造、八千代酒造)の話し合いで、新たな需要喚起につながればと「東洋美人・壱番纏」や「阿武の鶴」「長陽福娘」など各社6種の酒を均等に混ぜアルコール度数を15.8に調整した第一弾720ml入りの瓶3000本を作り昨令和2年(2020)7月に販売した。
 ここで紹介するのは、その第2弾であり、先ず原材料には萩産の酒米「山田錦」と「山田錦から造られた米麹」を使用することにこだわって、本来は酒の味に影響する麹の作り方やタンクのもろみをかき混ぜる方法も違う、六つの酒造会社の杜氏6人がそれぞれの技を各工程で話し合いながら個性を生かした作業を進めたというお酒を製造したというのである。
 山田錦特有のうまみがあり、さらに全体的に甘みを持った透明感のある味わいに仕上がり、販売を受け合う酒店からの前評判も高く予約も相次ぎ、このお酒は、アルコール度数15.5%、720ml入りの瓶で1980円(税込み)。同昨令和2年11月から6000本が販売された。アマビエをデザインしたラベルは、萩市の居酒屋「MARU」を経営する小祝敦さんが描いたとあった。
 これらは、インターネットからの情報だが、澄川酒造場の澄川宜史さんは「杜氏6人の個性の結晶といえるお酒になった。チャレンジする意味で製造量も増したし、日本酒を増やすきっかけになれば‥今後も協力し合って味も香りも新しい酒造りをするつもり」と挨拶されている。
 ふと目にした大吟醸酒『コロナに負けるな』は、発売から1年近くなってはいたが、コロナ禍にあえぐ酒造業界の杜氏たちが、叡智を集めた業界存続を願っての賜物であることを知った。伝統銘柄の多い山口県内の杜氏たちの協力体制は、長州維新魂ともいえようか。それは今後の新酒造りにも大いなる活力になるだろうと思った。
 写真はソバ屋のカウンターで見た大吟醸『コロナに負けるな』のラベル