秋の風物詩「ヒヨドリの渡り」 | Issay's Essay

秋の風物詩「ヒヨドリの渡り」

38秋の風物詩

 下関市彦島の南海岸の山からは、9月下旬からヒヨドリの群れが関門海峡を渡っていくのが観られます。それは10月になるとピークに達します。晴れた日は、何千何万という数のヒヨドリが何処から湧くのかと思うほどの移動です。
 広辞苑によれば、スズメ目ヒヨドリ科の鳥、大きさはツグミくらい。ツグミといってもピント来ませんが、体長は25~30センチ、羽を広げると40センチほどの大きさです。さらに、大部分青灰色で、山地の樹林に繁殖し、秋、群れをなして人里に移る。波状に飛ぶ。鳴声は「ひいよひいよ」とやかましい。日本に広く分布。季語は秋。などとあります。
 ところが、地球温暖化のせいでしょうか渡り鳥も留鳥が増えて、ヒヨドリも例外ではなく、さくらんぼやキンカン、千両の赤い実などとあさり、このシーズンになると野菜までも食い荒らし、移動のエネルギーを蓄えるのでしょう。
 本州最西端の森に集結したヒヨドリは、1000~2000羽の群れを成して一斉に海峡の空に飛び立ちます。ところが、これを待ち受けるように何処からともなくハヤブサが出現するのです。
 群れ鳥の、指揮官は誰なのか、その気配を察すると一斉に元の森に逃げ帰るのです。生死を賭けたその慌てふためく様子は、秋の風物詩として観ている私どもにとっては、けな気でもあり滑稽でもあります。
こうして飛翔を繰り返したヒヨドリの群は、あたかも“龍の蠢(うごめ)き”にも似た黒いうねりになって、急に海面すれすれまで急降下して、もはや外敵の攻撃を許しません。海峡を渡り終えて北九州にたどり着き、さらに南下を続けるのでしょう。観ている者は、庭や菜園を食い尽くす、あの“憎っくき鳥”のことも忘れて、渡り鳥たちの無事と平穏を祈るのです。
 やがて春になると、門司の部埼灯台辺りから北上するヒヨドリの群れを観ることも出来ますが、5月中旬に青森県龍飛岬に行ったとき、「北海道に渡るヒヨドリを観察しています」と、断崖の上で野鳥観察員が言われたとき、あらためてヒヨドリの移動距離の凄さに感心しました。
寿永3年(1184)、源義経が一の谷の平家軍を襲撃したのは、神戸の山手にある鵯越(ひよどりごえ)の逆落としでした。源平最後の合戦に平家が布陣した彦島で、秋の風物詩「ヒヨドリの渡り」を観るのも何かの因縁でしょうか。